第16話:コボルトと魔狼とゴブリン
ウォオオオオオン
ギャアアアアア。
ギャッヒン。
大魔境の奥に進んでいくと、雄叫びと悲鳴と断末魔が聞こえてきた。
探知魔術で多くの魔物が争っているのは分かっていたが、修羅場そのものだった。
ゴブリンの大軍団が、コボルトと魔狼の集団を襲っていた。
個々の戦闘力はコボルトや魔狼の方が強いと思う。
だがゴブリンの数一万に対して、コボルトと魔狼は合わせて四百ほどだ。
二十対一でも厳しいのに、ゴブリンにはゼネラルやファンターまでいるのだ。
「イーライ様、負けているコボルトや魔狼が可哀想だと言って助けないでください。
一応王家が貸与した魔物暴走魔道具は確保して、イーライ様にお預けしました。
ですが魔物暴走魔道具が一つとは限らないのです。
万が一の事を考えると、大魔境の魔物は少ない方がいいのです。
魔物同士で殺し合ってくれるのなら、我々人間には好都合です。
イーライ様には勝った方を皆殺しにしていただきます」
「いや、幾らなんでも見殺しは駄目だろう。
それに魔狼は俺の魔獣にする予定だったじゃないか。
ゴブリンの方にも灰色狼や赤色狼がいるじゃないか。
ゴブリンとコボルトだけ皆殺しにして、狼と魔狼は狩ってもいいだろ」
「さきほども申し上げましたが、灰色狼や赤色狼などイーライ様には相応しくありませんので、却下でこざいます……」
セバスチャンは却下だと言いながら、最後の方で考えていた。
セバスチャンの事だから何かとんでもない事を考えている気がする。
「イーライ様、少々考えを改めさせて頂きました。
イーライ様には相応しくない灰色狼と赤色狼ですが、孤児たちが飼うことができるようになって猟犬に使えれば、生きていくのに大きな助けになります。
最初はイーライ様が魅了された狼を貸与して、ゆくゆくは生まれた子狼を幼い頃から仕付けて、孤児たちで繁殖から調教、狩りまでできるようにするのです」
「それはいいね、そうしよう、そうしよう」
俺はそう言いながら、もうすでに魔術攻撃の準備に入っていた。
超広範囲火弾と超広範囲火炎弾と超広範囲強火炎弾の三魔術を同時に放ったのだ。
最弱の普通種ゴブリンやコボルトは超広範囲火弾で後頭部から脳髄を焼く。
ホブゴブリンやホブコボルトも超広範囲火炎弾で後頭部から脳髄を焼く。
ファイターゴブリンやゼネラルゴブリンなどの強力な奴は鼻から肺を焼く。
それでも狩れないような強者には、超広範囲蒼火炎で全身や毛穴だらけにする。
ギャッフッ
ゴブリンやコボルトが一斉に大魔境の大地に倒れた。
一体一体は軽いのだが、二万の数が一斉に倒れると地響きがした。
生き残る強者を警戒していたが、何の問題もなかった。
圧縮して燃焼力と貫通力を高めた火炎魔術の殺傷力はとても高い。
超火炎弾や蒼火炎弾といった強力な魔術を使う機会などないかもしれない。
それにしても、人間は殺せないのに人型の魔物なら平気で殺せる自分が不思議だ。
「イーライ様、感傷に浸る前に魅了をお願いします」
セバスチャンに急かされてしまった。
別に感傷に浸っている訳ではないので、直ぐに魅了の魔術を使った。
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