第20話
トモちゃんも仲間になってくれた。
一緒に戦うわけではないけど、回復魔法を覚えて僕達が怪我をした時に治してくれる。
それだけでもとっても助かるけど、トモちゃんは先の計画を立ててくれた。
本当に頼りになるお姉さん。
ロキちゃんが羨ましい。綺麗て優しいお姉さんなんて。
でも、あんまり言うとリアの機嫌が悪くなるから気を付けなきゃ。
リアは僕を弟って思ってそうだからね。
一つしか変わらないのになぁ。
でも、綺麗で優しいのはリアもそうだよね。
トモちゃんとは違うけど、いつも僕の味方で居てくれるし、近くに居てくれる。
最高の…親友。
ロキちゃんは暫くの間、防具造りで休むって言ってたから、その間も僕達は森に籠る。
見つけたゴブリンやオークを倒していく。
リアとの連携を確かめて、スキルをどんどん試していく。
「土棘」
ゴブリンの足元から、小さな棘が生えて足を刺す魔法を考えたんだけど。
体から離れた所を操作するのは難しくて射程は2メートルくらいしかない。
ブーツを履いていたら効かないけど、魔物達は大抵素足だ。
戦っている時にいきなり足にブスっといくから、隙が出来る。
思ったより使える魔法になった。
あとは石球。
魔力球に属性を加えて、石の球を撃つ魔法だけれども、僕は石を形成して先を尖らせる事が出来るようになってきた。
まだまだ、刃物のようにはならないけど、上手くいけばもっと威力が上がるはず。
リアは風の扱いがどんどん上手くなってる。
風を自在に操って、自分自身のスピードと合わせてびっくりするような速さで敵に近づいていく。
敵には向かい風を、自分には追い風を。
普通のゴブリンなら、もう負ける確率はかなり低いと思う。
でも、それは油断だった。
3匹のゴブリンに遭遇して、戦闘に入る。
距離のあるうちに砂吹雪で敵の目を潰す。
いつもの勝ち筋だ。
僕達が集中している間に後方のゴブリンがリアを見ている。
手をリアに向けると、魔法球を撃ってきた。
油断してた。
魔法球を使うゴブリンが居るなんて考えてもいなかったので、リアも反応が遅れてる。
僕は咄嗟にリアの前に立って盾で受けた。
僕の作った木と藁の盾は砕けて腕に強い衝撃を受けた。
後ろに倒れるのをリアが受け止めてくれた。
真っ青な顔で僕を心配してくれている。
「大丈夫。早く倒さなきゃ。僕が前の2匹を引きつけるから、リアは後ろのをお願い。」
僕は痛む左手を庇いながら、右手で砂を出すし投げつける。
敵前衛が目を瞑り隙を見せると距離を取って、石球の準備をする。
その間にリアは追風を使って、敵後衛まで突っ込む。
ゴブリン(魔術士)はリアを見失ってる。
僕は石球を撃ってリアに行きかけたゴブリンの注意を引戻す。
(こっちに来い!)
僕は後ろに下がりながら、土棘をかける。
1匹が足をバタバタさせて座り込んだ。
これで1対1だ。
右手の木の棒を魔力鎧で強化して叩きつける。
胴を叩いてくの字になった所を、顔面を掬い上げるようにヒットさせる。
ひっくり返ったゴブリン目掛けて首を蹴り付けてから、もう1匹に向かう。
土棘を受けたゴブリンが立ち上がって僕に向かってこようとする。
(でも、遅いよ。)
後ろから音も立てずに近寄ったリアが後頭部と首に一撃ずつ入れた。
崩れるゴブリンに僕はトドメを刺す。
「ありがとう、終わったね。」
『ラナ! ごめんね。傷、傷は大丈夫? 手は動く? ごめんね。私のせいで。」
リアが泣きながら抱きついてきた。
心配させちゃった…よね。
「本当に大丈夫。魔力鎧で覆っていたし、今も魔力を痛い所に集中してるから、すぐに戻るよ。」
なんとなく、僕はリアの頭を撫でた。
安心するかなって思って。
リアは暫く泣きながら抱きついていたけど、そっと離れた。
『守ってくれてありがとう。』
リアの笑顔が眩しかった。
あぁ。
僕はこの一言の為に頑張ってきたんだ。
今までの努力が報われた気がして、僕は腕の痛みも忘れてリアの笑顔を見つめていた。
逆境から始める見習い冒険者 たらも @taramo99
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