第37話:大魔山

「なあ、セバスチャン、これはいくら何でも酷いのではないか」


「申し訳ございません、イーライ様、わたくしもこれほどまでとはおもっておりませんでしたが、しかしこれはいい機会ではありませんか」


「よくまあそんな気楽な事を言ってくれるな。

 目の前にいる竜を見ろ竜を、魔獣や魔蟲ではなく、竜がいるのだぞ竜が。

 セバスチャンは、竜を魅了して絆を結べばいいと考えているようだが、竜が群れをつくるなど聞いた事がないぞ。

 群れを作らぬ竜を従魔にする事など不可能であろう」


「イーライ様、何事もやってみなければわかりませんぞ。

 一度試しに魅了の魔術をかけてみればいいのです。

 絆を結べて従魔にできればよし、できなければ、動けぬところを狩ればいいのではありませんか、イーライ様」


「まあ確かにセバスチャンの言う通りだな。

 魅了の魔術が効けばいいし、効かなければ狩ればいい。

 なんて簡単に言ってくれるが、俺の魔術で竜が狩れるのか」


「私も本物の竜を見るのは初めてですが、養母からは色々と教わっております。

 目の前で魔山から出ようとしているのは、本当の竜ではございません。

 竜が退化して弱くなった亜竜と呼ばれるモノたちでございます。

 亜竜の中にも色々いて、空を飛ぶことに特化したワイバーンと飛竜がおります。

 飛竜は数多くいる最弱飛行種亜竜の総称でございます。

 最大のモノでも翼長十五メートル体重百キログラムでしょう。

 このような飛竜ならば、イーライ様の魔術で十分狩れます」


「なあ、セバスチャン、目の前にいる翼のある竜の中に、とても十五メートルには見えない竜がいるのだが、これをどう考えているのかな」


「こいつはワイバーンと言われる亜竜だと思われます。

 空を飛ぶことに特化した亜竜の中では最大種です。

 翼長は四十メートルに達するモノもいるそうでございます。

 体重も一トンを超えると思われます。

 ワイバーンならば、人を乗せて空を翔けるかもしれません。

 ぜひイーライ様に魅了していただきたいものでございます」


「本当に簡単に言ってくれるな、セバスチャン。

 確かにワイバーンとやらの背に乗って空を翔けられたら爽快かもしれない。

 だがそう都合よくいくとは……

 ああ、分かったよ、四の五の言わずにやってみるよ」


(魅了)


 なんでだよ、なんでこんな簡単に魅了できてしまうんだよ。

 こいつら爬虫類で、群れを作らないはずだろ。

 いや、セバスチャンの話しでは、昔地球にいた恐竜は鳥類という説があったな。

 獣脚類という恐竜は羽毛があったというし、竜も同じなのだろうか。

 いや、そんな事はどうでもいい、問題は魅了魔術が効果を発揮した事だ。


「セバスチャン、魅了魔術が効いたのだが、この後どうすればいいと思う」


「まずは魔山に残しておいて、食事を与えて絆を強めましょう。

 魔山での竜種内や竜と魔獣の力関係が分かりませんし、食物連鎖がどうなっているかも分かりません。

 今はイーライ様の魔法袋に蓄えてある魔獣や魔蟲を与えてください。

 魅了魔術の絆だけでなく、餌付けによく絆も結べたら、魔山から出せるか確かめて、出せたら騎乗訓練ができるか試しましょう」


「はぁあああああ、全部セバスチャンの思っていた通りになったのだな。

 俺は王や隣国よりも、セバスチャンの方がよほど怖いよ」

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