第31話 ベニマの実力
「シオンさん、シュリナさん、僕です。族長と戦った蜘蛛レオンです。どうやらさっきの戦いで
一生懸命説明して見るが、疑心暗鬼なふたり、信じていないのか理解が追いつかないのか。
『レムさん、蜘蛛レオンへの形態変化が可能です。
とりあえず言われた通りやってみた。
「あー、蜘蛛レオン様……でも、少しお姿が違いますね」
そういえば確かに感覚が違う、って、視界から見える姿って初期型じゃないかー。
『人族体型と魔物体型で能力値が増減します。いざという時に覚えておくと良いでしょう』
「名前とかないの? 人の姿で蜘蛛レオンってのも呼びにくいし」
名前かー、そういえば名前なんて考えたことなかったものなー、あ、一度メロディーって付けられたけど。
『あなたの名前は、レムです』
「レム?」
「レムちゃんって言うのですね。ちっちゃいし、容姿と同じで可愛いらしい名前です」
「え、あ……って、可愛い?」
人の姿に戻ってみる。言われて見ると髪は肩甲骨あたりまであるしお肌もスベスベ。背はシュリナさんと同じくらいか……どういうことだ。
『あなたの両親が名付けた名がそのまま刻まれているのでしょう。それに元々女の子でしたし、蜘蛛レオンもメスでしたからね。どちらかの姿を引き継いだのでしょう』
…………衝撃の事実。僕は女なのに男として振る舞っていたということなのか。
『大丈夫です、今は系譜が作れる立場になりました。どちらの性も持っていると考えて良いかと思います』
なんじゃそれー、良くわからない……頭が混乱する。
「蜘蛛レオン様、目覚めましたかな」
「族長さん!」
「パイリンとお呼び下さい。シオンやシュリナに置いても……いや、鬼族の全てにおいて敬称は不要です。
「えーー!」
族長の話しによるとこうだ──
元々鬼族はアーメルダの北東にあるダルメルカ王国に住み、現在神を守る国で王族に仕える身だったようだ。
現在神を開放する鍵となるのは王族の女性が持つ血、その血筋が奪われる事件があったようだ。開放を恐れた女王は独断でパイリンに密命を与えた。
現在神が封印されているシンボルを持ち出して護って欲しいと……パイリンはサムゲン大森林に運び込んで封印、王女はパイリンが認めた者にのみ解けるように自分の命を投げ売って封印を施したということのようだ。
「そういうことで、封印を解いた者を守るべく鬼族は守護者になろうと決めておったのだ」
「おばあちゃん……それでずっと役目をしっかり守る人を次期族長にするって言ってたのですね」
「その通りだ、ベニマなんかに継がせた日には役割なんて知らぬ存ぜぬで自分で解いてしまいそうだからのう」
カラカラ笑うパイリン、族長として肩の荷が降りたのか随分と明るくなっていた。
巻き上がる葉、吹き抜ける風、視界を一瞬だけ遮るような竜巻が吹くとそこには小さな妖精がふわふわと浮いていた。
「邪魔してゴメンねー、ちょっと頼みがあってさー」
「ま、まさかあなたは……シルフィード様」
「あー、パイリンちゃんいつも森を護ってくれてありがとうねー、ちょっとドライニからさーその蜘蛛レオンに言付けを預かってね。わざわざ出てきてあげたってわけ」
ふわふわ浮いている妖精。なんだか妙に偉そうである。
「えっと、どなたでしょう?」
「なにー、君、私を知らないわけー?
こっちの方が信じられないよ。その見た目、その喋り肩……(ダマサレテ ナイカ)
「で、その精霊王が僕に何の用ですか?」
「えっとね、このサムゲン大森林を守って欲しいの。もちろんタダでとは言わない。この領地を全部上げるわ」
「えっと……申し訳ないですが遠慮しておきます」
「残念でしたー、断ってもダメなのでーす」
《精霊王よりサムゲン大森林の管理者に任命されたことにより『朝露の恵』を獲得しました》
なんだなんだなんだ……強制執行ってことかー。
「じゃあ、よろしくねーって、忘れてたわ。ドライニアちゃんからでインフェルザン王国の国王が失脚し、新しく『ユマ・エリン』が国王になったってさー、特に混乱は起きてないようだから帰ってこなくって大丈夫だってさー」
シルフィードは言いたいことだけ言うとどこかに消えてしまった。
「我に任せるのじゃ。ここのことはなんとかしておくで、主はとっとと時の女神探しにでかけるのじゃ」
◆ ◆ ◆
と、いうことでウルドひとりをサムゲン大森林に残し鬼族の里に戻ってきた。そして今後のことを伝えるべく、
もちろん参加する立場にないシオンも事情をしる者として場所に参加している。
「皆の者ー、静まれー」
パイリンの言葉に鬼々たちが静まり返る。緊張感ある雰囲気を壊すようにベニマが口を開いた。
「族長よー、長ばかり
パイリンはゆっくりと立ち上がると心のなかで溜息をつくような表情を浮かべた。
「その通りだよ、ワシの族長としての立場はこれで終わりじゃ。これまで引き継いできた鬼族の使命は終わったのだ。今日を以て鬼族はレム様の配下に加わる」
族長に従い納得している者、急な出来事に困惑している者など様々、声一つ無い……鬼々がうろたえる音だけが響くこの館に大きな声がひとつ響いた。
「ふざけるな! なんで次期族長である俺様を無視して方針をきめやがる! このババァ」
よっぽど頭に血が上っているのか既に十字に差した刀を抜いているベニマ、ズカズカと歩いて睨みつけるように族長を見下ろした。
「ベニマがなんと言おうがこれが鬼族の宿命なのだ。レム様をワシらがお守りする、これがこれから鬼族の使命となる」
「ふざけるなよー、俺は認めねぇ。鬼族は誇り高き種族だ、俺様が世界最強なんだ! 世界のテッペンを取るんだよ! そのためにキリドを追い出したんだからな」
「キリドが出ていったのは仕方あるまい。それまでだったということだ。しかし、ベニマは何か勘違いしているな。ワシに比べたらまだまだひよっこだ」
「くそババァ、お前は俺様に一度も勝ったことないじゃないか!」
「ふん、相手の力量も読めず勝たせてもらっていたというのが分からんとわな」
おーこわ、いつも冷静そうにしてたパイリンさん……よっぽど怒ってたんだなぁ。
「
瞬歩から炎を纏った2刀流の刃がパイリンを襲う……それは、刀を抜くこと無く懐に潜ってパンチ一閃、頬をぶち抜きベニマを吹き飛ばした。
「まだまだだのー、せめてワシに刀を抜かせる位になっていると思ったのだが。ちなみにワシはレム様に負けたのだぞ」
パイリンはベニマの方に歩み寄り、首根っこを掴むと端っこに放り投げた。
『レム、出番ですよ。
この時のために練習した。久しぶり(イヤ ハジメテカ)の大声に痛くなった喉が辛かったんだよなぁ。
喉だけ
そして
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