第27話 独立
もうすぐ入学式となるので、魔法学園の制服に袖を通し、婚約者たちにお披露目をしている。
「新品の制服が初々しいですわね」
「本当に可愛くて、食べてしまいたい」
「昨夜もあんなにマクシミリアン様をしゃぶり尽くして、エリーゼはまだ足りないと言うのですか?」
昨夜のことを思い出して顔から火が出る思いだ。
婚約者なんだけど既に子作りは始めている。
ただ、三人が仲良すぎて夜いっぺんに相手をさせられている。
というか、三人でよってたかって僕を攻めておもちゃにしている。
もう、お嫁に行けない。
「もう、ちゃんと見てよね。変なところは無いかな?」
「大丈夫ですよ」
マルガレータがクスクスと笑う。
入学式で笑いものになりたく無いから、こうやって事前に確認しているんだけど、本当に大丈夫かなあ。
「学園で可愛い女の子を見つけても手を出さないでくださいね」
「出さないよ。エリーゼは心配性だなあ」
どこまで本気かわからないけど、エリーゼは口を尖らせて浮気を注意してくる。
「そんな気も起きないように、毎晩精を吸い取ればよろしいかしら」
ブリュンヒルデも悪乗りしてくる。
それにしても、肉食系女子なんだよなあ。
僕が年下のせいもあるかもしれないけど、主導権を握られている。
「授業中に寝ちゃうから、ほどほどにしてください」
今から学園生活をキチンとできるか不安だ。
そんな感じで、ワイワイと騒いでいたら、ブルーノがやってきた。
若い男性を一緒に連れている。
厨房で見たことあるな。
「あら、ブルーノにエルマーじゃない。どうしたの?」
ブリュンヒルデが名前を知っていた。
若い方はエルマーというらしい。
「お嬢様、実はこのエルマーが独立して自分の店を持ちたいっていうんですよ」
「あら、いいじゃない」
独立の話か。
でも、それならブリュンヒルデじゃなくて、公爵に持っていくべきじゃないのかな?
その疑問は次の言葉で解決した。
「マクシミリアン様の調味料を使った料理を広めたいんだそうで」
「は?」
疑問が解決したが、理解は追いつかなかった。
エルマーはそんな僕に自分の考えを説明してくる。
「マクシミリアン様、私はあなたのお陰で新しい調味料の素晴らしさを知りました。是非、この味を他の人にも伝えたいんです」
「それはわかるけど、この屋敷を出たら僕はエルマーに調味料を渡す事はないよ」
独立した料理人に貴重な調味料を渡す義理はない。
買うと言うなら売るけど、それはとても高額なものになる。
この国にあるもので再現するのも可能だろうから、無理に僕から買う必要も無いものもある。
それはエルマーもわかっていると思うが。
「はい。それなので株式会社を設立して、マクシミリアン様にも株主になっていただこうかと」
「そうきたか」
エルマーの考えがわかった。
僕も株主として経営に参加、というか利益があるようにするわけか。
「あら、それはいいですわね。上場するには貴族の保証が必要だけど、マクシミリアンなら子爵になってますから、十分にその資格がありますわ」
ブリュンヒルデの話では、上場するためには貴族の保証が必要で、そのためにどこの上場企業も貴族が株主になっているようだ。
別に株主である必要はないのだが、それでは保証する貴族にメリットがないので受けるものがいない。
保証は上場審査を簡略化する目的がある。
上場時に不正があれば、保証した貴族が株の買い戻しに応じなければならないのだ。
ただ、上場後の粉飾決算などはその保証の限りではない。
「僕も株主か」
「マクシミリアン様には発行済株式の10%をお譲りいたします。それとは別にストックオプションを設定します」
「ストックオプションねえ」
ストックオプションとは業績などに応じて、新株を受け取る権利だ。
例えば株価が100円だとしたら、そこから企業業績が上昇して、株価も1000円になったとする。
ストックオプションとして、株を500円で買う権利を持っていれば、その差額500円が利益となるわけだ。
特に新興企業などではよく見られる。
今現在渡せる報酬がないときに便利だからだ。
「IPOで調達する資金はお店の準備に使いたいので、出来れば最初の調味料の仕入れもストックオプションにしたいのですが」
IPOとは新規株式公開による売出しの事だ。
株を売りに出して、そのお金を開業資金に充てるつもりらしい。
新規で事業を始めるのに、手元に資金がある人はほとんどいない。
どこかから借りるか、こうして株を売り出すかして資金を調達するのが一般的だ。
エルマーはIPOでの資金調達を選んだわけだ。
「ところでブルーノ」
「なんでしょう?」
「エルマーの料理の腕はどうなの?」
そこが重要だ。
投資をするからには、エルマーの腕も確認しておかなればならない。
ここは厳しくいかせてもらう。
「それなら問題ありませんよ。若いけどもう教えることはありません」
「そうか」
ブルーノに褒められてエルマーは少し恥ずかしそうに笑う。
まあ、ブルーノのお墨付きなら問題はないか。
「僕はそれで構わないけど、公爵の許可は取ってほしいな」
「あら、お父様は料理人の人事には口を出しませんわよ。ブルーノが辞めると言うなら口をだすかもしれませんが」
ブリュンヒルデが言うには、使用人が多すぎていちいち人事に口を出してくることは無いようだ。
それもそうか。
こうしてエルマーは無事に公爵の料理人から、独立した料理人になった。
オープンの日には呼んでくれる約束をして、屋敷を後にする彼を見送った。
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