第36話 閑話~店主と女将の会話

「うん、特に暴走する気配もなし、今のところうまく行っているようだね」

食堂で仲間たちの楽しそうにしている彼を見ながら僕は安堵する。

「能力だけでなく、精神面についても色々と教育したから大丈夫だとは思っていたけれど、杞憂で終わってよかったよ」

シンくんは暴走した転生者を殺すために選出された転生者だった。

チートとも言える能力を持つ転生者を狩るものとして、かなり強めの能力を与えられている。

それ故に彼自身が暴走してしまうと誰にも止められないということだ。

「一応、問題にならないようにただ強いだけのスキルではなく、転生者特化のスキルなどを取らせるようにしたからそこまで影響はないだろうけど」

「精神面の教育も受けさせていますから大丈夫でしょう。本人の資質的にも暴走することはないと思いますよ」

基本的にのんびり暮らしが性に合う子なので大丈夫だろう。

「ただ、創造神から頼まれた依頼のおかげで、のんびりとは暮らせないだろうというのがなぁ」

暴走した転生者を抹殺するためにいろいろと手を広げているせいか、面倒事が持ち込まれる可能性が増えてきているのだ。

それを踏まえた対策も進めているようだが、果たしてどうなるやら。

「…彼が死んだあと、またここに来てもらうかな」

創造神の依頼が思った以上に面倒くさそうだ。

ちゃんとこなしたなら、ご褒美用意しないとかわいそうだと思う。

「いっそ酒場の従業員として雇ってはいかがでしょうか?」

「あぁ、それはいいね」

この酒場はいつも人手不足だ。

時々スカウトしているけれど、彼がこのまま変わらずにいてくれるなら雇っても問題ないだろう。

「この酒場なら、彼の望むスローライフもやりやすいだろうし」

「彼がここに来てくるなら、店長も少しは休めるでしょう」

「後継者にする気かい?」

「そこまでは考えていませんが、それでも補佐位はできるではないかと」

彼は情報収集と活動の隠れ蓑のために作った商会を人を使ってうまく運営している。

少し教えれば、僕の補佐くらいはできるだろう。

「なにはともあれ、彼があの世界での天寿を全うしてからだろう。今は見守るだけさ」

彼次第で僕の方にも余裕ができると思うけれど、どうなるやら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生酒場~あなたの転生お助けします。~ 月城みなも @minamon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ