『世界は微笑む』

@Haruto10

世界は微笑む

小学6年の頃、僕は自殺をしようとした。

あの屋上で。

どうして?と聞かれると、分からない。

確かにクラスからのいじめや、教師からの体罰、見て見ぬふりの人たち。

それは辛いし嫌だけど、それが原因かと問われると、違うと思う。

親は、僕になんか興味無いし、仕事人間だ。

家族旅行なんてしたことない。そもそも遊ぶこともなければ、家にいない方が多い。

それも別になんとも思ってない。

けれど。どうしてか、この世界から逃げたくなった。

だから死のうとした。

そこに声がしたのが始まりだ。


ひっそりと静かに、君はつぶやく。

『ねぇ、そこで何してるの?私も混ぜてよ。』

意味がわからない。何をしようとしてるかなんて分かりきってる癖に、名前も顔も知らない女の子。

「何って、死のうとしてるけど?悪い?」

なんて皮肉めいた言葉を返す。

嫌になるよ、こういうとこ。本当はちょっと嬉しかったくせに。何せ誰も止めようだなんてしなかったんだから。

『そっかァ。ねぇ、私さ、今日の花火大会行きたいんだよね。でもさぁ、友達いなくて、どうせ死ぬなら、私のわがままに付き合ってよ。』

ほんとに意味がわからない。この状況を理解した上でそんなこと言うのだろうか。不思議だ。

でも確かに、まぁいいかと思う自分もいた。

そのくらいの意思しかなかった。

けれども彼女の存在は、この時の僕にはわからなかったけど、確かに僕の救いだった。


「いいよ。」

間髪入れず答える。

『ありがとう』

なんの感謝なのか分からない。ほんとに不思議な子。

僕はフェンスを乗り越え、彼女の傍に行く。

「行くんでしょ。花火大会。」

『うん。行くよ。大きな花火見たいなぁ』

「僕はそこまで、線香花火くらいがいいんだけど」

『いいじゃない。死のうとしたんでしょ?なら最後まで今日はわがまま付き合って。』

「わかったよ。ただ何となくだったし。それくらい付き合おうかな。」

『うん!あ、私はね、鈴原 千華すずはら ちかっていうの。よろしくね!君は?』

「僕は、柊 透夜ひいらぎ とうや

『透夜くんか、いい名前だね。』

「そう?君の方が素敵だと思うけど。」

なんていえず。

「あっそ、」

とかえす。ほんとに嫌な奴だよ。僕は、だからいじめられたり体罰受けたりするんだろうな。ましてなんでこんな僕に話しかけたのやら。過剰過ぎるほどの親じゃあるまいし。

『君は何組?私は4組。』

「5組」

『そっかそっか。』

話しているうちに夕方になってきた。

あーあ、元々夜になる前に死のうと思ったのに。計画が狂った。でもまあ、そのわがままさえ付き合った後に死ねばいい。どこかで野垂れ死のうが、誰もかまやしないだろう。むしろ迷惑がるさ。

「早く行こうよ、花火大会」

『そうだね!ちょうどいい時間だ!』

教師の怒号、クラスメイトの笑い声、叫び声、思っても無い同情、哀れみ、そんなものを背に学校を出る。


祭り会場はすぐそこだ。それまでの間、終始無言。

彼女、千華は前を歩き、鼻歌を歌っている。

それを聴きながら、早く終わんないかなと思う半分、少し楽しみにしていた。

『君は来たことあるの?この祭り』

唐突に問いかけられる。驚きながらも

「初めてだよ」

と答える。

行く友達もいなければ、行きたいとも思わなかったからだ。

『そっか!なら楽しまないと!』

「あまり小遣いないんだけど、1人で楽しんでなよ」

『それじゃ意味ないじゃない。透夜くんも楽しむの!』

はぁ。軽くため息を着く。小6ってこんなに無邪気だったっけ。くだらない。

「わかったよ」

ここでNOと言えばきっと機嫌をくすねる、それだけは勘弁だ。

『よっしゃ。まずは、ヨーヨー釣りに、金魚掬い、あとは、綿あめに、たこ焼き!焼きそばも食べたいなぁ』

「良くもまぁそんなに楽しめるよな。」

そんな言葉すら聞こえてないのか、祭りに思いを馳せている。

そうしていると祭りの会場に着いた。ガヤガヤしてて正直鬱陶しい。

『おぉー今年もすごいですなぁ!離れないで着いてきてよ!めいいっぱい楽しむんだから。』

「ハイハイ」

吐き気がするくらいの人。そしてどんちゃん騒ぎかのようになる音。嫌で仕方ない。

『あ、ヨーヨー行こ!』

『綿飴ください!』

『綿菓子も!』

『たこ焼きは必須よ!』

『焼きそば!』

『金魚掬い!』

あちこち行く彼女について回って、疲れた。どんだけはしゃぐんだか。

『はいこれ、』

「アイス?」

『そ!伸びるアイス!すごくない?』

食べてみるとほんとに伸びる。そんでうまい。

彼女について回ってひとつわかったこと、僕もそれなりに楽しんでることだ。それが不思議でならない。けど、悪い気はしない。

『これ付けて』

渡されたのは狐の面。僕が黒で、彼女が白だ。

嫌々付けるも何気にこのデザインは気に入っていた。

そうしていると日が暮れてきた。そろそろ夜だ。

『私ね、花火を見れるいい場所知ってるんだ!こっち!』

茂みの小道を進んでゆく。人通りも少なく。そもそも道なのか?てくらい草が生えてボーボーだ。

いかにもな場所にうわって顔をしたくらいだ。

『そんな嫌そうな顔しないの。きっと驚くよ?』

「はぁ?」

半ば呆れながら着いていく。

するとそこは丘になっていて、東屋が1件だけ、存在していた。

ベンチに座ると、瞬間。花火が空を舞う。

綺麗だった。ものすごく。

声を失ったかのように、何も言えず、ただただ花火を見つめていた。

『ほらね。すごいでしょ。

この世界にはね、もっと、もっと、こんなに素敵で綺麗なものがあるの。捨てたもんじゃないわよ?案外。』

「なんのこと。」

彼女は見透かしたかのようにつぶやく。

『君。この世界が嫌いでしょう?醜くて汚くて、大嫌いだって顔してる。つまらないって退屈だって顔も。』

「、、、」

明確に当ててきた。驚いてまたもや声は出ない。

『だからとめたんだァ。この世界には、綺麗なものもあるよって、諦めるにはまだ早いよって教えてあげたくて、余計なことしたかな?』

急に不安そうにつぶやく。

さっきまでズカズカ好き勝手してたくせに。急に静かになって下を向く。なんだかそれが嫌で、

「別に。今日は楽しかったし。あんたのおかげで綺麗なもんも見れたし。余計じゃないよ。」

気の利いたセリフなんて思いつかず素っ気ない感じになってしまった。ほんとにやな性格してる。

『良かった!!』

途端に笑顔になる。表情のコロコロ変わる不思議な子だ。だけど、何故か、千華といるこの時間は、悪くない気がするのだから困ったものだ。


それから無言で花火を見て、家まで帰る。

『それじゃあまたあした!』

なんて言うものだから、死のうとしたことを忘れて

「また。」

なんて呟いてしまった。

まぁ死ぬのはいつでも出来るし。なんて言い聞かせて、明日を楽しみにしてる自分に首を傾げる。


朝、いつも通り登校すると、また靴がない。ましてや罵詈雑言が書かれた紙まで用意されている。ほんとに懲りない。教室に行けば、花瓶に花。椅子には貼り付けられた押しピン。

これまたいつも通り。違うのは数と言葉の内容。

ホームルームが始まる。先生は何も言わない。クラスメイトでさえ。これも日常。

何かにつけて当ててくるし、怒られる。理不尽極まりない。

やっぱり、この世界は酷く醜く愚かで汚い。あれは夢か。そう思えるほど地獄の日々。


が、崩れた。


昼休み突然彼女がやってきて、僕を連れ出す。

そして先生や生徒の前で叫ぶ。

『ここにいる全員!人殺しよ!見えない傷も見える傷も、ものすごく痛くて、消えないの!言葉も、その行動も!何もかもが人殺しの武器なのよ!いい加減にしなさい!透夜くんがなにかしたわけ?何もしてないでしょ?勝手に決めて勝手に押し付けてるだけじゃない。自分の感情の処理くらい自分でなさいよ!勝手に当たらないで。見て見ぬふりも、人殺しと同じよ。』

驚いた。初めてあった昨日とはまた違う彼女の顔だ。

叫んだ後僕の手を取り、教室を出ていく。

ほんとに不思議な子。僕とは全く関係なければ、あったのは昨日だ。何の得もないのに。


『言いすぎたかなぁ。でもホントのことだもの。あんくらい言ってやらないと分からないのよ。わかってても分からないフリするんだから。キリがないわ。透夜くんは何も悪くないのに。』

「ねぇ、どうして僕にそこまで関わるのさ。君には関係がないだろう?友達でもなければ、幼なじみでもない。何も得がないじゃないか。」

『あはは。私はただ、私がしたいことを言いたいことを言ってるだけ。好きなように生きてるだけ。だから私も、人殺しよ。』

「。そうかもしれないけど、僕は今、君に救われたよ。」

『なら良かった。ねぇ、まだ死にたい?』

「そうだね、まだ死にたいさ。この世界から逃げたいさ。だけど、君に振り回されるのも悪くない。なぜだか居心地がいい」

彼女に触発されたのか、普段は言わないことを口にする。気恥しさか目を逸らしてしまう。

彼女は笑ってる、それだけは背中越しに伝わる。

『すっきりした。気になってたのよ5組の雰囲気。ずっと言いたかった。君と関わったおかげで、言えたわ。ありがとう』

なんの感謝だ。訳が分からない。むしろそれはこちらのセリフだと言うのに。ほんとに分からない。

けど、居心地がいい。

「それは僕のセリフだよ。」

『君が世界を綺麗だと、好きになれるように、私が手伝ってあげる!あくまで君は、私のわがままに付き合ってくれればいいんだよ。』

それも悪くない。そんな気がして

「うん。いいよ」

と。口にした。

世界を憎んでいるのに、彼女といる時間だけは、淡く暖かい光に包まれていた。


それからだ。何かある度にわがままに付き合わされる。付き合う僕もどうかしてる。でも楽しいのは確かで。

学校をサボって、山登り。

昼休みに屋上で歌ったり叫んだり。

ちょっとした盗みを小さな店で働いたり。

色んなことをした。

実は楽しくて仕方がない。

彼女といる時間がとても幸せで。

なぜだか僕も、もう少し付き合ってやろうなんて思う始末。

それ以外はくそだけど、彼女との時間だけが幸せに満ちていた。


中学に行っても相変わらずだ。

彼女についてわかったこと。

言いたいことをすぐ言うこと、やりたいことをすぐやること。いつも突然思いついて無理やり連れて行くこと、明るくて優しくて、信念の強い子だということ。

そして強引。


入学してすぐの頃、クラスまで同じになって常に絡むようになった。いつも通り無茶ぶりをかます千華に少しづつ心を開くようになった僕は、呆れながらも彼女といる時間を楽しむようになり、彼女のわがままを楽しみにしていた。


今日もまた。

『よし!海行こ!』

「は??今から?」

なんなら今は昼休みだ。

『今だからいいんじゃない!思いついたら即行動よ!水着持ってきなさい!家帰ってすぐ!駅に集合よ!』

「聞いてないし、知らないし。めんどくさい。」

『ほら早く!』

いつも通り急かされる。

もうひとつわかったことは、断ると面倒なこと。

1度断ったことがあるが、ほんとにめんどくさかった。子供のように駄々はこねるは、無理矢理引っ張るわ、演説するわ。めんどくさいことこの上ない。

だから了承せざるおえないのだ。

家に帰ってテキトーに海パンと飲み物とスマホと充電器をカバンにつめて家を出る。親は仕事でいない。

鍵を閉めて駅に向かう。


それにしても暑い。猛暑だ。確かに海に行きたい気持ちは分かる。が、移動がめんどくさい。

駅に着くと、既に千華はいた。

僕の名前を呼んで大きく手を振っている。

やめてくれ、注目を集めてるじゃないか。

何度目かのため息を着く。

「それやめてくれないか。目立つの嫌いなんだ。知ってるだろ。」

『だって遅いんだもの。透夜が悪いのよ?』

僕達はいつしか親友以上恋人未満となっていた。

あらかた自分のことは話したし(急かされて)、あらかた千華のことも聞いた(洗いざらい全部)。

千華には父親が居ないこと、事故でなくして以来女手一つで育てられていること、父親を知らないこと。自分の好きなように生きて欲しいと母から言われていること。

このくらいだ。

今となっちゃ切っても切れない縁になっている。

「あーそーだな。ほら行くぞ。」

半ば諦め、駅に入る。ここから海までは20分くらい電車に乗らないといけない。

切符を買い、改札を通り、電車に乗る。

ふわっと涼しいクーラーの風が吹き、ほっとする。

『暑すぎだね。はよ海こい!』

「暑いのはわかるが、海は来ねぇよ。あー涼しい。」

たわいのない会話をしながら電車に揺られて数十分。

既にこの時には好きな物も場所も何もかも互いに話済みだ(強制的に)。

少しウトウトとしていると、目的地にたどり着き、電車をおりて改札を出る。


潮の香りが頬をかすめ、辺り一面青に染まる。

千華は伸びをし、海に向かってかけてく。

既にしたに水着を来ていたため、そこら辺に服を放り投げて海に突入してった。

俺はそれを拾って片付けながら脱ぐ。

少しづつ海に入り、はしゃぐ千華を見つめる。

『透夜ー、こっちおいでよー!泳ぐよー!』

「はいはい!」

呼ばれる方へ行くと少し深くなり、俺がギリギリ足が届くくらいだ。

千華と競争したり、静かに泳いで魚を見つけたり、たまに海月を見つけたり、海を堪能した。

その後どこから持ってきたのか手持ち花火を持ち出した千華は、またどれからしようかとはしゃいでいる。

「どっから持ってきたよそれ。」

『じゃじゃーん!手持ち花火!』

「おそ。もう既に出して言われても」

『家から持ってきたの。ほらそこら辺じゃ花火できないでしょ?お母さんも忙しそうだし、ならここでやっちゃおう!って』

「あーなるほどな。忙しそうだもんなお前ん家。」

『まぁね。そっちは?』

「相変わらず無関心だよ。俺としては楽」

『そっか。てか中学に上がってしばらくして変わったよねー。』

「なにが?」

『一人称よ!一人称!前は僕だったのに。』

「別にいいだろ。なんだって。」

『前は可愛げあったのになぁ』

「お前は俺の親かなんかか。」

『あっはは』

「何がおかしいんだか。」

『透夜との時間が楽しいの!ほら花火するよ!』

「あぁ。」

俺もだよ、とはいえず。相変わらずぶっきらぼうに答える。

それでも何かを感じとったかのように千華は笑い花火を手に取る。

心でも読めるんじゃないか?こいつ。


追いかけ回されてたり、あらかた花火を楽しんだ後。残ったのは線香花火。俺の好きなやつだ。

互いに無言で火を見つめる。

パチパチ弾ける音もその姿もものすごく素敵で俺は好きだ。

最後の1本。それに火をつける。

『これ、先に落としたやつ奢りで!』

「は?先にいえ。」

またも無言で、今度は競い合った。

千華との静寂は、居心地がいい。

そうすると、千華が先に落とす。

『あー、私の負けかぁ。くそぅ』

「発案者が負けるって謎のルールあるしな。ドンマイ」

『なるべく安いのにしてよね?』

「どうしようかな」

なんて悪いことを考える

『あー!絶対高いのかんがえてる!その顔はーー!やめて!くそーーー。』

「ふははっ。」

『そういえば』

ふと、千華は静かに微笑んで言う

『透夜はよく笑うようになったよね。最近特に。私透夜の笑顔好きだなぁ。ほんとかっこよくなりやがって。昔からかっこよかったけど、さらに!最近もててるし。』

「はぁ?んなことないだろ。それに、俺はお前といる時にしか笑ったことねぇよ。」

『そっか。』

嬉しそうに微笑む顔に俺も嬉しくなって。ちょっと気恥ずかしくて、互いに目線をそらす。

気まづい空気のなか千華がつぶやく

『線香花火ってさ、人の命に似てると思うの。この世界にも。』

無言で聞く。

『だってね、始まりは静かで、ただの塊。だけど、少しづつ弾けて言って、小さな花を咲かせるの。そして咲かせた後、静かに灯火は消えて、地に落ちる。

似てると思わない?世界と人と、物語に。』

「そう、かもな。少なくとも、その考え、嫌いじゃない。」

『君ならそう言ってくれると思った。

一瞬を咲く。今を咲かせるために時間をかける。そして綺麗に咲かせて散っていく。桜も同じね。綺麗なのよ、咲いた瞬間は。』

「そうだな。お前はそう言うの好きだよな。」

『うん。汚くても、綺麗なものもあるから。』

「暗くなってきたし、帰るぞ。さすがにお前の親が心配する」

『そうだね。』


薄暗い夜の中、改札をくぐり電車に揺られる。互いに無言で外の景色を眺める。

実は写真を終始取ってたのは秘密だ。

あまりにも綺麗だったから。

でもきっと怒られるから。内緒にしよう。

俺は、千華を写真に収めるのが趣味になっていった。

帰りの静かな電車に揺られ、帰路に着く。

『それじゃあまた明日』

「また明日」


そんな日がいくつも続いた。

水族館、映画館、遊園地、

たくさんの思い出を彼女とすごした。

ちなみに水族館は俺の奢りだ。


水族館では、イルカショーを見て、海月が好きだという千華に付き添い海月を鑑賞。

『イルカショー凄!!ねねねね、可愛い!!』

「確かにすごいな、つかジャンプすげぇ。」

なんてはしゃいでいた癖に

『海月ってね、脳がないから苦しいとか、辛いとか感じないんだって。あとね、死ぬ時は泡みたいに、水に溶けて消えてくの。淡い命だよね。三日月みたいに綺麗で好きだな。』

「そうなんだ。けど、なんか、綺麗で俺は好きだな。そういうの。溶けて消える、か、いいな、それ。てか三日月好きなのか。」

『完璧じゃない、欠けてるからこそ綺麗。私はそう思うな。』

「たしかに。俺も三日月は好きだな。」

急に静かになったりもした。

俺はウーパールーパーが好きで付き合ってもらって鑑賞。サメや色んな魚を見て、キーホルダーを買って帰った。ちなみにおそろいだ。

『ウーパールーパー好きなの。可愛い』

「可愛いゆうな。なんかこういうの好きなんだよ。」

なんてちょっと恥ずかしかったり。

『ね、お揃いのキーホルダー買お!記念記念!』

「ありだな。色違いにしようぜ。」

決まり!

そんなこんなで時間を過ごした。




映画館では、何故かホラーを見たあと、アニメを見て、記念にクリアファイルを買って帰った。ちなみにオソロ。パンフも買った。

「なんでホラー」

『苦手?』

「いや、別に」

『あ、苦手なんだー。へーー』

「んだよその顔!」

てな感じで苦手なものがバレた。

『アニメかぁ、あんま見ないなぁ。あ、待って!これグロい???』

「そこまでではないけど、グロいの苦手?」

『そんなことないけど。』

「ふっ。苦手なんだな」

逆に苦手なものを知ったりした。

『クリアファイルとパンフ買って帰ろーか。』

「だな。記念だしな。」

『お揃いのクリアファイルにしよう!』

「いいよ。」

ゆったりと時間を過ごした。


遊園地では、ジェットコースター好きな千華に振り回され連続乗り、吐くかと思った。その後ポップコーン食べながら色んな乗り物に乗った。ちなみに俺のお気に入りは観覧車だ、最後に夜景を見ながら乗った。これもまたオソロの人形をかった。

『よし!!ジェットコースターだ!!』

「いいよ」

最初はそれでよかったものの、2回、3回となると俺は限界だ。

『もっかい乗るぞ!』

「いや、おま、何回乗る、んだよ。」

『何回も!』

「いや、ちょ無理、吐く。」

『え、嘘!大丈夫?情けない』

「そういう問題じゃねぇだろ。」

なんてちょっと千華が怖く見えたり。

『ポップコーン食べよ!』

「俺塩」

『私キャラメル』

「買ってくるわ。」

『私も行く!』

なんて言って、並んで買って、食べながら動いた。

「俺観覧車乗りてぇわ。高いとこ好きなんだよ。」

『いいねぇー。やっぱり、遊園地と言えば観覧車っしょ!』

「それは知らん。」

空いていたおかげですんなり乗れた。

『おぉーいい景色ー』

「綺麗だな。」

『やっぱ高いのいいねぇ』

そんな彼女の写真も撮る。これも内緒。

彼女が遠くを見てる間にそっとそばに行く。

『どした?』

振り向いた瞬間にキスをする。ちょうど頂上に来た時だ。

「ふっ。真っ赤」

『もう。、!』

「可愛い」

『だからぁ。。!』

そのまま彼女は顔が真っ赤だった。以外にピュアらしい。

帰りは手を繋いで帰った。まだ付き合ってはいないけど。それでもなんだか、今日は、それが許される気がした。


ちなみに、テストや成績は、ふたりとも上の中。

かなり上の方だ。

俺は覚えが良く、千華は理解が早い。

何も気にすることなく、彼女のわがままに付き合っていた。


中学校卒業式。

その日俺は千華を屋上へ呼び出した。

俺がフェンスを眺め待っていると

『うわぁ。この感じ懐かしい。』

千華がやってきた

『ここで私たち出会ったんだもんね』

「正確には小学校の屋上だけどな。」

『そうだね。でもあの日がなければ私たちはこうしてここにはいない。不思議だよね。縁って。

まだ君は、この世界が、人が、酷く醜く汚く見えるかい?』

「そうだなぁ。少しだけ、この世界もひとも、綺麗で美しく見えるよ。君のおかげで。」

『そっか、それなら良かった。

で、何か話があるんでしょ?

わざわざこの場所に、この日に呼ぶんだもの。』

「察しがいいよなお前。そうだ。

なぁ。千華。

俺の未来をお前にやる。

俺はお前のことを愛してる。

だからこの先も、ずっと俺の物語の中にいてくれ。

お前となら、この世界で生きていけるんだ。

幸せだと、綺麗だと、お前のおかげで思えた。

そしてこれからも、お前とそれを分かち合いたい。

俺じゃ、ダメか?」

『いいよ。君がいい。

もちろん。答えはイエスよ。

私を選んでくれてありがとう。

今まで生きていてくれてありがとう。

そしてこれからも、私と一緒に生きていて欲しい。』

「あぁ。当たり前だ。

愛してる。千華。」

『私もよ。透夜。』

あぁ、こんなにも、幸せなんだと、噛み締めた。

忘れないように。

その日はふたり写真を撮って手を繋いで帰った。

『それじゃあまたあした!』

「また明日」

触れるだけのキスをして。


高校はおなじだ。

クラスは違ったけど。

それでも充実してた。

わがままに付き合って。

逆に付き合わせて。

あの頃じゃ考えられない幸福感に満たされていた。

夏みたいな彼女に。惹かれていった。



けれど、高二の冬頃から少し千華は元気がない気がした。

「なぁ、なんかあった?俺聞くよ?」

『んー。何んもないよ。どして?』

「なんか、最近千華おかしいっつーか。」

『そー??君のヒーローの千華さまだぞ?』

「自分で言うか。間違っちゃいないけど。」

「なぁ、俺はお前のヒーローにはなれないのか?

俺を救ってくれたんだ、だから今度は俺が救う番だ。だから、悩みがあんなら、俺に行ってくれ。」

『君は私のヒーローだよ。わがまま付き合ってくれたものここまで。ずっと。

そうだな、ちょっとね、クラスに居づらくて。

ほら、私、自分が正しいと思ったこと、すぐ行動に移すでしょ?

クラスの隅にいたこがね、いじめられてて、手を差し伸べたの。そうしたかったから。そしたらさ、私が標的になっちゃった。

驚いたなぁ。その子、あちら側に回るんだもの。でも仕方ないよ。あんな事されてちゃもうやだもんね。』

「なんで隠してたんだよ。もっと早く言えよ。俺、そんな頼りない?」

『違うの!巻き込みたくなかった。だって、透夜も、同じ目に遭ってたから、関わったらまた。って。』

「俺は、千華と、生きるって決めたんだ。だから、お前がいる限り、俺まお前のそばにいる。」

『ありがとう。』


その日俺は、千華の教室に行き、あの日の千華のように叫んだ。

『お前らは人殺しだ!言葉は刃物なんだよ!見えない傷を生んで、見えない血が流れて、一生消えない傷になんだよ!お前らは今!この瞬間にも誰かの心を殺してんだよ!八つ当たり?暇つぶし?馬鹿げてる!されたことも無いやつが、語ってんな!その痛みを知らない奴が、勝手に人の心踏みにじるな!お前らは、もっと言葉の威力に気づけ!傍観者もやってるヤツらも、人殺しなんだよ!もう二度と、こいつに近づくな。』

ありったけの声量で叫んだ。

そして俺はあの日のように彼女の手を引き、学校を飛び出した。


『ありがとう』泣きながらつぶやく。

それは耳を済まさないと聞こえない程の声だ。

だけど俺はそれを逃さない。

「あの日の礼だ。気にすんな。」

「お前は、この世界の、人の綺麗なものを見失わないでくれ、お前にあんな思いさせたかねぇし、俺みたいになって欲しくねぇ。だから頼れ、もっと俺を。」

『うん。うん。ありがとう』

そう呟く彼女を抱き締めそっとキスをする。

俺が今度は守ると誓って。


その日から今度は俺のわがままに付き合わすようにした。

わがままなんてあんまなかったけど、昼休みに抜け出したり、夜景を見たり、旅行に行ったり、思いつく限りの思い出を作った。もちろん写真も欠かさない。


昼休みに抜け出す時は、2人して、周りを警戒して、ガヤガヤしてる中を通り、校庭に出る。そこからはダッシュ。門まで出てもとりあえず走る。

『、、、はぁっ抜け出せた!』

「っそうだな。」

『なんかこういうのいいね!君のわがままで!』

「そうか?それなら良かった」

『どこ行くの?』

「さぁ?決めてない。とりまコンビニ行こーぜ。喉乾いた」

『いいね!』

「ここからは競走な。コンビニに後に着いた方が奢り!」

『え!』

「よーいドン!」

『待ってって!』

走る、走る。2人して笑って、はしゃいで。

「俺が先。お前の奢りな、千華」

『ちぇっ。負けるの当たり前なのに。ずるい。君は足速いじゃん』

「そうか?けど奢りは奢りだ。」

『わがまま』

「さんざん俺は付き合ったんだぞ?お前のわがまま。お前も付き合え」

『ハイハイ。それ言われたらなんも言えないじゃん。』

『何奢ればいい?』

「コーラ」

『え、それだけでいいの?』

「いいけど?」

『意外とそういう優しいとこあるよねぇ。』

「なんか言った?」

『何も?ほら買うよ』

「おう」

その日は互いに飲み物を飲んで、だべって夕方になるまで、公園で遊んだ。ブランコが1番はしゃいでいた。

『やっほーーー!!』

「ブランコ乗りながらやっほーはないだろ、」

『気分よ気分』

半日のサボりだ。


夜景を見るのも、夜に俺があいつに連絡して丘に連れてった。近くに丘があり、そこには小さなベンチと机がある。少し古びているがそれがまた雰囲気が良くて好きだ。

『珍しいね。この時間に呼び出すなんて』

「夜景、お前とみたくてな。今日三日月だし。」

『三日月好きなの覚えててくれたんだ。嬉しいな。』

「当たり前だよ。俺も好きだし。」

『そうだね。でも、ほんとに綺麗。』

「わざと夜遅くに呼んだからな。親はだいじょぶか?」

『君と行くと言ったら許してくれたよ』

「俺の事なんて話してんだよお前は。」

『朝焼け、見れるなんて。君ほんとにモテるよ。』

「だから意味わかんねぇっての。」

「綺麗だな。」

『綺麗だね。』

「月が綺麗ですね」

『あなたと一緒に見るからでしょう。』

「ふはっ」

『ふふふ』

そうして笑っていると朝がやってくる。

『夕焼けは君と見た事あるけれど、朝焼けは初めてだな。』

「そうだな。」

なんてそのあとは互いに無言で夜から朝になるその瞬間を目に焼き付けた。


旅行に行くのなんて唐突に俺は言う。

「旅行に行こうか。温泉入ったりとかしよう。」

『え、急!まぁ親は許してくれるよ。君が一緒だから。』

「だからどーゆー話してんの俺の事。」

『頼れる大切な恋人です!』

「っ。あーもー、お前そーゆーとこ」

『照れてる』

「照れてない」

なんて会話をして。

田舎の温泉のある綺麗な宿に泊まって。

『和式だァ。すごい。』

「予約取ってたからな」

『いつから?!』

「秘密」

『ずる。』

そこから見る景色は酷く綺麗で。現実かわからなくなるほどだった。ちらほら赤やオレンジが見える。

「ここ、春だと桜と梅で埋まるんだと。」

『その季節にも来よう!!!』

「まじかよ。まぁそれもありか。」

結局来ることになる。

またはしゃいで、千華が枕投げを始めて、俺も応戦して。楽しんだ。

温泉はもちろん、温かくて気持ちよかった。

帰り際、名残惜しそうに振り向く彼女を写真に収め、手を引いて帰る。

「また来るんだろ、春に」

『そっか!』

また笑顔になる。それをまた写真に収めた。

秋の空気を吸いながら帰路に着いた。



高校を退学にならない程度にたくさんした。


季節はあっという間にすぎ、高三の夏。

俺たちが出会ったあの日。



なんだか嫌な予感がした。

何故か、分からないけれど

ものすごく嫌な予感。

俺は急いで学校に行き、閉まってる門を飛び越えて、屋上へ向かう。

早く早くと鼓動が知らせるように足を前へ向け走り出す。

屋上のドアを思いっきし開ける。

そこには、フェンス越しに千華がいた。


「千華?」

『あれ?バレちゃった?おかしいなぁ。そんな素振り見せたことないのに。

でもね、何となく、来る気はしたんだ。君が、ここに。』

「千華、やめ、ろ。」

『ごめん。透夜ごめん。私ね、もう限界なの。だから、綺麗に見える間に終わらせたいの。このままだと、綺麗なもの見えなくなっちゃう。だから、だから、私は私のまま、終わりたいの。』

「ダメだ!千華!

俺はお前がいないと生きていけないんだ!」

『ううん。君はもう。私が居なくても生きていける。汚いものの中に綺麗に光るものを見つけられる。

透夜はもう。大丈夫だよ。』

「嫌だ!君がいない世界なんて、僕は生きてたくない!」

『透夜

私の家の引き出しにある手紙、読んでね。

私から君への、大切な言葉だから。』

「僕じゃダメなのか?救えないのか?これから一緒に生きてくって、約束したのに。

僕は、どんな君でも愛してる。どんな君でも。

そして、今度は僕が君の光になるよ。

だから、やめてくれ。」


PartA



『私はもう。この世界で生きていけないんだ。このままだと壊れちゃう。だから、ごめんね。

透夜。わたしといてくれてありがとう。愛してるよ。

さようなら。』

その言葉を最後に飛び下りる

僕は必死で駆けて、手を伸ばす。

「千華!」

その手は、届かなかった。

僕は、何も、救えなかった。

苦しんでる彼女に気づいているのに。

何も出来なかった。

この手は、届かなかった。


「またね、じゃないのかよ。

いつものまた明日は?

なぁ。

千華ーーーー!!!!」

出したことも無い声が、いや、咆哮が轟く。

騒ぎを聞いて駆けつけた教師にすら気付かぬまま。

蹲って、叫んでいた。


葬儀では泣かなかった。泣けなかった。その資格すらないと思っていた。

母親に挨拶をする。

感謝された。僕の話を聞いていたと、楽しそうだったと。少しでも生きれたと。

それに礼しかできなかった。

申し訳なさでいっぱいだった。

僕と出会わなければよかったんじゃないかとか、色々懺悔の気持ちで、後悔でいっぱいだった。


あれから1年がすぎた。

僕は今、彼女の死を受け入れられずにいた。

1年かけても。まだなお。

ヒーローだった、救われた。

だから、今度は守ると決めた。ヒーローになろうと思った。救えると思った。


なんて、僕は無力なんだ。

なんて人間は、愚かなんだ。

悔しいなぁ。

届かなかった。

この手は。

千華の手は届いたのに。

俺の手は、届かないのか。

後、数ミリなのに。


彼女の幸せを、願っていたのに。何よりも。自分のことよりも。

なのに、彼女の苦しみに気づけなかった。気づけていたのに、手が、届かなかった。言葉が、届かなかった。

救いたかった、誰よりも。


だから、

僕は、君のヒーローになりたいと思う気持ちを捨てた。ヒーローになるのを辞めた。なれないと、資格はないと、自分を自分で封じ込めた。


彼女を守れなかった。ただそれだけが、僕に残されていた。僕はそれから何も持たなくなった、何も求めなくなった、世界の崩壊すら望むようになった、


彼女の居ない、何も無い日常。

代わり映えの無い日常に退屈している。

暇だと思っている。

何か起きないかなー。って毎日思いながら過ごしている。

当たり前の日々に嫌気がさしている。


人の本質は悪。人の黒い部分こそ本性だと思っている。彼女を貶めたのは、そういう黒い部分だから。


そんな日々に、ある日、手紙が届いた。

差出人は、『鈴原千華』

その文字に驚き、慌てて、それでもゆっくりと、その封筒を開けた。

そして、緊張した面持ちで、手紙を開く。


【拝啓 柊透夜へ

見てるかな?君がこれを読んでるってことは、きっとそこに私はいない。

ごめんね。

黙ってるつもりはなかったよ?

でも、私、逃げてしまいたくなった。

君に気づかれてたのはわかってた。

だから悩みを話した。

それでもね、それでも、このまま私が見てる世界が、汚れていくのが、怖くて怖くて仕方なかった。

君のヒーローで、いたかった。

綺麗なままで、強いままでいたかった。

でもね、それが無理そうなんだぁ。

君に弱いとこを見せたくない、君を巻き込みたくない。

君の光でありたかった。

君を守りたかった。

だからね、終わりにすることにしたんだ。

私が汚れきってしまう前に。

だって私、綺麗な世界のままでいて欲しかった。

綺麗な人でいて欲しかった。

それが黒く汚れてしまうのが嫌だった。

だから、終わらせる。

私の目が、私が、闇に呑まれてしまう前に。

きっと君は、最期まで私を追いかけて、私の側にいてくれるだろうね。

君のことだ、きっと、死に際すらそばに居てくれる。

優しい君だから、痛みを知ってる君だから。

君は私のヒーローだよ。

大丈夫。守れるよ。君は、君みたいな子供たちを。

私はもう居ないけれど、後なんて追わないでね。

私の分を生きてください。

私の分幸せになってください。

これは最後のわがままです。

今までありがとう。

これは君のせいじゃないよ。

私独断。


ねぇ。私の事、忘れないで、覚えていて。

愛してる。透夜。

私はこれからもこの先も今までもずっと、君の傍にいるよ。

わがままで勝手でごめん。

それと光でいてくれて、私のそばに居てくれて、私を愛してくれてありがとう。かっこいいよ、強いよ、弱さを抱えて生きてね。君は君だ。

汚れて醜い世界で、光を、綺麗なものを見つけた君なら、この先も生きてゆける。

私はそれを見ることは出来ないけれど、そんな君だから、見える世界がある。それを忘れないで。

光を見失わないで。

君と出会えて幸せでした。

さようなら。

いつの日かまた会いましょう。

愛してる。世界の誰よりも。

それじゃあまたあした!

鈴原千華より】


僕は号泣した。あの日のように叫んで泣いた。

生きなきゃならない。千華のために。

僕のこの先の人生を、千華に捧ごう。


チャイムがなる。千華以来の来訪だ。

僕は涙をふき。外へ出る。

そこに居たのは、千華に似た、千華の母親だった。

墓参りに行かないかと、今日は命日だから。是非あなたに来て欲しいと。

僕は泣き腫らした目で、手紙を握りしめた。

「僕なんかが、いいんですか?」

「貴方だからいいのよ。あの子が愛した、あなただから。あなたがいなければあの子はとうに壊れていたわ。あなたのおかげで、ここまで生きれたの。ありがとう。あの子を愛してくれて。出会ってくれて。ありがとう」

そう泣きながら話す。

僕はぐっと涙をこらえ、

「それはこちらのセリフです。千華が居なければ、僕はここにはいない。千華をここまで育ててくれてありがとうございます。出会えて幸せでした。」

お互いに礼をする。

墓までの道のりは無言だった。

お互いに、千華への思いで、いっぱいだったから。


途中で花を買った。その花の名はスイセンノウ。

花言葉は、私の愛は不変。


いざ墓を目の前にすると、千華は居ないんだと、実感させられた。葬儀の日の、目の開けない千華。あの日の飛び降りた千華。笑った千華。泣いた千華。今までの思い出が、フラッシュバックして、また僕はないてしまった。

「千華。千華」

その背中を千華の母親は撫でる。辛いのは僕じゃないのに。

僕は意を決し、喉に詰まらせた言葉を音にする。

「千華、僕は、僕にとって、君はヒーローで、光だった。君の悩みに気づいていたのに、何も出来なかった。言葉も声も届かなかった。僕は君を救えなかった。すごく後悔してる。

弱い君も、負けてしまった君も、僕は愛しているよ。ヒーローじゃなくなっても、君自身が大好きなんだ。もっと頼って欲しかった。巻き込んで欲しかった。君と一緒に乗り越えたかった。

あの日、君がそうしてくれたように。僕は、君のヒーローになりたかった。君に光を見せたかった、綺麗なものを見せたかった。見せれるようになりたかった。恩を返したかった。終わらないで欲しかった。一緒に、一緒に生きたかったよ。

なれたのかな?僕はヒーローに。なれるかな?

後を追いたいよ。だけど、それを君が望まないなら、君の分まで生きるよ、君の分まで幸せになるよ。

君みたいな子を救えるように、守れるように強くなるよ。僕は僕の弱さを抱えたまま、闇を抱えたまま、君の想いと共にこれからも生きるよ。

大丈夫君がいる。そう信じて生きるよ。君が信じてくれるかぎり、

僕は、俺は、大丈夫だ。

千華、君のことは忘れない。絶対。ずっと覚えている。君の言葉も、仕草も、笑顔も、何もかも忘れない、君との思い出と共に俺は生きる。

出会ってくれて、あの日救ってくれて、ずっと傍にいてくれて、ありがとう。幸せだ。大好きだ。愛してるよ千華。

さようなら。

またいつか、会おう。

そしたらたくさん話そう。」


俺はその時決意した。

手の届く距離の範囲は救いたいと、ヒーローであり続けたいと。

「千華、またここに来るね。毎年この日に、ここに来て、スイセンノウを君に手向けるよ。部屋にも飾るよ。いつもそばに千華が居ると信じて、千華の想いがそこにあると信じて。心からの感謝を千華へ。いつかまた逢えるその日まで、また明日。」


大学生になった俺は、

人間観察が趣味になった。

救うには限りがある、だけど、誰かの役に立てるならと心理学をとった。

他にも少し、歴史、薬学、医学、人類学を学んでいる。初めは、ただ何となく、気になってとった。でも希望を捨てきれない。まだ俺は誰かを救えるんじゃないかって。


ふと風が吹く、夏が来る。

潮の香りが鼻をすくずる。

俺はなんとなく、立ち止まった。

『ずっと傍にいるよ』

そんな声が、聞こえた気がした。

「うん。ちゃんとここに居る。」

俺は答える。

『それじゃあまたあした!』

またそんな声が聞こえた気がした。

だから僕は、俺は返す。

「また、明日。」


PartB



必死に駆ける。

手を伸ばす。

彼女は言う


『私はもう。この世界で生きていけないんだ。このままだと壊れちゃう。だから、ごめんね。

透夜。わたしといてくれてありがとう。愛してるよ。

さようなら。』


飛び降りる寸前、叫ぶ。必死に手を伸ばす。


「もう一度言う!

君がいない世界なんて、俺は嫌だ!

君が伸ばしたこの手を!俺は絶対に離さない!

俺の手を握ってくれてる、お前の手を、今度は俺が握り返す!

スイセンノウ!

花言葉は、私の愛は不変!

世界一千華を愛してる!どんな君でも!君は君だ!俺は!君の全てを愛する!

それじゃあまたあした!

そうやって!今この一瞬を!俺と生きよう!

それじゃあまたあした!」

彼女は泣きながら、俺の手を握り返した。強く。互いにつかみ合う。離してなるものかと。

『また、明日。』

精一杯の力で引き上げる。

そして抱き合った。

もう離さないと言うように。

彼女の手が僕の背中に回る。

『ありがとう。ありがとう。もう少し、私、生きてみる。君の言葉で、私は救われた。君は私のヒーローだ。光だ。ありがとう。私、透夜と、この先も、生きたい!』


風が2人を包み込む。優しく、優しく。

もうすぐ秋が来る。

季節は巡る。

2人を世界を包む。

夕焼けが影を落とす。

だけど、互いの顔だけは鮮明に見える。

まるで世界に二人きりかのように。

互いにまた抱き合い、キスをする。

まるでその存在を確かめるかのように。

世界は今、愛を謳った。



時は経ち、1年後。

あの日が来た。

俺たちは今、大学生だ。

あの日を生き抜いた俺たちは、もう二度と離れない。

ぎゅっと手を繋ぎ。見晴らしのいい丘へ行く。

『私たち生きてるね。また1年。生き抜いた。』

「そうだな。なぁ、お前は今、幸せ?」

『うん。幸せ。』

『私ね、ヒーローのままでいたかった、光でいたかった。きみの。

綺麗に見えてた世界が人が、汚れていくのが怖かった。見ていたくなかった。だから逃げたかったの。君に、弱いとこ、見せなくなかったから。』

「俺もだよ。お前に救ってもらった日から、俺はお前を守りたいと思った。ヒーローになりたかった。光になりたかった。カッコつけたかった。だから俺って一人称を変えた。」

『なーんだ、同じだ。

私たちちゃんと話し合えばよかったね。』

「そうだな。互いに思って、すれ違って。」

『私の言葉と手は透夜に届いたんだね。』

「届いたよ。俺も、届いてよかった。」

『ちゃんと届いた、』

「ずっと、これからも、一緒にいような。」

『当たり前。もう、離れない。忘れないし覚えてる。』

「俺もだ。」

『ね、海行こうか。』

「ふっ。今かよ。」


僕らは海で花火をしている。

花火大会の終わりに。

涼しい風が僕らを包んでいた。

僕らは寄り添い、息を吸う。

潮の香りが肺を包む。

その傍にはスイセンノウの花束があった。

そんな未来(明日)が見えた。



PartC



『私はもう。この世界で生きていけないんだ。このままだと壊れちゃう。だから、ごめんね。

透夜。わたしといてくれてありがとう。愛してるよ。

さようなら。』


俺は駆ける。必死に手を伸ばす。

それを見て千華は飛んだ。

俺は追いかけて。手を掴む。

そして、共に飛び降り、千華を抱きしめた。


『どうして?なんで透夜まで!生きてよ!』

「俺はあの日死んだ!!だから二回目の命は千華に捧げるときめた!あの日、俺の命を拾ってくれたお前が!命を捨てようとしてる!だったら!俺は!お前と共に死ぬ!お前がいない世界は生きていたくない。生きていける自信なんてない。俺は、どんな千華でも愛してる。」

『ばか。意味ないじゃん。これ。』

「ばーか。俺はいつまでも、どこにいたって、お前のそばに居続けるよ。どんな時でもな。」

『こんな時に言う?普通』

「いつもはお前が掻き乱してんだ。たまには俺だって振り回したっていいだろ」

『ほんとに馬鹿。かっこいいなぁもう。』

「カッコつけたいからな!俺はお前を守りたい。」

『だから今更。だけど、ありがとう。私も、どんな透夜でも愛してる!』

「なぁ、もうすぐ落ちるぜ。」

『そうね。なんだか、清々しい。何故かな。』

「一緒にいるからだろ。」

『確かに』

「スイセンノウは君に似合うよ。」

『なぁにそれ』

「花だよ。花言葉は、私の愛は不変」

『透夜らしい。君にも似合うよ。きっと』

「そうかな。」

「スゥ、、、それじゃあまたあした(来世)!」

『ふふっ。またあした(来世)!』


夏の風が2人を包み込む。もうすぐ明日が来る。

来世で、2人して笑って、線香花火を囲んでる。そばにはスイセンノウ。

そんな夢を見た。

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『世界は微笑む』 @Haruto10

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