第19話理事長(1)

 「着いたわよ…って、離れすぎじゃない?」


 一足早く学園に着いたセレーネが振り返ると、間に人が10人ほどはいるぐらいの距離に凪が歩いていた。

 セレーネは凪が近くに来るまで待つ。

 生き物に微塵の興味もない凪、セレーネが自分を待っているのをわかっておきながら焦らず、ゆっくりと学園へと近づく。

 できるだけ周りの人と目が合わないように下を向きながら。

 離れてるといっても人が10人分程度、ゆっくり歩いても、セレーネの元まで行くのに時間はかからない。

 凪がある程度の距離まで近づいたことを確認したセレーネは、学園の方へと進んでいく。


 「まずは理事長に会いに行くわよ」

 「理事長…」


 理事長と聞くと偉い存在に聞こえる。

 緊張はしていないが、怒らせると面倒なことになる可能性を考え、一応礼儀正しくいこうと思う凪。

 凪がそんなことを考えながらセレーネに付いていっていると、目線の先には、いかにも偉い人がいそうな扉が見える。

 ほかの扉とは明らかに違う、例えるならゲーム内の銅と金。

 明らかにオーラが違う扉をほとんどノータイムでノックするセレーネ。

 そして、凪の想像をはるかに超える一言をセレーネは放つ。


 「私よ。開けて頂戴」

 「……えっ!」


 これにはさすがの凪でもびっくりする。

 セレーネの言葉は、決して根上の人物に対して発するものではない。

 自分の聞き間違いを疑う凪だったが、発言後のセレーネは腕を組み、すごく偉そうな態度をしている。

 セレーネと理事長の関係性に急な不安が募る凪。

 

 「セレーネ様ですね。今、扉を開けます」


 扉の向こうから、若い男性の声がする。

 喋り方からして理事長ではないことを察する凪。

 理事長の護衛のような人なのだろう。

 それなら、セレーネが偉そうにするのもギリギリ理解できた。

 凪の脳内での状況整理が追い付くと同時に、目の前の扉がゆっくりと開きだす。

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