第九十四話 蜥蜴の怪異
「
「
「──これ以上の利用価値はないのではなかったのか、
「それについて詫びるのは僕の腹が満たされた後でもいいじゃないか」
「全く。最近の『若者』というのは俺には理解出来ん」
そんな愚痴を零している
それと前後して、再び
「弓兵隊には遠く及ばんだろうが、出来る限りのことをする。健闘を──祈っている」
言って中空に伸ばされた
子公の矢が雨粒の間を縫うようにして次から次へと蜥蜴を襲っていたから、接近するのはそれほど困難ではなかった。だが、近づけば近づくほど蜥蜴は巨大で、こんなものを斬れるのか、と自信を喪失してしまいそうになる。その心を見透かすように華軍が薄く笑った。
「小戴、ここまできておいて斬れん、では話にならんぞ」
「華軍殿はここでお待ちください。脚をひとつ、落としてきます」
「──既に俺の声など聞こえていないようだな。全く、その集中力を
華軍の悪口を右から左へと聞き流し、文輝は赤虎の背を踏み台に跳躍する。骨を断つのはどんな
援護する、と言った通り子公の矢はひっきりなしに蜥蜴に向けて降り注ぐ。不思議なことに文輝の身体を避けているのか、自らが射られる心配をする必要がなかった。脚を落とされた蜥蜴の動きは少し鈍ったが、それでもまだ雨が弱まる気配もない。脚をもう一つ落とせば、或いは。そんなことを考えながら文輝は中空で待つ華軍に向けて跳躍する。その背に飛び乗って、地面を見下ろせば蜥蜴の上半身は身動きの取り様もないほど緊密に矢を射掛けられていた。
「華軍殿! 反対側の脚も断ちます!」
「小戴! 随分と腹が据わったものだな!」
「その御礼は蜥蜴を斬り終えたら嫌と言うほど聞いていただきます!」
「まぁ、お前が先に音を上げると思うが」
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