第71話 10月30日 日曜日2

 『ちょっとミスったなー』と思ったのは、外に出てからだった。

 いや、室内は日差しが入って来ていて暖かく感じたが。外は風がひんやりとしていて、日差しの温かさを感じなくもないが――ちょっと今の俺の服装では寒い。涼しい。といった感じだった。でも少しくらいだしこのままで問題ないかと。と俺はそのまま伊勢朝日駅を目指した。歩いていればちょうどいい温度になるかもしれないからな。


 ちなみに駅へと歩きつつそういえば俺。昨日の夜もこの道歩いたよな。と、そんなことを思っていた。

 でも、同じ道と言えど、昨日は真っ暗の中を歩いてきたが今日は明るい時間だ。そこそこ人ともすれ違う。おじいちゃんが1人で歩いていたり。小さな子どもを連れた女性などとすれ違った。


 少し歩くと近鉄線の踏切と駅が見えてきた。そういえば昨日使ったから覚えていたが。伊勢朝日駅は上り下りで別々のホーム改札がある。胡乃葉は伊勢朝日駅に10時30分と言っていたが――集合場所はどこ?というかどっち?と俺が思いつつスマホをポケットから取り出して時間を確認する。

 時間は10時16分。集合時間よりまだ10分以上前。これなら遅刻やらやら言われることはない――などと思っていたのだが。ちょうど俺が歩いてきた方の駅舎前に明らかに知った顔が立っているのに早々と気が付いてしまった。


 オーバーサイズカーディガンとか言うんだっけか?ゆったりとしたカーディガンにパンツ。ズボンでいいか?パンツ?って、無駄なことはいいか。

 とりあえず抜けている感じ?というのか。シルエットは大きめ。でも足の方はすらっとしている。細めのパンツ――これは、何と言えばいいのだろうか?知識が少ない俺説明難しい。 

 言えることといえば、なんか抱き心地良さそうなふわっとした感じのオーラを出している胡乃葉が立っていた。抱き心地良さそうはなんか危ない奴か。

 ってか、早いよ?集合時間10時じゃないよね?遅刻じゃないよな?


 とりあえず俺はそのまま胡乃葉の元へと気持ち急いで向かったのだった。いや、気が付いたのにのんびりは悪いというか。胡乃葉を待たせているのは――だったからな。


「あっ。先輩。おはようございます」

「ああ、集合時間10時じゃないよな?」


 まず確認。これ大切。時間間違っていたらあやまりましょうだからな。


「違いますよ?準備出来ちゃったんで早く来たんです」

「寒いのに」

「これ暖かいんですよ」


 そう言いながらカーディガンを広げながら見せてくる胡乃葉。なんか――飛びそう?違うな。ムササビ……ってか。普段金曜日に会っている姿は大学用とでもいうのだろうか?普段の胡乃葉も落ち着いた感じで良いと思っていたのだが。今のおしゃれな感じもこれはこれで――似合っている。

 あと、やっぱり抱き心地良さそうは、あっている気がする。あっ、あれか小動物みたいだからか。なんかホントふわっとした感じだからな。


「——先輩?どうしました?」

「いや、今日の胡乃葉。可愛いな。と」

「なっ!?」


 言ってから気が付いた。可愛いは正しかったのか?胡乃葉も予想外の言葉をかけられたからだろう。ちょっと戸惑った様子になってしまった。わたわたというのか。もじもじというのか。困らせてしまったらしい。


「あっ。ごめんごめん。可愛いはダメだよな」


 大人大人。胡乃葉は大人。俺は頭に情報を叩きこむ。そしてなんといえばいいのか?と考えようとしていると。


「い――いえ、問題ないです。はい。えっと、良かったです」


 胡乃葉がそんなことを言いながら頷きつつ。俺の横へとやって来た。どうやら今の事は流してくれた?らしい。


「えっと――じゃ、先輩の家にレッツゴーです――ロフト見学に」

「何度も言うが。そんな面白いところじゃない――って、胡乃葉」

「はい?」

「なんかめっちゃおしゃれして来てもらって悪いのだが――行くの俺の家なんだよな?俺の家見て、どこかに出かけるとかじゃないよな?」

「先輩の家に行くからこれでいいんですよ?」

「そうなのか?」


 いや、マジで今の胡乃葉の服装なら、ちょっと俺の家は経由だけで、その後どっか出かけるので?って感じなんだよな。俺なんかの家に来る服装ではないというか。


「ダメダメ人間と思われたくないので」

「いや――そこまで気にしないが」

「良いんです」

「じゃ――えっと、行くか。って、何か飲み物とか欲しかったらコンビニ寄るから」


 俺が声をかけつつ歩き出す。


「あっ、先輩」

「うん?」


 すると俺が歩き出してすぐだった。胡乃葉が何か思い出したように。そして、ちょっと遠慮気味に?話しかけてきたので俺は振り返ったのだった。

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