第19話
「仲間を増やすってのはどうっすか?」
出し抜けにペコが言った。
あの後、三人で借金を返す方法を話し合っている。
「仲間が増えれば、その分ライズさんの負担も減るじゃないっすか?」
「元はと言えば、こいつを仲間にしたせいで負担が増えまくったんだけどな」
半眼になってラビーニャを指さす。戦闘面ではペコも負担だ。まぁ、それを承知で組んでいるのだが。
「過ぎた事を悔やんでも仕方ありませんわ。建設的な話をいたしましょう」
「だからどの口が――はぁ……もういい……」
どうせ言っても無駄どころか疲れるだけである。
「確かに、使える仲間が増えてくれれば俺の負担は減る。三人ってのは、パーティーとしてはちと少ないしな」
身軽に動ける数ではあるが、最低限の数でもある。最低限という事は余裕がないわけで、戦闘面では誰かひとりが潰されると途端に破綻する。ペコがやられればラビーニャが癒しに回りライズが孤立する。ライズがやられればその時点でおしまいだし、ラビーニャが潰されれば癒し手がいなくなるので撤退せざるを得ない。一人増えれば、大抵の事には対応できる。
「わたくしもその案には賛成ですけど、一つ大きな問題がありますわ」
「なんすか問題って?」
「こんな借金まみれのパーティーに入りたがる奴なんかいやしないって事だ」
だらしなく頬杖を着き、ラビーニャの言葉を引き継ぐ。
店の中まで取り立てに来たのだ。ラビーニャの借金は知れ渡っている。加えて、見栄えだけは一級品のラビーニャを仲間にした事で、ライズの噂も再燃し、恐らく余計に酷くなっている。こんなパーティーに入りたがるのは、余程の馬鹿か変人だけだ。
(……そんで、うちにはその両方が揃ってるわけだが)
幸か不幸かと言った所だ。馬鹿に目を付けられなければ今でもライズは一人だったかもしれず、ラビーニャが変人でなければ、まともな神官が加わるのは随分先になった事だろう。
まぁ、追い出さない程度には賑やかにやっている。仲間には金で数えられない価値がある――とはいえ、頭の痛い借金だが。
「わかんないっすよ。自分やラビーニャみたいにおかしな奴が入ってくるかもしれないっす」
「自分で言うか?」
わたくしはおかしくありませんけど、というラビーニャのぼやきは無視した。
無視されるのが嫌いらしく、ラビーニャは露骨に拗ねた見せたが。
「……言っておきますけど、借金まみれのわたくしを追い出さないライズも、相当おかしい人ですわよ」
仕返しのつもりか、そんな事を言ってきた。
「だから、自分で言うか?」
まぁ、それを言われると言い返せないが。
「とにかく、駄目元で募集するだけしてみるっすよ。別にお金もかかんないっすし」
「まぁ、それもそうだな」
腰の重さがライズの悪い所なら、フットワークの軽さがペコの良い所だろう。とりあえずやるだけやってみるというのは、簡単そうに見えて中々出来るものでもない。
「募集出すのになにか希望とかあるっすか?」
「わたくしの言う事にはなんでも従うお金持ちのイケメンがいいですわ」
「ラビーニャは無視していいぞ。なんでもいい。会ってみてダメそうなら断る」
「え~。ライズさんに面接とか無理くないっすか?」
「どういう意味だよ」
「だって」
「ねぇ」
と、ラビーニャとペコはお互いに見合って肩をすくめる。
「……だから、それを自分で言うか?」
「感謝してるって事っすよ。ね、ラビーニャ」
「……まぁ、それなりには」
視線をそらしてラビーニャが口を尖らせる。一応照れてるつもりらしい。
そんな様でも、普段の態度と比べれば多少の可愛げはあった。
こちらもなぜか恥ずかしくなり、誤魔化すように頬を掻く。
「まぁ、あれだ。別に俺一人で選ぶわけでもねぇ。みんなで決めればいいだろ」
「自分より使えない奴がいいっすね」
「この際お金持ちならなんでもいいですわ」
「……普通の奴だといいな」
遠い目をして呟くが――こんなパーティーに入ろうとうする時点で、普通でない事は分かりきっていた。
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