第三十四話 イヤリス大尉
「ぎゃーー熱い熱い! 煙出てるぞ!」
痛そうに頭を押さえながら、スリカ少佐が私から離れる。その頭からは、うっすらと白い煙が上がっていた。
いかんな。撫ですぎた。
悪い気持ちもあり、素直に謝る。
「すまない。スリカ少佐が可愛くて、撫ですぎたようだ」
「自分が……か、可愛い!?」
怒ると思いきや、逆に嬉しそうな顔をして、考えるように腕を組みながら、話しかけてきた。
「可愛いなんて生まれて初めて言われたよ。
そうかそうか。自分はそんなに可愛いか」
「ああ、スリカ少佐は可愛い」
直球で褒める。
本音だし。
すると、スリカ少佐が、ぴょんぴょんその場で両足ジャンプをして、プルプル体を震わせながら、喜ぶ。
「くぅ〜〜なんだ、この全身が歓喜する快感は。もっともっと可愛いをくれ、クロノ中佐」
「可愛い」
またぴょんぴょんジャンプして、喜ぶ。
ウサギみたいで可愛い。抱きついて、もふもふしてもいいかなぁ。
そんな事を思ってるとは知らないスリカ少佐が、手の届く範囲にまで近づき、「可愛い」を求めてきた。
「もっとだ」
「可愛い」
「もっと!」
「いい加減にしろ、スリカ。上官相手に失礼だぞ」
シーナ大佐に一喝され、ぴょんぴょん跳ねながら喜んでいたスリカ少佐が、一瞬で兵士の顔になる。
「申し訳ございませんでした」
「うむ」
敬礼して謝るスリカ少佐の凛々しい姿に、シーナ大佐が満足げに頷く。
その一方、私は――。
ぴょんぴょんするスリカ少佐、可愛いかったのになぁ。
顔には出さなかったが、とても落ち込んでいた。
コンコンコン。
部屋のドアが三回ノックされた。
シーナ大佐が対応する。
「入れ」
「あああ、あの、し、失礼しましゅっ!」
あ、噛んだ。
ガチャリとドアが開き、おどおどした態度で入ってきたのは、青色の髪をシュシュで結んでおり、スリカ少佐達と同じ服を着た、スリカ少佐と同い年、同じ身長くらいの可愛らしい少女だった。
その少女は、緊張しているのか、目を閉じながら、精一杯って感じで、私達へと敬礼してきた。
小動物みたいで可愛い。
「が、ガーディアンズ二十六番隊所属。『イヤリス』大尉。到着しましちゃっ」
あ、また噛んだ。シーナ大佐に怒られないだろうか。
内心不安だったが、シーナ大佐とスリカ少佐は特に気にしてはいなかった。
むしろシーナ大佐は、スリカ少佐への威圧的な態度とは違い、優しげな声で、イヤリス大尉へと話しかけた。
「よく来た。イヤリス大尉。
いきなりだが、余の部隊に新しい隊員が加わった。クロノ」
シーナ大佐が目を合わせてきた。
その目は『自己紹介頼む』と語っている。
いや、この流れでシーナ大佐が私の紹介をしてくれよ……。
と、思いつつも、口には出さず、おどおどしているイヤリス大尉に体を向けて、怖がらせないように気を遣いながら、自己紹介をした。
「本日からガーディアンズ二十六番隊に所属する事になった、ディーア・クロノ。階級は中佐だ」
「わわわ、私……は、『エリクッサ・イヤリス』。せ、『聖職者』で階級はたたた、大尉でしゅっ!」
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