蕾の春

ドライブデートになって車の中で駆の話を聞きながら少しばかりの寄り道をする。

そのまま帰路に着いたのは夕方になっていて、夕日に照らされたビル群が艶やかに照らされている。そのとき、駆が口にしたことに薫は驚く。

「実は今回泊まった旅館は廃業していたんだけど、あの場所一帯を買って料理も人を雇って作ってもらったんだ。数千万ほどかけているんだよ。」

駆のその言葉に、薫は嬉しさと驚きでいっぱいになりビル群から反射した夕日を浴びている駆の横顔を見つめ、「再会のためにそこまで？」と呟いていた。

その言葉が駆の耳に届いたのかどうか分からない。そのくらいには薫は頭がぼんやりしていた。

この旅行がきっかけで駆と薫の関係は確かなものになり、身を委ねる関係となった。

そのまま集合した場所に戻り、笑顔で別れた。

もう季節は夏に向かう。

このまま、また春を迎えるのだろう。