第70話:開戦

「大公殿下、次の謁見者が待っておられますが、次の謁見を中止して、少しお休みになられますか」


「ああ、特使殿には悪いが、そうさせてもらおうか」


 横に座っているだけの俺がこんなに疲れたんだ、父上はもっと疲れてられるだろうし、セバスチャンが心配するのは当然だ。

 そうファイフ王国の特使が受け取ってくれればいいのだが、最近ずっと軽く扱われて体面を傷つけられているから、無理だろうな。

 間違いなく今回も無礼な扱いを受けたと思うだろうか。

 実際こちらも意識してケンカを売っているから、これで暴発してくれるだろう。


 ★★★★★★


「大公殿下、ようやくお会いする事ができましたこと、うれしく思います」


 ファイフ王国の特使が、内心の怒りを飲み込んで下手に出ている。

 先の戦争の事もあり、よほどの理由がなければ開戦に踏み切れないのだ。

 大義名分もだが、戦力的にも必勝態勢を取りたいのだろう。

 そのために今回の謀略を仕掛けたのだろうが、愚かすぎる。

 セバスチャンが教えてくれた言葉に、貧すれば鈍するというものがあったな。

 俺と従魔が全ての気配を消して探っている可能性を考慮していない。


「そうだな、私もうれしいが、イーライもうれしく思っているぞ。

 特使殿の話しが本当なら、王族級の魔力を持つ娘を、それも本当の王女を三人も連れて来てくれたのだろう」


「はい、国王陛下が目に入れても痛くないと思われている、掌中の珠と言える王女殿下を、人質同然の側室と言う名目の妾に差し出すのです。

 王国内が大いにもめたのも、賢明な大公殿下と公子殿下には理解していただけると思います」


 おい、おい、おい、恨み辛みを口にしてどうする、特使。

 そもそも最初に俺たちを殺そうと侵攻してきたのはお前たちだろう。

 それに、そういう言葉は、父上と俺の謀殺に成功してから言えよ。


「ああ、理解しているよ、特使殿。

 大切な、本当に大切な娘を自爆させて私とイーライを殺そうと言うのだ。

 悩み苦しむのは当然だろうが、失望したよ。

 前回の失敗から何も学んでいない、娘を無駄死にさせる愚かな行為をな」


「な、何を言っておられる」


「貴国がリンスター王国と裏で手を結んでいる事は既に分かっている。

 自爆攻撃に対しても、万全の防御魔術を展開している。

 貴国とリンスター王国の国境線には、イーライの従魔を展開している。

 もう貴国に生き残る道はないのだよ、諦めたまえ」


「嘘だ、嘘だ、嘘だ、王級三人が心を一つにした自爆攻撃に耐えられる防御魔術などあるはずがない、やってしまえ」


 これで十分だ、この場の光景と言葉は、俺の魔術でファイフ王国とリンスター王国の首都に上空に映し出してある。

 三人の娘は可哀想だが、開戦の人柱になってもらおう。

 これで大公家は三カ国分の領地を持つ大国となる。

 いや、大砂漠だった場所の開拓に成功すれば、百カ国分の耕作地を持つことになるから、俺の魔力なしでも大陸統一が可能になるだろう。

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前世が最悪の虐待死だったので、今生は思いっきり人生を楽しみます 克全 @dokatu

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