第18話:白銀狼・大和

「くぅうううううん、くぅうううううん、くぅうううううん」


「お~し、よしよしよしよし、お~し、よしよしよし」


 大和はとても可愛くてしかも賢い、こんな魔狼は世界中どこを探してもいない。

 お手やお替り、ちんちんや一回回ってワンなんてその日のうちに覚えてくれた。

 いや、いや、いや、その日のうちに俺が投げた棒を咥えて持ってきてくれる。

 俺以外の人間に対しては、例えセバスチャンでも仇のように攻撃しようとする。

 でも、俺が待てと言えば絶対に噛みつかない。

 そんなに賢くて獰猛なのに、夜は一人で寝れなくてベッドに入ってくるのだ。


「本当に大和は可愛くて賢くて強い子だなぁ」


 俺は懐いてくれた白銀の子魔狼には、ヤマトと言う名を与えた。

 前世で唯一俺を助けようとしてくれた奴が祖父の本だと言う漫画を貸してくれた。

 闘犬という、犬同士が戦う漫画だったが、とてもおもしろかった。

 その漫画の主人公犬の名前をつけさせてもらった。

 あの犬は白かったが、白銀なら全く違う毛並みでもないだろう。

 そういえば、あいつ、祖父が大事にしていた本を、よく俺に貸してくれたものだ。


「イーライ様、大和が可愛いのは分かりますが、孤児や他の狼の事も少しは気にしてください、孤児たちが哀しみますよ」


「あぁああああ、ごめん」


 とは言ったものの、何の問題もないではないか。

 悪いと思って直ぐに大和の相手を止めて孤児たちを見たけれど、全員パートナーに指定した魔狼と遊んでいて、満面の笑みを浮かべている。

 俺は楽しく狼と遊んでいるのを邪魔するほど野暮じゃないぞ。


「イーライ様、わたくしが昨日イーライ様と大和にお教えしたように、孤児たちと魔狼たちに指導していただけますか」


 セバスチャンは俺に孤児たちの先生に成れと言う。

 公爵家の当主嫡男で主君筋と言うだけでなく、奴隷から救い出した救世主だけでもなく、先生と言う立場まで創ろうとしている。

 将来は孤児たちを俺の親衛隊にでもする心算なのか。

 ふむ、だがそうなったら、後に続く孤児たちにはいい目標になるだろうな。

 

「いいか、魔狼のよき主人よき友達になるための方法を教える。

 ひと言も聞き漏らすことなく頭に叩き込め」


 ★★★★★★


 大和と出会って一週間、とても幸せな日々だ。

 セバスチャンにも父上にも母上にも愛されているのは痛いほどわかっている。

 だけど、決して一緒のベッドでは眠ってくれない、貴族には許されないのだ。

 だが、大和なら一緒のベットで寝る事が許されるのだ。

 夜一人で眠っている時に、母と母の愛人に殴られ蹴られる夢を見なくなった。


 同じベッドに大和が眠ってくれているという安心感のお陰だと思う。

 大和なら、とても小さくて可愛い子供でも、必ず俺のために戦ってくれる。

 そう心から信じられる忠誠心と獰猛さが共存しているのだ。

 その愛らしい姿からは想像できない咬筋力があり、魔牛の骨など簡単に噛み砕く。

 母や母の愛人の咽首など、簡単に噛み千切ってくれる。

 でも、あんな穢れた肉は絶対に食べちゃいけないからね、大和。

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