『静かに告げる』

@Haruto10

静かに告げる

僕は今日、余命宣告をされた。

昨日の体育の日、ふと目眩がして、目の前が真っ暗になった。その後盛大に倒れたそうだ。覚えてはいないが。

気がついて、目が覚めたら白い天井に、腕には点滴、不思議でしか無かった。

両親と先生が病室へ入ってくる。何故か2人とも泣いていて、僕は意味がわからず、首を傾げた。

先生が神妙な面持ちで息を吸う。

『あなたは、突発性の癌です。』

その後ダラダラと病気の名前やら症状やらを言っていたが正直実感もわかなければ、難しすぎて理解できない。両親はひたすら泣いていた。

ただ一言、これだけは理解出来た。

『あなたは、もって、3日です。』

息を吸う。そして吐く。

3日。僕は3日で死ぬというのか。

やはり実感などわきもしないけれど、余命が3日。その事実だけが僕の胸を突き刺した。

何となく、何となく、僕はやりたいことが浮かんだ。

親がないているせいか、実感がないせいか、僕の頭は酷く冷静で、その事実を受け入れていた。

「あの、その3日で、僕、やりたいことしてもいいですか?」

『それは、つまり、治療しないと言うことでいいんですか?確かにあなたは持って3日ですが、ここにいれば、ここで少しでも治療すれば、もしかしたら伸びる可能性もあります。』

「はい、僕はそれでいいです。3日。その3日で、できるだけ、好きなことをして生きます。」

「僕はたまたま余命宣告されただけで、終わりがわかる。けどほかのみんなもそう、いつ死ぬか分からないんです。確立された明日なんて誰にもないから、人はいつ何が起こるかわからない。だったら僕は、今この一瞬を、懸命に好きに生きたいです。終わりがわかるからこそ。僕らしく好きに生きたいです。」

そう強く言う。

元々そうだ。僕は、退屈な日々に色をくれたあいつのおかげでそう思えたんだ。

明るくて朗らかで、元気で、僕を引っ張ってくれる彼女。幼なじみで恋人の、結崎 花蓮(ゆうさきかれん)。

そいつと僕は過ごしたい、

「僕は、一日目は家族と、2日目は、4人で生きたい。最後は、花蓮と生きたい。ダメかな?父さん母さん。」

母さんはひたすら泣いていた。

「好きにしなさい。残り三日。お前が生きたいように生きなさい。お前がそう決めたなら、俺たちはそれを受け入れるよ。」

「あなたは強い子よ、ほんとに。あのことであってほんとに強くなった。いいわ。好きになさい。」

『わかりました。それでは念の為薬を用意しておきます。3日間。悔いのないように。』

そう言って先生は病室を出ていった。

点滴は抜かれ、僕は自由になった。

早速一日目を家族と過ごそう。

身支度を整え、薬を貰って、車に乗って家に帰る。

車の中は無理に明るい声で母が話していた。

父は運転。

「すごい綺麗ね今日の空は。」

「そうだな。虹が出てるよ」

「ほんとだわー、ね、見える?怜真」

「うん。見えるよ、綺麗だね。」

忘れていた。僕の名前は四ノ原怜真(しのはら りょうま)

これは僕のたった3日間のお話。

このお話は全て、ここ、僕の日記に記してある。

いつでも誰かが読み返せるように。忘れないように。覚えていて欲しいから。


一日目


少し明るい声で話している両親。少し無理をしてることくらい見え見えだ。けれどそれに気付かないふりをする。

「今日、何かしたい事あるか?」

父が聞いてきた。

「3人で写真撮りたいかな。後、家の中で、母さんの料理をみんなで食べたい。後、父さんの好きなゲームして、アルバムみて昔話して欲しい。僕の。」

「わかったわ。母さん張りきってご飯作るわよ!」

「俺は手加減なしだからな」

「楽しみだなぁ。母さんの料理いつも美味しいから、父さん、少しは手加減してよ、」

「それは嬉しいわね!頑張らなくっちゃ!」

「ここは真剣勝負だ」

そうして笑う。うん。この空気が好きなんだ。僕は。

そんな話をしていると家に着く。

降りてすぐ、目眩がしたけど、少し支えてもらって帰宅。こんなにもすぐに症状が出るなんて驚きだ。

少し悲しそうな母の目に申し訳なくなった。

家に着くと息切れがしそうだったけれど、何とか普通を装う。あまり悲しませたくはない。楽しい笑顔を見ていたい。

僕が家に上がろうとすると、父が早めに入っていたのか遠くから声がする。

「庭でとるから!外に2人はいて!」

「わかったわー」

そんな会話をして庭でどこで撮るか、なんて話しながら待っていた。

「こことかいい感じじゃない?」

「そうだね、後ろも家だし、緑も少し入ってるし、いいかも。」

そうしてると、かなりすごそうなカメラを持ってきた父。お気に入りだと言っていたカメラだ。父はカメラが好きで写真を撮るのが趣味なのだ。

「え、それ父さんのお気に入りじゃん。いいの?使って。」

「いいんだよ、記念なんだから。」

わざと、最後、という言葉は避けていた。そんな気がした。

「そうだね。」

うなづいて微笑む。

カメラをセットし、母父その真ん中に僕、の順で並び父は急いでスイッチを押して、戻ってくる。

『はいチーズ』

パシャ。

お決まりのセリフで写真を撮る。

撮った写真を直ぐに現像し、見てみると意外と綺麗に、いやかなり綺麗に撮れている。

「すご、綺麗。」

「あなたさすがね。上手いわ。」

「ありがとう。」

ぐー。

お腹がなる。どうやら父が鳴らしているらしい。

「あ、ごめんごめん。腹減ったな。」

「よぉし!今度は母さんのばんよ!」

なんて張り切って家に入っていく。

僕達はゆっくり、カメラを片付けて家に入る。

動悸がうるさいのは無視をした。

母の料理を待つ間、父の部屋のカメラコレクションを眺めることにした。実はしっかり見た事ないし、きっと見るのはこれが最後だろうと思ったからだ。

父の部屋に入ると、すごくたくさんのカメラが並んでいた。

「うわ、すごい。なにこれ。」

「すごいだろ?これはな」

なんてうんちくが始まる。父さんの声は心地がいいからうんちくでも聞いていられるのが不思議だ。

「で、これが」

まだ話している。けれどこんな時間すら、愛おしく感じた。

「すごいね、父さん!カメラかあ。ひとつ借りてもいい?」

「いいぞ?すきに撮れ。」

僕は目に付いた隅にあるカメラをひとつ借りた。

これで写真を収めよう。それをアルバムの中に入れてもらうんだ。

試しに父を撮る。横顔がかっこいい。ほんとに惚れるのがわかる。

「お、今撮ったな、よぉし」

と言ってすぐ側にあるカメラをとって僕をとらえる。

「あー。撮られた」

「ははは。仕返しだ。」

そんな話をしていると、母の声がする。

「できたわよ!」

『はーい』

その声に返事をし、部屋から出る。

ちなみに、母の部屋は綺麗に整理整頓してある。料理本がちらほらあって、手芸が趣味な母の手作りのものがならんである。

食卓へ向かうと、僕の大好きなオムライス、しゃぶしゃぶ胡麻和えサラダ、甘めの卵焼き、味噌汁。

が置いてあった。

「え!僕の大好物だらけだ!」

「ふふん!腕によりをかけて作ったわよ!ほら早く食べてみて!」

楽しそうな母を見て僕も楽しくなる。

父と並んで座って

『いただきます』

母はドキドキした面持ちで、こちらを見ている。

「ん。美味しい。すごくうまいよ。」

「美味しいなぁ。さすが母さん。美味すぎるよ。」

「やったわ。私も食べよう」

目の前に座り食べ始める母さん。

こうやって3人で囲んで食べるのも最後なのかと思うと少し寂しい。

先程借りたカメラで写真を撮る。

「あれそれお父さんのじゃない?借りたの?」

「うん。僕も撮りたくて」

「きっとうまいぞ、何せ俺たちの子だからな。」

「あ、後で母さん、手芸アートおしえてよ。」

「いいわよ!」

そんな会話をしたあと無言でご飯を食べる。

『ご馳走様でした』

片付けは父の仕事、その間に僕は母に手芸アートを教えてもらうことにした。

「何を描きたいの?」

「桜」

「いいわね、まずピンクと緑と茶色の糸を用意して」

そこからは教えて貰いながら集中していた。いつの間にか何時間語っていて、出来上がった頃には夕方になりかけていた。

父は静かに写真を沢山撮っていたらしい。

「できた!」

「うん、上手いじゃない!さすがだわ!」

褒められ嬉しくなる。

「ゲーム、しようか。」

「そうね。」

「あ、ゲーム手加減してよ」

「しないさ。」

そんなこんなでゲーム開始、母と僕は見事に父に惨敗した。

「あーーー。負けたぁ」

「悔しいなぁ。」

「甘いぞー。」

なんて話をしながら片付け。アルバムを取りに母は部屋へ戻る。

「なんでそんなに強いのさ」

「好きだから。好きな物には全力でってな。好きなものをすきだと言えるようになれよ?好きなようにすればいいし、好きな物に全力であとはテキトーでいいし、やりたいことすればいいのさ。」

「うん。そうだね。ありがとう。」

「いやいや、何もしてないよ。」

すると母が戻ってくる。

そこからはアルバムみながら僕の昔話が始まった。

「これね!あなたが生まれた時よ、こんなに可愛いの。嬉しかったわ。あなたがお腹にいるって知った時は。」

とか、

「これはあなたの誕生日の日よ!豪華に飾って楽しく祝ったの!楽しかったわー、」

とか

「これは運動会だな、初めてお前が走りで1位をとった時だ。あれは凄かった。お前は才能あると思ったよ。」

とか、

「これは文化祭だな、はしゃいでいたな。母さんが。お前も楽しそうだった。」

とか、

「これは!中学生の時ね!入学式よ!もうほんとに大人になって!」

とか、

「あ、花蓮ちゃんだわ、ずっと一緒にいたものね、」

とか、

「卒業式だな。1番母さんが泣いていた。俺も嬉しかった。」

とか、

「高校入学式よ!!これね!あなたの制服に会いすぎて、父さんかと思ったわ!かっこいいの!」

とか、

「花蓮ちゃんと楽しそうね。良かったわ。」

とか。、

最近の話までして。

そうこうしていると、夜になった、

「色んな話が聞けてよかった。僕の知らない僕もいたし、すごく楽しそうに2人も話してて僕も楽しかったよ。いいね、こういうの。ありがとう。」

「私も楽しかったわ!」

「俺もだ。」

「母さん、いつも忙しい中家事をしてくれてありがとう。手芸アートすごく難しいのによくあんなにできるね、すごいや。僕を産んでくれてありがとう。

父さん、仕事で忙しくても僕と遊んでくれてありがとう。カメラあんなにすごいなんて思わなかった。もっと早くハマればよかった。僕をここまで育ててくれてありがとう。」

そういうと母は泣き出し、父は涙ぐんだ。

「こちらこそ、生まれてきてくれてありがとう。あなたが生まれてきてからより楽しい日々になったわ。」

「そうだな。お前は俺たちにとって光だ。暖かくて、優しくて、ほんとにこんなに大人に育ってくれてありがとう。」

そして僕達は抱きしめあった。

記憶の奥底に記録しておこう。この日を忘れないために。

その夜は薬を飲んだ後、3人で久しぶりに、川の字で寝た。幸せな夢を見た。


2日目


花蓮を家に呼んだ、両親と3人で迎えて向き合う。

「花蓮、僕ね、余命宣告を受けた。あと3日、今日入れてあと2日だって。」

「心配したの!あの後倒れてから連絡もないし、何かと思ったけど。それ、本当?」

「うん。本当。」

「そっかぁ。そっかぁ。」

なんて僕よりなくから少しおかしくて、

「なんで親でもない、幼なじみで恋人の君が、そんなに泣くのさ。」

「だって、だってさぁ。そんなの泣くに決まってるじゃんか。やだよォ。君が居なくなるの。私やだかんね。」

「そう言われても」

花蓮はいつもそう、僕より悲しんで、僕より嬉しがって、僕より楽しがって、僕より怒って、僕のことなのに、自分の事のように感情を出してくれる。そんな優しくて暖かい人だ。素直に言葉にする。素直に行動する。そんな彼女に惹かれたんだ。

花蓮と出会って恋人になった日も。そうだった。


中学一年の頃、引っ越した先での入学、友達なんてぜろ。ましてや僕はその当時喜怒哀楽なんてないも同然。そのくらい感情が表に出なかった。

ある日いつものように、屋上でご飯を食べていると、一人の女の子がやってきた。

「ねぇ!いつも君、ここで1人でたべてるの?寂しくないの?」

「別に。」

少し声をかけられて嬉しかったけど、表には出ず、ぶっきらぼうに答える。

「へー、寂しそう。1人でなんて。そうだ!今日から私もここで食べるね!君と一緒に。」

「はぁ?初対面で何も知らない奴と?」

「これから知ってくの!」

なんて言って強引に隣に座る。

少し僕は間を開けて横を見る。弁当を開けて鼻歌なんて歌って、いただきますなんて言う。

初めは強引で元気で明るい子、そんな印象だった。

そのひから花蓮は強引に昼やって来て隣で食べる。

そんな日が何ヶ月も続いた。

その間質問攻めにあった。

「ねぇ。君、友達いないの?」

やら

「家族構成は?」

やら

「1人でいつもいるけど話しかければいいのに」

やら

「君意外とイケメンだよ?モテるって」

やら

「好きな色は?」

「好きな食べ物は?」

「好きな季節は?」

やら

色々だ。

もちろん俺は

「居ない」

「父さんと母さんと俺」

「別に興味無い。」

「だから興味ないって」

「青」

「オムライス」

「春」

なんて感じで一言で返す。

その割に彼女は聞いてもいないくせに

「私は沢山いるよーー、えーとね!」

「父さんと私。母さんはね、私が小さい頃に亡くなったの。だから私が弁当を毎日作ってるの!家事は空いてる人がって感じかな。」

「私は桃色だなぁ。可愛いよね。」

「プリン!あれはもう美味しい!」

「春!同じだね!」

なんて沢山話す。

だんだん俺も心を開いて行くことになる。

そんなこんなで、質問攻めに加え、自分のことも話す彼女に付き合っていたら、いつの間にか1年半がすぎていた。

ある冬の日。

「どうして俺に構うんだ?」

「んー?んー。あー!わかった!」

「何。自分でもわかってないのかよ。」

「気になるから!てゆーか、君のこと、好きになっちゃったみたい!」

「はぁ??」

「君ってなかなか感情が表に出ないタイプでしょ??そんでね、君の事見てたら、なんて思ってるのかなーとかだんだんわかるようになってきて、君の少しした感情の機敏を見るのが楽しくて、いつしか気になり始めて、好きになった!」

「、、、いや、え、は?」

そりゃ困惑するだろう。しない方がおかしい。

「うんうん。困惑するのもわかるよー。だから、君は私を好きになってください!好きにさせてみせるよ?」

「いや、だから、意味わからん。俺のどこが好きなの。てかなんで表に出ないタイプってわかんの。」

「見てたらわかるよ。君見えないだけで、ちゃんとそこに感情はあるよ。」

「なんだよ、それ。ほんとに意味わかんね。」

ありがとう、なんていえず、嬉しかったともいえず、目をそらす。

「あーー、君、今、ありがとう。嬉しい、って思った?口角上がってた!」

「そ、れは。その。あーもー!そうだよ!なんでわかんだよ。」

「見てるからだよ。好きだからだよ。」

「あーそーかよ」

半ば投げやりだ。どんだけ見てんだ俺の事。好きってそういうことなのか?

そんなことがあってまた一年半、中学三年の冬。

彼女の見せる笑顔、たまに見せる悲しそうな顔、大体は家族の話、君の感情に、君に惹かれていった。

魅力があるんだと思う。彼女、花蓮は、人を惹きつける何かを持っている。そう感じた。

卒業式。その日に告白しよう。今度は俺から。

そう決めて。

「何考えてたの?」

「いや、何も。」

「嘘だぁ。悩み事?」

「違うよ、決意。ちょっとした」

「ふーん。今回は分からないなぁ。」

バレたか、いや、大丈夫だな。

少し隠すのが得意になった。まぁ、元々わかりにくい俺だからその辺は心配していない。花蓮しか分からないんだ、俺の感情の機敏さは。

そういえば、最近放課後遊ぶようになった。互いに部活に入ってない、所謂帰宅部だ。

カラオケやら公園で少し花火するやら、色々した。

カラオケは花蓮が独占。なんだかやけにテンション高く知らない歌ばかり歌ってた。花蓮はオタクだ。

夜公園で花火は、少し愚痴を聞いた。

「私さ、母親、いないから、いる人羨ましいんだぁ。」

花火を持ちながら彼女は言う。なんだか返答を待っていないように感じて黙って聞く。

「幼い頃に事故で死んじゃったんだって、それから父さんガ男でひとつで育ててくれて、感謝しかないの。忙しい中たまに家事してくれて、嬉しくてさ。母さんいないの寂しくないように、悲しませないようにいつも優しく接して頑張ってくれてる。私ね、それに恩返ししたいの。弁当作ったり家事したりしか出来ないけど、一緒に遊べなくてごめんねとか謝らせたくなくて。どうしたらいいかなぁ。」

「伝えたらいいんじゃないか?そのまま、思ったこと。」

いつものように、とはいえなかった。

「そっかそうだよね!ありがとうって伝えよう!」

「なんか別にあげたりしなくてもいいと思うよ。ありがとうとかそんな言葉だけでも、案外嬉しかったりする。」

「そうだよね!ありがとう。」

「いや、別に。」

「照れた?」

「、、、別に」

「照れたね。」

その言葉を無視して花火に火をつける。

その日の彼女は静かで、少し悲しそうな、でも優しい目をしていた。

最初の頃から随分印象が変わった。

元気で明るくて素直な子、それに加えられたのが、優しくてたまに不器用で、父親思いで、たまに寂しそうな悲しそうな目をするそんな子。

だから惹かれるのかもしれない。

時はあっという間にすぎ、卒業式当日。

俺は屋上へと駆け昇る。

既に呼んでおり、恐らくもういるだろう。

屋上のドアを開ける。

「遅いなぁ!もう。呼び出しておいて。

第二ボタンは取ってあるかい?」

「安心しろ、とってるよ。」

「遅れたくせにごめんね、がないなぁ?」

「ごめんなさい。(棒)」

「棒読み!感情込めて!」

「悪かった。意外に人がいたんだよ。」

「だからモテるって言ったじゃん」

「そうか?興味無い。」

「で?何?」

息を整える。深く吸って、吐く。

「花蓮、君のことを愛してる。君の未来を俺にください。」

「いいよ!私の全部あげる!

だから、怜真のこれからの未来を私にください!」

「いいよ。やる。」

そして僕らはそっとキスをする、第二ボタンを渡して。

それから恋人になった。

高校でも付き合っている。

水族館や映画館、オタク特有の場所、色んなとこでデートした。すごく楽しかった。

彼女と出会って俺は変わった。感情が表に出るようになった。素直に言えるようになった。それもこれも花蓮のおかげだ。


思い出にふけっていると父の声がする。

「どうした。?気分悪いか?」

「いや、思い出にふけってた。」

「え!私との!?」

「そう。」

それを聞いた途端笑顔を咲かせる。ほんとに春みたいな桜みたいな子。

「花蓮の彼氏になれて幸せだ。未来、やれなくて、貰えなくて悪い。けど、愛してる。最後の時まで。」

「私もよ。怜真。愛してる。だから、今この一瞬を無駄にしたくない。」

「そうだな。」

涙ぐむ彼女。そんな空気を晴らすかのように明るい声で母が言う。

「4人でどうする気なの?」

「花蓮のお父さんは来れる?」

「もうすぐ」

「良かった。」

「なんだ?」

「2家族で、ピクニックしたいなって」

「あら、いいじゃない!」

「そういう事ね、いいわよ!」

「楽しそうじゃないか、カメラの準備してくる」

そう言って部屋に戻る。チャイムがなる、ちょうど来たみたいだ。

「いらっしゃい。」

「お邪魔します」

2家族揃った。

「こんにちは。」

「こんにちは」

俺たちはお辞儀する。

「いつも花蓮がお世話になってます。」

「いえいえ、花蓮をここまで育ててくれて、俺と出会わせてくれてありがとうございます。」

「おまたせ」

ちょうど父も部屋から戻ってくる。

みんな互いに挨拶をする。

「弁当は私が作るわ!」

「え、でも。私も作れますよ?」

「いいの!ここはお母さんに任せなさい!」

そう言ってキッチンに向かう。

「でも。」

「大丈夫ですよ。母は料理好きですから。一人娘ができたと喜んでるだけです。」

「そうだよ。たまには、違うかもだけど、母の味?ってやつ食べて欲しいというか。」

「ありがとう。」

「私もいいんですか?」

「構いませんよ。どうです?みなさんで集合写真というのは。」

「いいな、それ。父さんナイス。」

「それはいい。ありがたいことです。」

キッチンからはいい匂いがする。

その間たわいもない会話をする。

学校ではどうだとか、そんな話。

そんな単純な話すら楽しくて仕方ない。

相変わらず動悸はすごいけど、それも気にならないくらい。楽しい。

「できたー。人数分あるわよ。」

おせちなどに使われるようなやつにたくさんの料理が並んでいた。

「うわぁ。美味しそー。すごいね、怜真のお母さん!」

「ほんとに料理好きだからな。にしても気合入ってる。」

「当たり前じゃない!新しい家族よ?」

「はは、ここにいる全員ひとつの家族だそうだ。」

「さすがお母さんとお父さん」

「ありがとう。」

「ありがとうございます。」

深くお辞儀をする花蓮の父。

それはこちらのセリフだ。だからまた俺も深くお辞儀をする。

「準備いいかい?車出すよ。」

「どこに行くんですか?」

「車で少しして出たところに、いい野原があるんですよ。」

「それは知らなかった!」

「すみません。私まで。」

「いいんですよ。こんな人数でピクニックなんて初めてですから。」

「ほら行きましょう?」

俺は先に車に乗る。薬は飲んである。

発作すら起こさなければ何とか大丈夫だ。

みんなが車に乗る。

運転は父、その隣に母、後ろに俺と花蓮と花蓮のお父さん。

車が出る。

その間もまた他愛のない話をする。

「ってことがあってさー!ねー怜真」

「そうだな。あったな、たしかに。」

なんてこんな会話すらやっぱり愛おしくて、今この一瞬一瞬を生きているんだと実感する。

途中発作を起こしかけたけど、みんなの迅速な対応で無事だった。

「悪い。助かった。」

「いいの。」

そんなことをしていると、目的地に着く。

そこは菜の花が沢山咲いていて、辺り一面に芝生が広がっていた。

「綺麗!」

「すごいな、こんなとこがあるなんて。」

「すごいでしょう?たまたま見つけたんですよ。」

そう言って写真を撮る。

「あれ、怜真もカメラ持ってる」

「うん。借りたんだ。父さんに。撮ってみたくて」

「似合ってる笑。」

「そう?ありがと」

そうしてるといつの間にか準備が整っていたのか、呼ばれた。

「早くーー。」

なんだか今日は母さんも楽しそうだ。

地面にレジャーシートを引いて、そこに弁当が置いてある。この人数で過ごすのは初めてだ。割と楽しみだったりする。

「美味しそう!食べよ!食べよ!」

「こら、花蓮」

「いいのよ?どんどん食べちゃって!」

「大丈夫ですよ。あなたも沢山食べてください」

それじゃあ『いただきます』

俺はあまり食欲がなくなっていて、少ない量しか食べれなかったが、美味しかった。

「んー!!すごく美味しい!!」

「あー。ほんとに美味しい。」

食べ終わったあと、集合写真を撮る。

みんなピースして笑って、楽しそうな写真だ。これでよかった。ちゃんと遺る。そう思うと嬉しくて、微笑んでしまって、それを父に撮られた。

その日はそのまま夕方までそこですごし、写真を撮ったり、話したりして、夜になると家に帰った。

「花蓮。また明日。」

「うん、また明日。」

そして別れたあと、また川の字で寝た。

これで、こうやって寝るのは最後か、と思うと少しだけ、寂しく感じた。


3日目

「やっほー、来たよ。」

花蓮が家にやってきた。

いつも通り薬を飲んで、出迎える。

「今日はどこに行くの?」

「近くの、海。」

「あー、あそこね。」

「はいこれ、お弁当」

「私のもあるんですか?」

「あるわよ。」

「嬉しい!ありがとうございます!」

「あ、まだ居た、はいこれ、」

と、父は昨日の集合写真を花蓮に手渡す。

「あ、ありがとうございます!すごく綺麗に写ってる。」

「ありがとう。」

「父さんは撮るのが上手いからね。」

「ほら行こう。俺の状態だと、ゆっくりしか進めないから。」

「うん。」

「じゃ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」

互いに涙をこらえた挨拶だ。

これが最後。

最後なんだ。

「ねぇ、怜真」

家から出て歩いているとふと声をかけられた。

「私を、最後の日に選んでくれて、ありがとう」

そう言って手を繋いでくる。

「いいや。俺を変えてくれた。俺を見つけてくれた、花蓮と、最後をすごしたかった。君と朝焼けと夕焼けを見たかった。」

「うん。そっか。ありがとう。」

俺もキュッと握り返す。

「海で何するの?」

「朝焼け見る。夕焼けは昨日見たから。朝焼けくらい君とふたりで。」

「素敵!私もあなたと一緒にみたい。」

ゆっくりゆっくり歩く。

気づいたら昼だ。

ようやく海に着いた。

「大丈夫?」

「うん。平気。」

本当は目眩も頭痛もするし、息だって切れてる。動悸もすごい。けれど、大丈夫。まだ、まだ、終わらないでくれ。俺。

そう願って笑う。

何かを感じたのか。寂しそうなそれでいて優しい笑顔でそっか、って言う。案外空気を読むのが得意なのだ。彼女は。

お昼を食べる。これまたゆっくり。

そろそろ夕方。

そして、俺も限界が近いことを悟った。

「花蓮。俺と出会ってくれてありがとう。お前との日々は忘れないよ。幸せだ。お前のおかげで、俺の世界に色ができた。ありがとう。ほんとにありがとう。愛してる。花蓮。幸せだ。ありがとう。愛してる。」

そうつぶやく。

花蓮の肩に頭を乗せて。

「私もよ、あなたを愛せてよかった、幸せよ。私と出会ってくれてありがとう。幸せ。ありがとう。愛してる。忘れないわ。絶対。」

「また、な。」

「またね。」

そうこうしてると夜になった。

そろそろ朝がくる。

「夜よ。朝焼け見れるわね。」

「そうだな。最後の時まで、愛してる。花蓮」

「愛してる。怜真」

そこで俺は息絶えた。幸せに満たされて。泣きそうなそれでも優しい明るい彼女の笑顔と、朝焼けを目に焼き付けて。

最後、君の声で「さようなら」と聞こえた気がした。


拝啓 結崎花蓮様

俺と出会ってくれてありがとう。愛してる。お前と居れて幸せだ。最後の時まで、愛してる。本当はもっと生きたかった。お前とたくさん時間を、日々を過ごしたかった。でも俺にはそれが出来ない。なら残り3日を大切に、一緒に生きたかった。一瞬を大切にしたかった。楽しかったよ幸せだったよ、お前との日々は。

忘れないでくれ。俺の事。何かあったら、この日記と、手紙と、写真を見てくれ。ちゃんと形に遺した。大切にしていて欲しい。

花蓮!愛してるぞ!お前の未来を俺にください!また来世!

四ノ原怜真より。

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