第38話 モンスターローズ

ビル街を歩くジャイアント。肩にリタを乗せている。

遠く動物園から聞こえてくる、恐ろしい唸り声を聞いてジャイアントの足が止まる。

イネスから連絡が入る。

「どうしたのリタ。動きが止まったわ」

「西の方、動物園のある方から、すごい唸り声が聞こえてね。そうしたら、ジャイアントの動きが止まったのよ」

「よっぽど、すごいやつがいるのね。でも、安心して、シドたちはもう、目と鼻の先よ」

「そう、ならいいけれど……。ほら、いくわよ」

ジャイアント、またゆっくり動き出す。


中央公園の奥、シドとモリヤ、林の中を歩いている。

シドがモリヤに尋ねる。

「で、イネスは何て言ってた」

「例の不審人物のワナじゃないかって、リタが言ってるそうですよ」

「きっとそうだろうよ。でも万が一、本当だったら大変だからな。しかし、このへたくそな地図がこの公園の地図だと突き止めるのに、手間どっちまったなあ」

シド、持っていた紙飛行機を広げる。紙には、子供の字で、「助けて」という言葉と、中央公園の地図が書いてある。

林の奥へ、植物園の方へと、歩いて行く二人。

シドが耳を澄ます。

「聞こえるか」

「子供の……泣き声ですかねえ」

「間違いねえ。あの温室の陰だ」

かけつける二人。

だが、温室の壁の後ろにあったのは、子供の泣き声を繰り返す、ラジカセだった。

シドが拳をたたき付ける。

「やられた、やっぱりワナだ」

その時、温室の後ろから、巨大なとげの付いたタコの足のような、触手のようなものが伸びてくる。それは巨大なバラだった。とげのついた茎やつるを生き物のように動かしながら地上を這うように移動してくる。。大輪の赤い花の中央には大きな口が開き、牙がずらりと並んでいる。

シドとモリヤがドリル銃を撃つが、まったく効かない。それどころか、ますます怒り狂って襲いかかってくる。

「走れ!」

二人、中央公園の入り口に停めてある自動車まで走り出す。

ところが,途中で今度はもう一体のバラの怪物が襲い掛かってくる。

今度は白バラだ。

シドが蒼ざめる。

「こりゃ本格的にやばいぞ」

イネスから連絡が入る。

「増援部隊到着よ。公園の入り口方向に急いで」

やっとのことで、入り口まで来た二人、そこにやってきたのは、エルンストだった。

近くの木の陰からソロモン博士が呼ぶ。

「シド、モリヤ、こっちじゃ」

「は、博士。これは、いったい?」

立ちつくすエルンストに、2匹のバラの怪物が迫る。


無人地帯・市街地から離れて、緑の多い住宅地、マービンの車両が走る。

マービンが少し心配そうにリーガンに尋ねる。

「なんか町から離れていくが、こっちでいいいのかのう?」

「ええ、あの兵士に教えてもらったとおりです。確かに大きな反応がすぐ近くにあります」

「いよいよジャイアントのそばまできたみたいね」

マービンが確認する。

「そういえば、ミノタウロスはついてきているのかね」

リーガンが大きくうなずく。

「我々の守護神のように、ぴったりと後を追ってきています。ジャイアントからリタさんを奪還するのも手伝ってもらえるかなあ」

やがて大きな林の前で、車両は止まる。

林の中には、たくさんの増殖細胞のマッシュルームがあり、幻想的な雰囲気。

リーガンが首をひねる。

「おかしいなあ、反応はこのあたりからなんだが、ジャイアントらしいものは見えませんねえ」

レベッカがあたりを見回す。

「不思議な森ねえ、大きいキノコがたくさんあって、おとぎの国の森みたい」

マービンが窓から身を乗り出して森をうかがう。

「魔法使いでも出そうだな。ジャイアントはおるのかいな」

その時、カエサリオンの非常ランプが光り、警戒ブザーが鳴り出す。

「いったい、なんだっていうの?」

するとカエサリオンがしゃべりだした。

「緊急警報、とてつもなく大きなものが近くで動き出しました。至近距離です」

「どういうことなの? 何も見えないわ。」

すると、地響きが起こりトラックが大きく揺れた。

周りの木々が倒れ、地割れが起こった。地面の中から、数十メートルもある巨大な何かが出現する。

マービンが叫ぶ。

「何じゃあ、こりゃあ」

リーガンが確認する。

「ワームですよ。しかも、とんでもなく大きい。こんなやつは記録にありません。逃げましょう。あの大きな口を見てください、この車だってひと飲みですよ」

車両はうまく反転し、揺れる地面を逃げ出す。それを、巨大な口で追いかけるワーム。芋虫のような体の前面に大きな口が開き、その牙の並んだ口の中に、さらに二重、三重牙がうごめく。背中のあちこちから長い触手が生え、その先には同じような避けた口が大きく開き、消化液をまき散らしながら襲い掛かってくる。

「きっと、あの触手だけを地上に伸ばし、大きな獲物が来るまで待ち伏せしていたんでしょう。」

「リーガン、解説はいいから、とにかく逃げるんじゃー!」

とにかくでかい。しかも背中から無数に伸びた触手が、ねばねばしたものを吐きかけてくる。

リーガンがアクセルを思いっきり踏み込む。

「みなさん、しっかりつかまってくださいよ。うぉーー」

走る車、巨大な口がすぐそばまで迫ってくる。

レベッカが悲鳴を上げる。

「ジャイアントはどこにいったの?」

マービンが十字を切る。

「うう、神よ!」

カリバンが一人冷静に、みんなを励ます。

「みなさん、落ち着いて、大丈夫、助かります」

その時、黒いかたまりが、前方から凄い勢いで突進してきた。

「あ、牛さん!」

トラックを飛び越し、地響きとともに体当たり、ワームを吹っ飛ばす。ミノタウロスである。トラックはその間に道を外れ、少し離れた丘の上へと避難する。

マービンが右手を振り回し応援する。

「いいぞ、いけ、いけ、ミノタウロス」

「牛さあん、そこよ。芋虫をやっつけて」

ワームはすぐに体制を立て直すと、牙をむいた。

ミノタウロスは、うなり声をあげながら、にらみあっていた。

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