第53話:放牧

「壮観でございますね、イーライ様」


 俺の目の前では家畜と草食魔獣と草食亜竜がのんびりと植物を食べている。

 大湖のような広大な湖の周辺は、子供たちと元奴隷が耕作する場所になっている。

 そこから遠く伸びた用水路の先に、人間の食用にはならないが、繁殖力がとても強く、成長も早い植物を植えた放牧地がある。

 俺がセバスチャンの計画に従って作った大放牧地だ。


「セバスチャンがそう言ってくれるのなら、そうなのだろうな」


 確かに、セバスチャンが言うように見飽きる事のない光景ではある。

 セバスチャンが教えてくれた、家畜を導く牧羊犬の代わりに、俺や孤児たちの従魔が家畜と草食魔獣と草食亜竜を上手く誘導している。

 人間が耕作地にしている所に牧草や牧樹が伸びて行かないように、家畜と魔獣と亜竜に食べさせている。

 だから牧草と牧樹はオアシスから離れるように広がっていた。


「はい、これで大公家が食料問題に悩まされることはありません」


 セバスチャンの計画では、ここで莫大な量の穀物と乳肉製品を作り出して大公国に供給すれば、人口が十倍になっても大丈夫だそうだ。

 確かに、俺の魔力を使わなくても、オアシス周辺の水田や畑からの収穫は豊かだ。

 家畜と草食魔獣と草食亜竜を屠殺しなくても、乳でけで食料が確保され、生え変わる毛、牙、爪、鱗を集めるだけで、莫大な量の素材が手に入る。

 特に亜竜の素材は、ほんの少しでもとても高価に売る事ができる希少な素材だ。


「そうか、ならばこのまま開拓を進めればいいな」


「ですがイーライ様、本当に魔力の方は大丈夫なのですね。

 無理をして魔力を絞り出しておられるのではありませんね」


 セバスチャンが俺を心配をしてまた確認してくる。

 毎日何度も同じ質問をされて聞き飽きているのだが、心から心配してくれているのが分かるから、無碍な返事をする事などできない。

 いや、正直に言えば、何度言われても胸が温かくなってくる。

 前世ではあいつ以外に心配してもらったことがないので、聞き飽きる事などない。


「大丈夫だよ、セバスチャン。

 セバスチャンが決めてくれた限界以上の魔力は使っていない。

 俺が毎日生み出す魔力の三分の一は魔法袋化した魔力器官に蓄える。

 三分の一は万が一の時の為に魔宝石や魔晶石に蓄えて魔法袋に保管しておく。

 耕作や従魔従竜に与える魔力は三分の一までにする。

 今まで一度だってこの決まりを破った事はないよ。

 実際に耕作や従魔従竜に使っている魔力は百分の一以下で、魔宝石や魔晶石に蓄えている魔力も、魔宝石や魔晶石の数が集まらなくて百分の一以下だよ」


「そうですか、安心いたしました。

 何度も同じ質問をして申し訳ないのですが、心配で仕方がないのです。

 ですが、そろそろ次の事をしていただいてもよさそうですね」

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