第10話ロティの趣味
「それでは霞原凪様、いろいろお聞きしたいことがあられるとは思いますが、まずはついてきてください」
「あ…はい」
凪の返答を確認したロティが歩き出した。それについていくように、凪も少し距離を取りながら歩き始める。
意外と奥行きのある廊下のようなところを歩いていき、途中にある部屋を一つ一つ丁寧に説明されていく。
所々メルヘン空間のようなところがあるが、いちいち目に入って気にはなるが我慢する。すると、少し凪の違和感に気づいたのかロティが振り返る。
「どうかなされましたか凪様?」
「いや、何でもない…よ」
「そうですか…」
ロティはまた振り返り歩き出す。
いくら生き物に興味がない凪でも、さすがに人の趣味をバカにしたりはしない。だからこそ、今ロティと2人きりの状況が少し気まずくなってしまっていた。そんなことを考えているうちに、また部屋の扉の前までやってきた。
「こちらが凪様の部屋になります」
「あ、ここが俺の部屋…」
凪が部屋のドアノブを握った瞬間、ロティが喋りだした。
「セレーネ様から凪様の人柄を事前にお聞きしてましたので、僭越ながら私がお部屋のセッティングをさせてもらいました」
「……え?」
ロティの言葉で一瞬にして目の前の部屋の内装に不安が募る。
凪は恐る恐る握っていたドアノブをひねり扉を開ける。
「こ…これは」
最初に凪の目に飛び込んだのはピンク一色の床に置かれている大量のぬいぐるみだった。こっちの世界で人気のキャラなのか、どこかしら日本のゆるキャラに似ている部分があった。
見ているだけで目が回りそうな空間に呆れてロティに言おうかと思った凪だったが、ロティの表情はやり切った感満載でとてもいえる状況ではなかった。
「あ、ありがとうロティさん」
「私のことはロティと呼び捨てでお呼びください」
「わかった。ありがとうロティ」
「いえ、これぐらいは当たり前ですので…」
そう言って凪に背中を向けたロティだったが、凪の目には少し嬉しそうに見えた。
「それでは凪様、私は今からお食事のご用意をいたしますので、少しの間自室でお待ちください」
「あ、ああ。わかった」
ロティは凪の部屋を後にし、凪は一人自室に残された。
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