不思議な人だね、Hさん
晦日の準備をしなくちゃねえ、とHさんは言う。
確かに気づいたら年の瀬だ。
そうですねえ、と応えたけれど、なんか空しくて
Hさんは、どうするんですか、と言った。
私? 私ねえ、アドベントカレンダーてあるでしょう?
やばい、知らないものだ。沈黙にHさんは気づいたのかケラリと笑い
「十二月だけのカレンダーでねえ、日付のところが小さな収納ボックスみたいになっててね、
そこにお菓子とかいれるの。私はねえ、そこにお掃除するところも書いて一日一日がんばるの
お菓子は、そのご褒美よぉ」
他にも色々あるのよぉ、とHさんは笑いながら言う。
とても楽しそうだったで、掃除という苦行を楽しいイベントにするって凄いなあ、と感心した。
「アドベントカレンダーって検索するだけで色々でてくるの、綺麗よぉ」
その言葉のあと、忙しくなって会話ができなくなった。
Hさんとの共通時間は朝番と夜番の違いで、だいたい二時間ぐらい
「おつかれさまです~」と去って行ったHさんを見送ってから数時間、忙しくて忙しくて、毎日イヤになるけれど、やっと仕事が終わり電車に揺られていたらHさんの言っていたアドベントカレンダーなるものが気になって検索した。
検索トップはクリスマスまでを数えるカレンダーと書いてある。
ツリーの形、色とりどりのボックス、家の形が多いのだろうか、クリスマスカラーのそれたちは多分子どもが楽しむものらしいけれど、二十四個の窓を開いて掃除場所とお菓子を入れるHさん案は中々いいのではないだろうか、ずぼらな自分にぴったりだ。
それじゃあ、Hさんもずぼらだったり?
あの穏やかな顔付きで、語尾をゆっくり伸ばす嫌みたらしくない不思議な人は、世の中に生きているんだ。別世界の人に思えていたけど、なかなかに、なかなかに人間だった。
ふふ、と声を出してしまい口を閉じる。
同じ人間になれて、少し嬉しく思う。
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