　ルデサス家はリヴェール家と同じ伯爵家であり、両家の親同士が幼なじみということもあって、俺は幼い頃からフランや弟のサリオと、よく三人で遊んでいた。

　だが、数年前。

　領内で謎の病が流行し、俺もその病にかかった。

　体調の異変に気づいたフランに、自分の状態を正直に打ち明けた。その日から、彼女は少しずつ俺との距離を取り始め、代わりにサリオと一緒に過ごす時間が増えていった。

　そして俺は、日常生活に多くの制約があっても、できる限りフランのために努力し続けたつもりだった。

　けれど、その努力は──報われることはなかった。

　やがて耳に入ってきた噂。

　フランとサリオが、俺のことを「話のネタ」にしていたという話。

　うっとりと見つめ合う二人の姿を見たとき、すべてを悟った。

　彼らはすでに、心を通わせる間柄になっていたのだ。

　俺はフランが、体の弱い自分を理解し、支えてくれていると信じていた。

　だが──それは、ただの勘違いだった。

　そもそも俺とフランの婚約は、リヴェール伯爵家とピナール伯爵家の間で交わされた政略の一環だ。

　もし破談にするのであれば、両家の父親たちを交え、正式な手続きを経て進めるのが筋というもの。

　それをあんな公の場で、他の生徒たちの注目を集めながら、一方的に発表するなんて──。

　俺の存在が、そこまで邪魔だったのか……。

　婚約破棄を突きつけられた俺は、心が折れるような感覚に襲われ、そのままパーティー会場から逃げ出してしまった。

　そして、心が折れかけた……。

　夢見ていた未来は、一瞬で崩れ去った。

　フランの冷たい言葉に深く傷つき、

　『自分の体のせいで彼女を苦しめていた』

　──そう思い込まないと、自分を保てなかった。

　最初の頃は、症状も軽く、周囲の人々もさほど気にしていなかった。

　だが病は次第に悪化し、医師たちも原因も治療法もわからないと首を振った。

　それが絶望だった。

　次第に周囲の人々は俺を「荷物」のように扱い、同情や支援の手を差し伸べることさえもしなくなった。

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