第60話 10月28日 金曜日5

 しばらくそれぞれの時間割を見比べつつ固まる俺達。少しして俺が口を開いた。


「なあ、胡乃葉。こんなことってあるんだな。びっくりというか。何と言うか。すごいわ」

「あるんですね。ホントびっくりというか――何と言うのか。先輩の言う通りすごいですね。ってか、先輩」

「なんだ?」

「講義の間があいている時はどうしているんですか?お昼を挟んでいるから食堂とかで会いそうな気も――なのですが」

 

 そう言いながら胡乃葉は俺の空きコマ。月曜日や水曜日の開いている時間を指差しつつ聞いて来た。


「あー、俺月曜とか水曜は家に帰ることが多かったからな。それに俺食堂ってより、講義室でゆっくりの方が多いから、食堂は――使ってもお昼より閉店間際とかの方が使っていたかもな。ちょっと小腹が――とか、そもそもその時間なら空いてるし」

「あー、なるほど、私は友達とお昼の時間に食堂利用が多いので、その他の時間は――です」

「そりゃ会わないか。ってか確認」

「はい?」

「胡乃葉。まさか大学では男装しているとかないよな?」

「——なんでそうなるんですか」


 むー、っと、ちょっと頬を膨らます胡乃葉。いや、ちょっとの可能性でもというか。ここまで来るとね。ふと浮かんだことはすべて聞いてみたくなったんだよ。


「または――見た目がめっちゃ派手になるとか?」

「ないですよ。むしろ先輩こそ実は大学ではチャラチャラに変わっているとかじゃないんですか?」

「ない」


 これはあれだ。もう本当にホント奇跡的に俺達ズレていた。会わなかっただけらしい。本当にかよ。だが――現状そうなのだろう。さらに同じ友人。共通の友人ってのも居ない感じだったからな。誰かから話が――も、無かったらしい。


「まさかのですね。って、先輩先輩」

「うん?」

「一応ですが。確認です」

「確認?」

「先輩ってこのあたりに住んでいるんですか?」


 胡乃葉はそう言いながら多分桑名駅近辺という意味だっただろう丸を書くようなしぐさを俺の横でした。


「このあたり――っちゃこのあたりになるのかもだが――電車で少し乗ったところだな桑名では――ないな」


 俺が答えると胡乃葉が考える。そして――。


「まさかの――」

「まさかの?」


 すると胡乃葉は1人でぶつぶつと――俺には何をつぶやいているのか。考えているのかまではわからなかったが。


「いえ、なんか先輩とはもしかしてすごく近いところに居るのではないかとふと思いまして――」


 そんな胡乃葉のつぶやきを聞くと俺もとある事を考えた。


「——何を言いたいか。何となく。わかったぞ」


 あれだ。もしかして俺達住んでるのも近かったり?って、やつを胡乃葉は確認しようとしているみたいだが。まさかそこまでは――でしょ。


「胡乃葉も1人暮らしだったっけ?」

「あ、はい。ちょっと大学からは離れたところですが……ちょっと1人暮らしするなら――で、こだわっちゃったらちょっと大学からは離れました」

「ちなみに俺も1人暮らしするにあたって、こだわったことがあって大学からは遠いのだが――」

「……」

「……」


 何とも言えぬ無言のち。いや、まさか――という感じの空気が2人に流れてから。胡乃葉が話しだした。


「先輩は1人暮らしをするにあたって、何をこだわったんですか?」

「いや、ロフト欲しいなぁー、で」

「……」


 俺が答えると、胡乃葉がもう苦笑いの状態となった。これは聞かなくてもわかったぞ。どうやら俺達――そこまで同じというか。


「どうした?」


 一応俺が確認を入れると――。


「いえ、私もロフトいいなぁ……で、選んだもので」

「……」

「……」


 これは……何が起きているのか。いや、まさかの住んでいるところも?いや、でも同じということは無いはずだ。さすがにそれなら会うだろうし。あいさつ程度だが隣とか同じアパートに住んでいる人ならゴミ捨てとかで顔を見たことはある。その中に胡乃葉は居なかった。でもここは一応確認を――だな。

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