第75話 10月30日 日曜日6
「別に私先輩の隣でもいいですよ?」
「——どういうこと?」
その提案でくるとは思わなかった。
「いや、ビーズクッションそこそこ大きいですから――い、一緒に?」
「——えっ?」
★
それからというか。どうなったかという結果を言おう。
サイドテーブルも小さいし。変に向かい合う形ではなんか変な感じということもあり。俺と胡乃葉は1つのビーズクッションに座っている。ほぼ身体が接する状態となっている。本当は俺はギリギリ落ちるくらいにはじめは座ったのだが。胡乃葉がもっとちゃんと座るようにと言ってきたので、今の形になった。
ビーズクッション君。いや、ちゃん。かもしれないが。2人も座ってごめん。一応1人用だよね?想定以上の人が座って。いつも以上に広がっているクッションだが――とにかく悪い。後輩がなかなか頑固でね。ちょっと我慢してくれ。という状況だった。
「はい。先輩。どうぞです」
俺がいろいろ思っていると、胡乃葉が手作りのクロワッサンサンドイッチを渡してくれた。普通に美味そうだ。お店で買ってきた?レベルだよ。綺麗に作るな胡乃葉。
「あっ。うん。って。ホント――クロワッサンのサンドイッチだな」
「だから言ったじゃないですか。そんな特別なもの出てこないと言いますか。作れないですよ」
「だな。まあそうだよな。普通のパンにも挟んだりするんだし。クロワッサンがあっても普通か」
「そういうことです。味は――大丈夫のはずです。はい。多分」
どう見てもおいしそうだし問題ないよ。俺はそんなことを思いつつ一口。ちなみに胡乃葉はめっちゃ心配そうに俺の方を見ていた。いやいやそこまで見られると食べに食い――って。
「うん。美味しい」
文句なく美味しかった。クロワッサンにいろいろ挟むのありだわ。
「ふー。良かったですって、切って挟んだだけですけど」
「いやいや、これありだな。クロワッサンにサンドイッチ。美味しい」
「良かったです。ちなみにドーナツ好きの先輩ならドーナツサンドイッチとかも好きそうですね」
「何それ!?」
また新たな商品名が出てきた。っか。無駄に興奮して反応してしまった。いや、ドーナツ好きだからそれは許してくれ。キモいとか言わないで。
「そのままですよ。ドーナツに野菜とか――です。って、先輩。良い反応しましたね」
さすがにちょっと胡乃葉に笑われたが――仕方ないんだよ。ドーナツ最強だからな。
「マジか。あっ、でも俺は――あの店のオールドドーナツでいいか。いや、あれをレベルアップ可能?いや。でもそのままだからいいのか」
「先輩。ホントあのドーナツ好きですよね。って、先輩。自分の世界入ってます?」
「あっ。悪い」
やばいやばい。今新たな可能性求めて違う世界を作りかけていた。隣に後輩が居るのに。悪い。
「にしても、マジであそこのドーナツは美味しいからな。あれ以上の物は今のところ出会ってないし」
「確かに美味しいですよね。って、自画自賛しておきましょう。美味しい」
すると、自分の作ったクロワッサンサンドイッチを食べた胡乃葉が隣で頷きながらつぶやいた。
「いい昼にありつけた。胡乃葉に感謝感謝だな」
「そんな。あっ、まだありますからどうぞ」
「サンキュ」
ちなみに食べつつ気が付いたことだが。誰かの手料理って家族以外の物だと初めてのような――と思いつつ完食した俺だった。いや、とにかく美味しかったし新たな発見だった。
食後は飲み物を飲みつつ。胡乃葉にクロワッサンサンドイッチやドーナツサンドイッチに付いて画像付きで紹介してもらった。
今のネットは便利というか。言葉を知っていればすぐに検索できるという。ってか。どれも美味そうだった。
って、俺達結局ずっとビーズクッションに座っていたのだが。気が付いたらかなりの時間近い距離に居たというね。
でも楽しい事というか。画像を見たりしている時はそんなこと全く気にならなくなっていたのだった。
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