第57話:王配

 王家の方が強かった時なら、王女の配偶者を分家の公爵家から迎えて、将来は女王の王配と言う形にするのが最善の策だろう。

 男系血統を歴史あるハミルトン家のままにして、愛する娘を女王にできるのだから、父王としては最善の選択だったろう。

 だが、今のハミルトン家とダグラス家の力関係は以前とは激変しているのだ。

 我儘なヴァイオレット王女の配偶者にならなければいけない理由などない。


「お断わりしてください、父上、母上」


 俺は即座に断った、父上だけでなく母上も巻き込んで断った。

 なぜなら、父上にはまだ王家に対する遠慮があるからだ。

 大公に成ると宣言したにもかかわらず、未だにハミルトン王家の分家だという意識があり、主君だった国王に逆らう事をためらっている。

 だが母上は、あんな我儘放題に育ったヴァイオレット王女と俺を結婚させる事には、以前から反対していた。


「そうですわ、オークリー、可愛いイーライをあのような王女と結婚させるなんて、私は大反対ですからね」


 案の定、母上は本気で怒って反対してくれている。

 父上が内心この申し込みを受けるしかないと思っているのを、腹立たしく感じていて、公式な大公と言う呼び方でも、貴男という聞いたかでもなく、名前で呼んだ。

 これは、夫婦として対等な立場で強く反対しているのだ。

 母上がこう言う言い方した時に、父上が逆らった事は一度もない。

 まあ、母上がこう言う言い方をしたのを聞いたのは、まだ二回目だけどな。


「いや、だがそれでは戦争が続いてしまうではないか、愛しのスカイラーよ。

 私だって可愛いイーライをあのような王女と結婚させたくないのだ。

 だが私は大公となってしまったのだ、家臣領民の事も考えなければならない。

 それに、分離独立したとはいえ、王国の民のことも気になる。

 このまま我が家と王家が対立していては、他国の侵攻を招きかねん。

 そんな事になったら、王国の民が苦しむことになる」


「何をおかしなことを口にしているのですか、オークリーの心配は無用な事です。

 先の戦いでイーライが圧勝したではありませんか。

 あのような勝ち方をするイーライに、ケンカを売る国がどこにあると言うのです」


「いや、イーライのお陰で大公国に攻め込む国などないだろう。

 だがその分、大公家と敵対した王家が狙われる可能性がある」


「その王家の直轄領の代官も我が家に臣従してきています。

 ですから王家に残されたのは王都だけす。

 それに王家に攻め込むには、大公家に臣従した貴族家を攻めなければいけなくなるのですよ、そんな状況でどの国が攻め込んで来ると言うのですか。

 オークリーは王家に気をつかい過ぎです、もうそのような事は止めなさい」


 予想通り母上が父上を叱りつけるように論破してくださった。

 もうこれで俺が無理矢理ヴァイオレット王女と結婚させられる事はないだろう。

 問題は俺がここに来てからずっと聞き役に徹しているセバスチャンだ。

 セバスチャンはどういう考えでいるのだろうか。

 それが分からないと心から安心する事などできないぞ。


「ありがとうございます、母上、そう言って頂けてとてもうれしいです。 

 ただセバスチャンの考えも聞いておきたいのです」

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