第41話:大公太子直轄領
俺がセバスチャンの許可する限界ギリギリまで魔力使った結果、恐ろしいほどの速さで大魔山から大砂漠までの地下用水路が完成した。
それも細々としたショボイ水流量の地下用水路ではない。
大河と言っていいほど太く、とても水流量の多い地下用水路で、地球にある地下用水路と同じように水を汲むのが危険なくらいの水流量と流れの速さだった。
だから、セバスチャンが手押し水汲みポンプを持ってきてくれた。
元々手押し式水汲みポンプは、セバスチャンがこの世界で再現したものだ。
しかも契約魔術で他言厳禁にしてあったから、大公領内にしかない。
隣国も国内貴族も羨望の品なのだ、と言うのは嘘である。
他国の王族や国内貴族は自分で水汲みなどしない。
苦しい労働など奴隷や使用人にやらせているから、その辛さが分からない。
余計なお金を払ってまで買おうなどとは思わないのだ。
それは大金持ちの平民も同じで、彼らも奴隷や使用人にやらせている。
手押し式水汲みポンプを買おうと考える者は、自分か大切に思っている人が辛い水汲みをしていて、楽をさせたいから高価な手押し式水汲みポンプを買える人だけだ。
そんな人間はとても限られているから、手押し式水汲みポンプは普及しないのだ。
大公領内では、セバスチャンが売値を原価にまで抑えていて、しかも多くの人間が使う共同井戸なので、多くの人間が少額ずつ費用負担したから普及しているのだ。
今回大砂漠の開拓予定地に高価な手押し式水汲みポンプを設置できたのは、原価で手に入れられる事も大きいが、何よりここが俺の直轄領になるからだった。
セバスチャンに説明されるまで分からなかったが、開拓不可能であった大砂漠を、大公の嫡男が開拓したのだ。
父上の大公が横から奪うはずもなく、大公国の財政領に組み込まれる事もない。
俺が自由に使える収入源として、直轄領にできたのだ。
これが何を意味するかは明らかだった。
父上はもちろん、セバスチャンや大公家の家臣に気をつかうことなく、好き勝手に自分が気に入った人間に領地を与える事ができるのだ。
本当に父上や母上、セバスチャンにも相談なしに誰かに与える事などないが、やろうともえばやれるという事だ。
それが、家を継げない家臣の子弟からどう見えるのか。
働きしだいで領地をもらえるかもしれない、と勘違いしてしまうという、哀しき人間の性分を、セバスチャンは計算していたのだろう。
俺が亜竜の騎乗訓練を嫌って、真剣に地下用水路造りに励む事も計算の内かもしれないと思い、セバスチャンの悪辣さにげんなりしてしまった。
「セバスチャン、お前は本当に性格が悪いな」
「お褒めの言葉を賜り、恐悦至極でございません」
「俺は全然褒めていないからな!」
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