第35話

「やった。やったわ。ホロ家の戦闘用機械。これでもうあんな生活をしなくて済む。断罪の鎖は手に入らなかったけど、これが手に入ればもう関係ないわ。早く入りなさい」

「い・・・やぁ・・・・・・」


抵抗するたびに光を発してた腕輪が、ついにオーバーヒートして壊れる


「ちっ、面倒臭いわね」


操縦席にカリナを放り込む


「やだやだ。お母さん。お母さん」

「うるさい」


そう叫ぶと同時に機械の中にカリナを閉じ込めると

機械の目が光る


艶狐はニヤリと笑い


「東にいる小僧を殺しなさい」


そう命じた



「くそっ。騙された」


そこにあった大量の爆竹を蹴り飛ばす

まずい。


あれを手にしたらあいつら


そう考えた瞬間、爆発音が鳴り響く


すると、狼型の機械兵器が入ってくる


俺はこの機械の性能を知っている

相手にしたことはないが、あのクソ親父に一度自慢された


この機械の4本の足には掠っただけで何人いようが勝てるはずのない巨大魔獣をも殺せる猛毒を持ち


顎には15トンもの噛力を持つ


15種類もの名銃を搭載しており、口の中には当てたものを一瞬で原子に変える光銃も積んでいて、尻からは爆弾を落としていく


機械とは思えないスピードで


操縦者とは別にAIも搭載しており、たとえ操縦者が気を失ったり死んだりしても率先して戦いに行く


完全に破壊するまで止まらない機械兵器王神


俺は、急いで物陰に隠れようとすると

王神に先回りされて潰される


次の瞬間、王神が右前足を上げて俺を叩き潰そうとしたのを間一髪で転がり避ける


俺は余り物の銃で乱射するも、カキンカキンと銃弾を弾き返される


「クソが」


俺はよく見て弱点を探す暇もなく、王神に近づかれる


王神の股の下をくぐり滑り抜けて避けるも、俺に爆弾が落ちてくる


俺はすぐさまその爆弾を王神に投げつけて爆破するも

王神は無傷のままだった


次は、悪態もつかせてもらえず

王神は体から15本の銃が飛び出た


俺は正確に加速世界に突入し銃口を狙うも、避けるのに精一杯で銃口を王神に向けることすら叶わない


せめて、一人でも仲間がいたら

と考えるが、首を振る


たらればは今はいい


こいつを倒すことだけに意識を集中させろ


俺は、再び向かってくる王神を会えてギリギリで回避して王神の背中に乗り移る


しかし、そこも対策されていたようで15本の銃が向ける方向を変えて囲まれる


俺はすぐさま飛んで回避するが、王神が馬のように後脚を蹴り上げて、俺にその巨体をぶつける


俺は衝撃で倉庫に穴を開けて飛ばされる


気絶しそうになるが、無理矢理耐えて起き上がる

倉庫の中に入れて束の間の休息が許された


俺はそこで思考を加速させる


上もダメ、横もダメ、下もダメ

弱点ねぇな、おい


可能性があるとしたら、関節ぐらいだが爆弾でいけるか?


そう考えていると倉庫の屋根からピシピシという音が鳴り響き、倉庫の形が変形する


「やば」


俺は変形したおかげで少し開いたシェルターにスライディングで外に出ると同時に、シェルターが押し潰される


光銃を使われてたら完全に死んでたな


一手でも間違えたら、すぐに死ぬ


俺はシェルターをぶっ飛ばして突っ込んできた王神をまた避けて足の関節に無理矢理、手榴弾をねじ込んで爆発させる


すると、突っ込んだ足の関節から先が吹っ飛んで王神は倒れた


喜びそうになったが、それはすぐに覆される

王神の足が元の場所に戻っていき、くっついた


再生能力もあるのかよ


惚けた俺に王神がもうお前は死んでいると言いたげに目の前で大きく口を開いていた


死が迫っているせいかひどくスローモーションに見えて、ゆっくりとその口が俺に近づいてくる


およそ15トン

俺は今から、ジャムになるのか


そう割り切れもなく手榴弾のピンを抜いていた


回避はできない

道連れだ


このくらいで死ぬとは思えないが


そう覚悟を決めていたが、俺は何かに吹き飛ばされる


俺は何かにしがみつかれながら転がる

抱きついていたのがなにかすぐにわかった


「兄さん」

「セツナ!来ちゃいけないって言ったろ」

「嘘。死にそうだった」


守りながら戦えるとは思えないぞ?


「シズカ。あの倉庫の裏に隠れてろ。出てきちゃダメだぞ」

「でも」

「また死にそうになったら頼むよ」

「・・・わかった」


渋々納得してくれたようで、セツナは走り出す

王神はそんな隙を与えてくれるわけもなく


走ってこっちに向かってくる

俺は、王神の巨体を空間倉庫から盾を取り出し受け止める


性能上、軽くできていた王神を受け止めることは容易かったが銃口がこっちを向く


それと同時に《泣声》が聞こえた


『やだ。やだ。やだ。やだ。やだ。やだ。やだ。』


少女の・・・カリナの声だった


「カリナ!!止められるか!?」


俺は気付けば叫んでいた

この王神は、操縦者が止めようと思えば止められる


判断は間違っていなかった


ただ一つ俺は見落としていた


俺は、セツナが裏にいる倉庫に吹き飛ばされる

今度は穴を開けることもなくクレーターのみができた


カリナが、18歳の少女が難しい王神の操作ができるはずがなかった


「王神。まだ終わってないのかしら?早くやりなさい。そんな虫けらに構うほどの性能なの?」


そこには艶狐と呼ばれていた女がいた

この機械を追いかけてきたのだろう


その声を王神が聞くや否や、口を開けて光出した


「きたきた。それを早くやればよかったのよ」

『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』


何度も何度も効かない銃弾をぶちまけたせいで弾も爆弾もない


後ろにはセツナがいる


避けられない

死ぬ?  


最初からこいつに挑もうなんざ無理な話だったんだ


俺は、死を意味する光を一気に浴びた























俺はしばらく目を瞑っていたが

目を開けて身体が存在するのを確認した


おかしい


当たったはずだ


王神が光線を繰り出した瞬間、俺は咄嗟に


『時空魔術LV.2』


空間倉庫を出していた


「嘘だろ」


倉庫の中身を見ると光が蓄えられている


最強の盾を出していたようだ


俺はそのまま倉庫を王神の頭に向けて放つ


流石に原子レベルまで吹っ飛ばされれば再生できないようで機能が停止した


「嘘。嘘よ。負けるはずがない」


よろめく艶狐を横に俺は、騎乗者のいる扉を引っ張り開ける


「よぉ。チビ」

「チビじゃ・・・ない」


カリナは俺に抱きつき、ありがとうと何度も呟いていた


俺はその頭を撫でながら、気絶した



「ああーーーーーー。わたしの計画がぁぁぁぁぁ」


艶狐は髪を掻きむしりながら、カリナとマサトに近づく


「せめて、こいつらだけでも」

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