第16話未知の食べ物

 「ふぅ~…」


 膀胱の危機を何とか脱した凪はトイレから出て、セレーネが言っていたリビングへと向かった。

 トイレからリビングの間にはロティの部屋があった。特に事前にロティから教えてもらったわけではなかった凪だが、ロティの部屋はドアの外装からメルヘン全開で見るだけで目が痛くなるほどの真っピンク色のため、なんとなくロティの部屋だと認識していた。そんな、ある意味目がひきつけられる部屋を後にし凪はリビングへと入った。


 「待ってたわ。これがあなたの分の朝食だから早く食べて頂戴」


 凪を待っていたセレーネの前には色とりどりの食材が入った料理があった。

 この世界の食材は地球の食べ物と似ている味はあるが、見た目があまりにも違いすぎて、料理を出されただけじゃ、どんな味なのか想像がつかないものが多い。そして今、凪は前に出されていた料理の味が全く予想できないでいた。

 色合いだけなら甘い物のようだが、野菜にも見えなくもなかった。


 「これどんな味なの…?」


 凪は考えるのを諦め、素直にセレーネに尋ねる。

 セレーネは一度考えるようなしぐさを取る。


 「そうね…地球の食べ物だと鶏のお肉に似ているわね」

 「これが…」


 セレーネの答えは凪の予想をはるかに超えた。

 教えてもらった凪は自然と目の前の料理に目を落とした。

 セレーネの言葉があまりに信じれない凪、恐る恐るカラフルな食材を口へと運ぶ。


 「ね、鶏のお肉でしょ?」

 「……」


 セレーネが『言ったとおりでしょ?』的な笑みを浮かべる前で凪の脳内はバグっていた。

 凪が口にしたカラフルな食材は確かに美味しかったが、見た目とのギャップで味がわかりずらく、凪は脳内で必死に鶏の肉だと思い込もうとしていた。


 「早く食べ終わりなさいよ…」

 「待って。今無理やり自分の鶏肉への認識を変えてるところだから」

 「そんなんじゃ遅刻しちゃうわよ…」


 朝食をゆっくり食べている凪に溜息をつくセレーネ。そして、凪が朝食を食っている中、セレーネは椅子から立ち上がり凪に一言、


 「食べ終わるころぐらいにまた来るから待ってなさい」

 「…了解~」


 セレーネはそう言い残してリビングを後にした。

 一人リビングに残った凪、セレーネに「遅れる」と言われたが、特に気にすることなく自分のペースで朝食を食べ終え、セレーネがリビングに戻ってくるのを待った。

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