第48話 落下

***



 決意を固めた義経は、早く兄達と合流したいと思い義時にそう伝えた。


「兄さん達のところに行こう! 頼朝兄さんに僕はもう大丈夫だって言わないと!」

「そうか。それなら」


 逸る義経に、義時は冷静な無表情で床をダンッと踏み鳴らした。


 次の瞬間、義経の立っている足元の床がぱかっと開いた。


「え?」


 足場のなくなった義経の体が宙に投げ出された。


「とっとと風の御霊の使い方を学ぶんだな」


 落ちていく義経の目に映ったのは、冷たく見下ろしてくる義時の目。


「ええええぇええぇ!?」


 義経の絶叫と同時に、開いた床が元通りに閉まった。




 落下。

 高さによっては死ぬ現象である。


「死ぬーっ!?」


 義経は焦った。


(頼朝兄さんの部下に殺されるぅぅ!!)


『とっとと風の御霊の使い方を学ぶんだな』


 冷たい声が蘇る。


(風の御霊……)


 風なら。底に叩きつけられる前に風を起こせれば。


「う……う、うおらああああっ!!」


 ヤケクソな叫びと共に身を捻り、底に向けて腕を突き出した。

 その途端、義経の腕を中心に風が巻き起こり、床にぶち当たった気流が跳ね返って義経の落下の勢いを殺した。


「げぶっ!!」


 床に叩きつけられたものの、風のおかげで勢いがなくなって骨が折れたりはしなかった。

 とはいえ、全身を打ち付けたことには変わりない。


「ぐぐぐ……義時の野郎ぉ〜。兄さんの前では猫かぶりやがってぇぇ〜……」


 痛みに呻きながら、義経は義時への怨み言を垂れ流した。


 ひとしきり呻きと怨みを吐き出した後で、義経は身を起こした。

 真っ暗な空間だ。光が皆無なので何も見えない。

 なんで自分がこんな場所に落とされないといけないのだと、義時に対して腹が立つ。


「出口はどこだよ!?」


 キレ気味に叫んだ。

 その途端、突然明かりがついて、義経は眩しさに目を押さえた。


「……チッ。義時の奴、なんで上で仕留めとかねえんだよ、使えねえな」


 不機嫌そうな声が響いた。


 眩しさに慣れた目を開けた義経の前に、スーツ姿の二十歳前後の青年が立っていた。




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