壊れた星の直し方(2)
「それでは被告人、言い残すことはあるか?」
大誤算だった。どうやら俺の処遇は既に決まっているらしい。裁判なんてあったもんじゃない。
「大ありだわ! こちとら罪状はおろか弁護人すら知らされてないんだぞ! それに現代の日本には公判前整理手続きの制度がある! よってこの裁判は無効だ!」
「煩い! ここでは私が法律よ!」
見ましたか皆さん。これがこの生徒会長の本性ですよ。普段人前ではあんなに優しい天上神だってのに、俺に対してはこの有様だ。とんだ暴君だ。
「裁判長! 私は極刑を所望します!」
便乗して何てこと言っとんじゃこのメスガキが。貴様面白くて言ってるだけだろ。こっちは軽く命掛かってんだよ、お前に捕まったせいで。
「うむ、夏穂君。私も元よりそのつもりだったから安心したまえ」
「やったー!」
本当に……この女性陣は一体何の恨みが俺にあるのだろうか。
それにこの部活にはもう一人男子部員が居る。そいつもここに姿が見えないということは、俺と同じくサボタージュをかましているということで違いないと思うのだが、どうして俺だけ裁判所兼断頭台に縛られているのだ。
さっきから鹿子は何も言ってこないが、その代わりにこれ見よがしに駅前の焼き肉屋の広告を見せつけてくる。
コイツの性格を知らない人が見ても、その広告が一体何の意味を持つのか理解しがたいだろうが、俺にはこのヤバさが分かる。
ではなぜヤバいのか。それは、本の虫を通り越して読書量の化け物であるとともに、彼女があり得ないくらいの大食漢だからである。
「ねえ、蘇雨。私、蘇雨がアルバイトしてること知ってるよ? ……焼肉奢って」
……額に冷たい汗が流れる。
恐らく「君の罰はこれで決まり!」ということなのだろう。……絶対にヤダ。こいつに焼肉でも奢った日には財布が一発でオーバーキルだ。
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