『追憶(三)』
戸口から姿を現した
「おめえ、一人か? 兄貴————いや、
「俺ひとりです。二人とは別れました」
「
「
「星河ぁ?」
「あの白馬です」
玄龍の返事に玄貂は高笑いを上げる。
「ハハッ! こりゃあ良いぜ! まんまと逃げられちまったと思ってたのに、まさかおめえが連れ戻してくれるとはよ!」
「あなたは星河に執着していた様子だったので、
「……フン」
淡々と玄龍に自らの心情を指摘された玄貂は面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「今度は俺の質問に答えてもらえますか?」
「言ってみな」
「……玄武派に俺たちの情報を売ったのは、あなたですね……⁉︎」
語り口は変わらないが、その声には幾分かの怒気が含まれていた。しかし、当の玄貂はどこ吹く風といった様子で顎に手を当てた。
「ほお、早速奴らと接触したのか?」
「どうして、仲間を売るような真似を……⁉︎」
「どうして? 師父が弟子の命を使って遊ぶつもりなら、こっちも参加する駒を増やしてやろうと思ってよ。そうすりゃ『牌』も集まりやすくなるだろう?」
確かに、時間制限がある中ではこちらから仕掛けるだけでなく、向こうからも手を出して来る方が『牌』も集まりやすいだろう。玄貂の考えは理に
「そうですね……。ただ一つ、問題があります」
「問題? 何だ、そりゃ?」
「————それは、自分だけ高みの見物を決め込んで漁夫の利を得ようとするあなたの卑劣な心根です」
玄龍が静かに、だが力強く非難すると玄貂は黄色い歯を見せた。
「……こりゃあ良い、卑劣な心根と来たかい。で? おめえはどうするってんだ?」
「とりあえず星河の主人を解放してください。中に居るんでしょう?」
これには玄貂は意外そうな表情を浮かべた。
「居るには居るが、あのガキがおめえと何の関わりがあるってんだ?」
「分かりません。ただ、星河が助けて欲しいと言うのでそうするだけです。あの子は青龍派の門人では無いようなので放しても構わないでしょう?」
「ダメだな」
「どうしてです?」
「あのガキは操り人形を動かすための大事な人質だ。それに個人的に借りを返させてもらわねえといけねえ」
「————では、力ずくで取り返させてもらいますよ」
玄龍が構えを取ると、玄貂は真顔になり静かに語り始めた。
「……此処は懐かしいなあ。おめえと初めて会った、始まりの場所だ————」
「何……ッ⁉︎」
聞き捨てならない言葉に思わず玄龍が訊き返した瞬間、玄貂は脱兎の如く母屋の中へと逃げ込んだ。
「————待てッ!」
慌てて玄龍も追いかけ、中へと侵入する。
しかし内部は
「……忌々しいことに腕はおめえに敵わねえが————」
耳障りな声と共にボウッと
「————軽功と悪知恵は俺の方が上だ………!」
歪んだ口元から続く言葉が吐き出された時、もう一つの顔が暗闇から浮かび上がった。
「くっ……」
龍面の下で歯噛みした玄龍が見たモノは、星河の主人————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます