第6話 確認と把握


 二人と別れた俺は今の自分の能力を把握する為に村の外れにある開けた場所へとやって来ていた。


 この世界にやって来てから今まで奴隷として働かされていた為漸く落ち着くことが出来た俺は今まで脱奴隷生活の事だけに集中していた事と能力を封じる枷に繋がれていたという二つの理由により現在の自分のスペックを把握していなかった事を今更思い出したのだった。


 自分のステータス等が把握できるコードクリスタルも入手した事だしこのタイミングで能力を少しでも把握しようと人の居なさそうな場所に来たのだがまずは何から始めようか…。


 「まずはコードクリスタルの仕様がどんな感じなのかの確認からするのが妥当だろうな」


 呟きながらズボンのポケットに入れていた青い輝きを放つクリスタルを取り出す。


 「確か念じればステータス画面が表示される筈だったな。…こうか? 」


 俺は目を瞑りゲーム時代によく見ていたメニュー画面を思い出してイメージしてみる。すると目を開ければ見慣れた画面が目の前に現れていた。


 「これはちょっとした感動だな…」


 次に画面を閉じるイメージをすれば目の前のそれは消えた。

 数回画面を閉じたり開いたりを繰り返した後今度はポケットにしまった状態で出来るかの確認をしてみたが難なくできた為次のステップに進むことにする。


 指で画面に映し出されたステータスと書かれた項目をタッチするとBSF時代に見慣れた自作のPCキャラの全体像とその横にステータスの数値が表示された。

 鏡など無かった為確認できていなかったが薄々感づいていた通りやはり今の俺の姿はこのシナリオをプレイする時に作ったマイキャラと同じになっておりそのステータスもゲーム時代の初期値と大差ないものになっていた。

 白銀に輝く髪に澄んだ蒼い瞳を持ったその整った顔立ちは我ながら自分のキャラクリの才能に拍手を送ってしまう程の出来栄えだ。

 

 画面越しに見る自分の今の姿を堪能した後今度はアビリティをチェックする。

 

 BSFで最初に作ったキャラという事もありステータスもオールマイティ型にしていたこのキャラは初期に二つ選べるアビリティもこのゲームにおいては無難なウェポンマスターと魔法全属性適正と言う物にしていた筈だ。

 予想通り開けたアビリティ画面にはウェポンマスターと魔法全属性適正と言う文字が表記されておりタッチするとゲーム時代と同じく説明文が表示された。


 《ウェポンマスター》【全ての武器を扱う才能を得るアビリティ。このアビリティを持つ者は全ての武器の熟練度が上がりづらくなる代わりに鍛錬をすればするほど伸び全ての武器の熟練度を世界が定める限界値まで上げる事が可能になる】


 《魔法全属性適正》【全ての属性魔法を覚える事が出来る才能を得るアビリティ。このアビリティを持つ者は習得条件を満たせば全ての属性魔法習得できる。しかし、魔法の熟練度を上げる事が条件になってくる中級以上の魔法の習得条件が全て通常の三倍になる】


 今の処ゲーム時代と比べて変化している点は見当たらない。


 次に確認するのはこの身体の性能と初期から使用できる技能の実験だ。


 まずは近場の木を全力をもって拳で殴りつけた。拳は木にめり込み大きな傷つけたが折れるまではいかなかった。

 次に試すのは掌破しょうはと言う名の初期アーツだ。


 俺はゲーム時代の事を思い出し構える。


 「掌破! 」


 先程とは別の木に向かって俺はそう叫びながら張り手を放つ。

 すると不思議な感覚を覚えたと思った瞬間凄まじい衝撃が発生し目の前の木は粉々に砕け散った。


 「初期技の掌破でこの威力かよ…」


 ゲーム時代は特定の物以外の環境オブジェクトは破壊不可能だった為試す事は出来なかったが思った以上にこの世界で置けるPCの能力は初期値とは言え高い事がわかったな…。


 メニュー画面を再び開くと掌破を使った分のMPマジックポイントが減っているのが確認できた。

 この世界では魔法や技を使うには魔力つまりMPがが必要になってくる。

 効果の高い魔法や技になって来るほどその発動に必要な使用MPは上がって来るのだが俺が今使用した掌破は必要MPがたったの3なのに木を吹き飛ばすほどの威力を発揮した。

 いくら異世界とは言え設定上BSFの世界でもこんなことが出来るのは一部の実力者だった筈だ。つまり今のステータスでも一般人からすれば化け物じみている事になる。


 まだ魔法は一つも習得していないが技に比べると魔法は範囲や効果が派手な物が多い為これはこの先扱いに注意した方が良さそうだ。


 その後もアイテムボックスなんかの他の機能も一通り試し終え問題なく使える事を確認しおわったその時、目の前の茂みが揺れそこから凶悪な顔をした狼が飛び出してきた。


 「ハングリーウルフか…」


 目の前のこの狼、ハングリーウルフは序盤の雑魚的としてBSFではポピュラーなモンスターなのだがこうしていきなり対面するとこうまで凶悪な顔をしているとは…。

 

 初めてのモンスターに若干気後れしたが気を入れ直し向かい合う。


 「グルルルルッ」


 唸り声を上げながらじりじりとこちらの様子を見つつ距離を詰めてくるハングリーウルフだったが次の瞬間地面を蹴り飛び掛かって来た。


 「クソッ!こっちはまだ心の準備が出来てないって言うのによ!仕方ねえ。これでもくらえ、掌破! 」


 俺の張り手がハングリーウルフの腹に直撃したと同時にパァンと言う破裂音が響き渡った。


 「オエッ」


 ハングリーウルフの身体は弾け飛び見るも無残な肉片へと成り果てそれを見た俺は思わず吐き気を催したがそれを何とか我慢する。


 「おい無事か?! 」


 聞こえてきた声に振り向けばラグナスが居りその後ろに居たカルヴィナと共に駆け寄って来た。


 「案内された家にも居ないし村でも姿を見かけなかったから心配になって探しに来たんだけどこれはどういう状況かしら? 」


 「それは…」


 ハングリーウルフの肉片を指さしながら聞いてくるカルヴィナには鍛錬中に襲われたと説明した俺だったがラグナスと共に呆れが混じった視線を送られた…解せん。


 「何にせよもう日も暮れそうだし今日は村に戻ろう。この惨状を見る限り相当腕が立つみたいだけど夜はモンスターも活発になるしジョッシュも態々夜にまで鍛錬する理由はないだろう? 」


 「もうそんな時間だったか…。鍛錬に集中して時間を忘れていたみたいだ。そうだな…今日は帰るとしようか」


 俺達三人は談笑しつつ村に戻ったのだった。

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転生したら見慣れた世界で奴隷でした アール・ワイ・オー @nanakiredxiiiffvii

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