第46話:食料支援
「大公公子殿下、幼い殿下が、わざわざ自ら危険な最前線にまで救援に来てくださった事、心から感謝いたします」
この地の領主、子爵が感動に打ち震えながら感謝の言葉を口にする。
同時に家族はもちろん、家臣と領民の代表まで感激の表情を浮かべて感謝の言葉を口にしてくれるが、大したことをやっている気など微塵もない。
俺にとっては、可愛い従魔たちと駆けっこしただけの事だ。
確かに臣従してくれた貴族とその領民を助けなければいけないとは思った。
その気持ちは自分でも尊いと思うが、やった事は普段と変わらないのだ。
「気にする事はない、臣従してくれた家臣とその領民を護るのは当然の事だ。
それよりも、食料や燃料に困っていないか。
領民は自分の家から必要な物を持ち出せたのか」
「大公公子殿下、お自ら領民の事まで気遣ってくださるとは、感激です。
王家が攻めてくる事は予測しておりましたので、事前に食料はこの城に集めさせておりました、直ぐに食糧不足で困る事はありません。
ただ、この包囲が長引くようだと、来年の収穫に響きます。
いえ、下手をすれば全く何の収穫も得られない事も考えられます」
「それは安心してくれていい、食糧が足らないようなら支援する」
「有り難きお言葉でございます。
ですが本当によいのですか、大公公子殿下。
ご領地からここまで結構距離がございます。
少量ならばともなく、領民全員の一年分の食糧となると、莫大な量となります。
そんな莫大な食糧を安全に運ぶのは、とても困難なのではありませんか」
王都近くの貴族家だから、王国の権力闘争に巻き込まれる事も多いのだろう。
老練な貴族社会の経験者として、余計な事を口にして、言質を取られないように忠告してくれているのだろう。
だが、そのような事はセバスチャンから教わっている。
最初は結構厳しく仕込まれたが、今では全く何も言わなくなった。
俺の魔力と魔術があれば、失言が失言にならないと苦笑いしていた。
「心配してくれてありがとう、子爵。
だが私に関してだけは、そのような心配は不要なのだよ。
まあ、大公領に数多くの魔境があるおかげでもあるのだがな。
論より証拠だ、これを見てもらおうか」
俺はそう言うと、魔法袋から大量の魔獣肉と魔蟲を取り出した。
俺も売値の高い魔獣肉や魔蟲を渡すほどお人好しではない。
あまり値段の高くない、それも売れる部位は取った後の魔獣肉と魔蟲だ。
魔獣肉は、冒険者ギルドで解体してもらった普通種の魔鼠と魔兎の魔獣肉だ。
魔蟲も同じようの冒険者ギルドで解体してもらった魔蜘蛛や魔甲虫だ。
解体依頼をだすのも、領民に仕事を与えて健全に金を手に入れられるようにだ。
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
子爵とその家族は貴族の矜持があるから、声をあげるのは我慢していた。
だが領民たちは、余りの驚きのために感嘆の声をあげている。
目の前に魔獣肉と魔蟲が高く積み上げられているのだ。
普通の人間では魔鼠や魔兎すら狩ることができない。
それ以前に、魔境に入って生きて帰ること自体が難しい。
まあ、ちゃんと鍛錬すれば、魔力のない猟師や冒険者でも狩れるけれどね。
「これは大公家からの陣中見舞いだ、遠慮なく受け取ってくれ。
一万の王家軍に包囲されても、寝返る事なく籠城してくれた。
その忠誠心に対する褒美だと思ってくれればいい。
痛んではいけないからこのくらいの量だが、毎食同じだけ渡すから、自分たちが用意していた食糧は、これからのために残しておいてくれ」
「ありがとうございます、大公公子殿下」
「絶対に大公家を裏切ったりしません、大公公子殿下」
「王家の軍が攻めて来ても、必ず撃退してみせます」
「大公公子殿下に勝利の栄光を」
「「「「「おう」」」」」
「「「「「大公公子殿下に勝利の栄光を」」」」」
こんなに感謝してもらったら心が痛む。
ほとんど使い道がなかった最低の食料なのに、そんなに感激しないでくれ。
従魔従竜たちの方が、もっと高価で美味しい魔獣肉を食べているのに。
この程度の魔力含有量の魔獣肉では、今の従魔従竜たちが満足しないのだ。
不完全な良心がシクシクと痛む、それと、特に子爵家令嬢たちの視線が痛い。
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