第21話 6月のある金曜日9
後ろからお姉様の声が聞こえてきた。そうだ、今日は来るのが遅かったからもう閉店時間だ。と俺は思い。先ほど閉じたスマホを再度見ると――すでに22時を過ぎていた。22時02分だった。あと、いつの間にかテーブル席の人はいなくなっていた。
「わわっ、ごめんなさい」
俺の横では慌てて荷物をまとめる小柄な女性。って、ちゃっかり飲み物もちゃんと飲んでいた。って、俺も食べて飲まないと。
俺はちょっとぱぱっと、この美味しいドーナツを食べるのは惜しかったが。でも本当に閉店時間を過ぎていたため。後ろから「まだ大丈夫ですよー」というお姉様の声は聞こえていたが。パパっと俺も片付けて荷物を持ったのだった。
俺と小柄な女性は真っ暗な外へと出た。いつも帰る時間より数十分遅いだけだが。何故かいつもより町は静かな感じがした。って、小柄な女性とまだ一緒に居るのだが。この後どうすればよいのだろうか?誰か教えてほしい。えっと――とりあえずだ。こういう時は――。
「えっと――駅向かう?」
俺が話しかけると、少し小柄な女性は驚いた反応をしつつも――。
「あっ――はい……行きましょうか。ここに居てもですから」
小柄な女性はちょっと悩んだ感じだったが。そう言うと歩き出した。とりあえず駅には行くと思っていたんでね。先ほどの会話でも駅って言葉があったし。それに――同級生とか。年上の人かもしれないが。さすがに真っ暗な時間で裏路地と言ってもいい場所。1人で帰らすのもだし。そもそも俺も駅には行くからな。とりあえず小柄な女性と一緒に歩き出した。って、駅までは少しある。され、無言は居心地が悪いからあ――。
「——ま、まあ知り合いに見つかっても、ちょっと俺と会ったとか理由付けに使ってもらっていいからって――男は嫌か」
ダメだ。何をこういう時話したらいいのかわからん。先ほどの会話の内容しか頭の中に無いんだが――。
「あっ、そ、そんなこと。あっ、えっと自己紹介もせず」
「いや、別に――自己紹介とかいいだろ。たまたま隣だっただけだし。あーでも、知らない奴にでも呼び名がないと面倒か。駅までにもし――そっちが知り合いと会ったりしたら。って時に戸惑ってもだしな。とりあえず俺はククだ」
「——81?」
少し首をかしげながら立ち止まり答える小柄な女性。いや、あっているのだが。そうではなくて――俺は頭の中でそう突っ込みつつ。小柄な女性の少し前で足を止め。
「それは九九。って、呼び名だ呼び名。ククってのは――その単に俺が良くゲームで使う名前を適当今使っただけだ。そのあまり気にしないでくれ。他にパッと思いつかなかっただけだから」
「あっ、呼び名。す、すみません。えっと――じゃあ、私は――ココです」
「……さらっと出てくるな」
俺は今までに使ったことのある名を使って言っただけだが――小柄な女性もすぐに出してきた。多分名前の一部なのだろうが――って、そう。今だけのためだからな。変に考えることはやめておこう。
「あっ、実は私もネットとかで使っている名前を――そのまま……」
「なるほど、って、じゃあココ。とりあえず駅行こう。こんなところで話していてもだし」
「あっ、はい」
ということで、これがココとの出会いである。何故に自己紹介をちゃんとしなかったのかは――まあ何となくである。いや、本当にこの時ばったりの人だとこの時は思ったし。
だからわざわざちゃんと自己紹介はいらないだろ。えっ?いる?まあ俺はいらないと思ったからこれで良しである。無駄に個人情報流さなくていいだろ?
それから俺達は少し話しながら。まあお互いに面倒な食事会や集まりは嫌だよな。個人。または少人数くらいがちょうどいいよな。的な事を話しながら桑名駅へと向かったのだった。
「ココはJR?近鉄?養老鉄道?」
俺は桑名駅の手前でそんなことを聞いた。これは桑名駅から乗ることのできる鉄道会社だ。いっぱいあるんでね。ちょっと確認だ。
「あっ、私は近鉄です」
そう言いながら近鉄線乗り場の看板を指差すココ。
「じゃ、俺はJRだからここまでか」
「あっ、そうですか……」
俺がJRの方を指差すと――なんだろう。一瞬だが。ココが寂しそうな表情をした気がした。って、気のせいだな。単にちょっといい感じに話が盛り上がっていたところだったからかもだが。気のせいだろう。話しているとココとは気が合うのか。すぐに馴染んだ感じで話していたからな。
それから俺達は一緒に改札までは抜けた。桑名駅は3つの鉄道会社が同じ改札なのでね。全て入り口は一緒だからな。
「じゃ」
「あっ、はい。えっと――急にありがとうございました」
「いや、まあ気を付けてココ」
「はい。ククさんも気を付けてください」
JRの方が先にホームへと階段があったので、連絡橋のところで俺達は別れた。そしてちょうど22時37分発の電車があったので、飛び乗る形で俺は桑名駅を離れたのだった。
だから俺は別れた後のココは知らない。それにもう会うことはないと思うし。とりあえず――無事に帰れるといいな。などと思っていたのだった。
実際は、ほんの少しだけまた話したいという気持ちもあったが。いや、マジで話しやすいというか。話が合ったのでね。このお店から駅までの短時間の会話で。
ってか、電車に乗りふと見た俺のスマホには、旺駆里からの無駄にたくさんにメッセージとスタンプが来ていたのだった。
ちなみに俺は無視を続けたのだった。いや、だって明日明後日は休みだし。どうせ月曜日の朝に会ってなんか言われそうだからな。それまではのんびり過ごさせてもらうことにしたのだった。あと――今日はドーナツ屋短時間だったが。いつも以上に今なんかいい気分だからな。スッキリしたというか。今までにない感じだったからな。これを壊されたくはないな。
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