逃げる後輩のシバき方(8)

「こらー‼ 廊下を走るなー‼」


 激昂する部長の声。しかしその声も段々と遠ざかっている。やった、今日は逃げきることが出来る!


 しかし相手は部長慢心は禁物だ。先を読んでどんな対策を練っているのか、分かったものではない。


 この前逃げた時は先に俺の下駄箱のダイヤルが弄られており、暗証番号が変わってて開けることが出来ずに捕まった経験がある。

 しかし、それは俺が日常的に下駄箱ダイヤルをロックしていなかったのが敗因だ。ダイヤルさえロックされていれば暗証番号を変えることはできまい。


 そしてあれ以来俺は、毎日欠かさず下駄箱の鍵をかけるようにしてある。勝った。今日は俺の勝利だ!


 人波をかき分けかき分け、漸く最後の階段が目の前に現れる。

 この階段を下れば下駄箱はすぐそこだ。よしっ、行ける!


 俺はまるでゴールテープを切る陸上選手のような感覚で、思いっきり踊り場を通過する。


 嬉しさのあまり、残りの四段を勢いよくジャンプで飛び降りる。

 これで俺の行く手を阻むものは無い! 対あり、乙卍


「いーきどまりでーす‼」


 と、言いたかったのが一秒前の俺です。行く手を阻むもの、ありました。目の前に。小柄できゃぴきゃぴした女子生徒が。

 

 そう言えばうちの部活、アグレッシブな奴が最近入部していたな。忘れてたw。


「あああああああーーーー‼」


 ……この後、見事着地狩りを決められ確保された俺に部長が追いつくまで、そう長く時間は掛からなかった。

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