第38話:亜竜種

 俺はセバスチャンに見守られながらワイバーンなどの飛行種亜竜を魅了した。

 俺自身がやりたかったわけではないが、やった方がいい事は分かっていた。

 飛行種の従魔が、いや、従竜がいたら、大公家の圧倒的な戦力になる。

 魔狼種が主力の従魔軍団がいるだけでも、王家は何もできない状況だ。

 いや、力を失った王家だけでなく、隣国も手出ししてこない。

 普通ならこれほど国内が荒れていたら攻め込んで来るだろう。


 それができないのは、従魔軍団がいるからだろう。

 魔狼の力だけでも圧倒的なのに、数の多い魔犬や魔狗までいるのだ。

 いや、普通の獣ではあるが、戦闘訓練を行った狼や犬が数万頭もいる。

 優秀な従魔士が数頭の魔狼を従魔にすれば、その従魔が狼や犬を従えてくれるから、ちゃんと食事さえ与えられるのなら、数百頭を従えるのも簡単だ。


 与えるべき食事も、魔狼たちと一緒に狩りをすれば確保できる。

 俺も最初は、魔境の魔獣や魔蟲を狩りつくしてしまう事を恐れていたのだが、そんな心配は必要なく、幾ら狩っても魔獣や魔蟲が減る事はなかった。

 どこから生まれてくるのか不思議に思ってしまうくらい、次から次へと獲物が現れるので、従魔軍団のいい実戦訓練になっている。


「イーライ様、現実逃避はもうお止めください。

 さっさと目の前にいる亜竜を魅了してください」


「セバスチャンには優しさがないのか、俺は爬虫類が嫌いだと言っていただろうが。

 昨日の飛竜種やワイバーンはギリギリ我慢できたが、こいつらは無理だ。

 まだ足があって、二本足で歩く奴は我慢できるが、そいつらは無理。

 巨大なヘビやワニにしか見えない亜竜を従竜にするなんて、絶対に嫌だ」


 生まれたてなのか、三メートルくらいのヘビやワニみたいなのもいるが、ほとんどが二十メート以上の、眼を向けるのも嫌な巨大ヘビと巨大ワニだ。

 あんなのを従魔にして引き連れるなんて、絶対に無理。

 セバスチャンの事だから、ヘビやワニにまで騎乗しろと言うに決まっているのだ。

 あんなオゾマシイ生き物に乗るくらいなら、ここから逃げてやる。


「まあ、まあ、まあ、まあ、とにかく魅了をかけてみましょうよ。

 魅了魔術が効果を表したとしても、従魔にしなければいけない訳ではありません。

 魅了した後で狩る事もできますし、魅了魔術を解除する事もできます」


「セバスチャンの言う事は、頭では理解できるが、心が無理。

 ヘビとワニに似た奴に魅了魔術をかけると思うだけで、気持ち悪くなる。

 まして頭が二つも三つも四つもあるヘビ型なんて、視界に入れるのも嫌だ。

 あっちにいる奴は、八つか九つも頭があるんじゃないか。

 あそこで蠢いている奴は、頭が百くらいあるんじゃないか」


「イーライ様がそこまで仰れれるのは、魅了魔術が効果を表さないという事を、本能が事前に知らせてくれているのかもしれません。

 それに、そこまで嫌っておられるとなると、魅了魔術が無効になってしまうかもしれませんから、ここは従魔にしてもいい亜竜だけに魅了魔術をかけていただきます。

 二本足の恐竜型なら大丈夫なのですね、イーライ様」


「ああ、あいつらなら大丈夫だと思う」


 首が恐ろしく長いのは気になるが、四本足で歩いている姿は少し可愛い。

 最大の奴は全長が四十メートル以上あるんじゃないのか。

 体重は計ってみなければ分からないが、以前セバスチャンが教えてくれた恐竜の体重を考えれば、百トン以上あるのだろうな。

 恐竜の話しと比較したら、こいつは草食なのかもしれない。


 だとすると、向こうで泣き叫んでいる二本足は絶対に肉食だ。

 セバスチャンが教えてくれたティラノサウルスとか言う奴と似ている気がする。

 あくまでも頭で想像した姿だから、絶対だとは言えないけれど。

 全長は十四メートルくらいで、体重は十トンくらいだろうか。

 うっわ、気持ちわる、俺の大嫌いなヘビ型に喰らいついてやがる。


「では、お願いします、イーライ様」


「分かったよ」


(魅了)

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