第39話 リタ対ハンド

無人地帯の動物園の後をジャイアントがリタを乗せて歩いている。先ほど凄まじいうなり声が聞こえたあたりだ。

大きな爆発があったらしく、クレーター状に廃墟が広がっている。

と、遠くの建物の上に人影が見える。

近づくと、紛れもない、カノウである。

リタが出会いがしらに怒鳴りつける。

「ちょっとあんた、私の仲間に中央公園で何をしてくれたの」

カノウが苦笑いをする。

「おっとっと、情報が早いなあ。今そちらさんに行かれると、せっかくの仕掛けが台無しになるんでね。ここでしばらく遊んでもらうよ」

リタが、じろりとにらみかえす。

「あなた、何者なの。いったい何がしたいの」

カノウはテンションをあげ、大声で叫ぶ。

「ハハハ、いよいよ始まるのさ。史上最大の戦いが、怪獣対戦がね。言っておくけど、その猿に勝ち目はないよ、こっちのキメラは、優勝候補のベスト3に入っているからねえ」

「キメラ?」

カノウは目の前の大きな爆発後あとを指差しながら続けた。

「この動物園ではねえ、避難が終わる前に大きなクリーチャーボムの爆発が起こり、そのまま放棄されたんだ。動物たちは生き残っていたのにな。ハハハハハ」

「動物園、ここ、動物園だったの?」

そういえば、見覚えのある建物が……。

いつか見た夢。幼いころの家族の思い出が重なる。

動物園と家族の笑い声

猿山を見て、振り向くと誰もいない無人の動物園

地響きがして、カノウの後ろの建物の陰から、とんでもない怪物が現れる。

ライオンと鷲の頭を持ち、ヤギの角、六本足のトラの体に、鷲の翼、蛇の尾、ほかにもヤマアラシのとげや、奇妙な触手もうごめいている。

カノウは生肉の塊を放り投げると物陰に隠れる。

ジャイアントもリタを近くに下ろすと、身構えた。

が、キメラの迫力に押され、威嚇しながらも後ずさりするジャイアント。

と、思いっきり突進し、ライオンの牙でぶつかるキメラ。

全身の剛毛を硬化させて逆立てそれを真正面で受けて立つジャイアント。土煙を巻き上げ、巨大生物バトルの火ぶたが切られた。

物陰からそれを見るカノウ、リタ、そしてさらにリタを見守るハンド。だが、その時ハンドの前に、謎の人影がふらりと現れる。ハンドに何か合図する。ハンドは、なぜか急にその場を離れ、人影の方に消えていく。


ジャイアントの巨大な拳が振り下ろされる。だが、キメラの波打つライオンの鬣がダメージを半減させる。

そして鷲の鋭いくちばしが、ジャイアントの顔面を襲う。

ジャイアントは思わず、後ろにのけぞる。

そこにすかさず飛びかかるキメラ、ライオンの牙が、鷲のくちばしが、ジャイアントに突き刺さる。

ジャイアントは、苦しみながらも、近くの建物の壁をもぎとり、大岩のように持ち上げて、キメラに叩きつけた。

今度は攻勢に転じるジャイアント、だががれきを投げながらキメラに迫ると、キメラの尾がうなり、ヤマアラシの巨大なトゲが空中を飛び、突き刺さる。

このトゲは、なかなか抜けないどころか、毒があるらしく動きが鈍るジャイアント。

「がんばって、負けないでー」

逃げもせず、応援するリタ。だがその時、物陰からハンドがふらりと現れる。

ハンドは応援するリタとジャイアントをじっと見つめ、ゆっくりと腕を付け替える。緊張が走る。なぜかいつものハンドと様子が違う。

巨大なこぶしで殴りかかるジャイアント。

だが、それを柔軟な動きでかわし、逆に飛びかかるキメラ。

劣勢に回ることが多いジャイアントだった。

その時、ハンドが怪物たちになぜか近付いてきたではないか。キメラにむけて武器を使おうとする。

リタがそれを見て顔色を変える。

「な、何をしているのやめなさい、ハンド!」

ハンドはやめようとしない。

「ファイアハンド!」

ハンドの腕から、強力な炎が吹き上がる。

物陰から見ていたカノウが、あせって飛び出す。

「あいつ何を考えているんだ。キメラ、逃げろ、爆発しちまうぞ」

キメラも炎をおそれて、ジャイアントから離れる。

ジャイアントも炎を避けて、遠ざかる。

リタがハンドの方に歩み出す。

「どうしたのハンド、いったい何を……」

だが、ハンドはさらに思ってもみない行動に出るのだった。

「ジェットパンチ!」

次の瞬間、ハンドはジェットパンチをリタに向けて打ち出す。

「きゃああああああ!」

リタの首元をパンチがかすめる。

直撃はしなかったが、凄まじい衝撃を受け、よろけて倒れるリタ。その場で気を失う。

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