第31話 閑話~店主と女将の会話
「うん、無事逃げられたようだね」
彼女が去ったあとの会場を見ながらホッとする。
「悪女の方はお通夜状態だけど、こちらは逃げられるかな」
ハナと違って、逃げるための
「ですが、逃げられるかはこれからですよ」
「女将の言う通り、この二人の縁は何代も前の前世からだからね」
ハナとアンジェリカの縁ははるか昔、神代の時代にまで遡るほどの縁である。
かつての二人は親友であり、とても仲が良かった。
そして、アンジェリカはハナを愛していた。
ハナにその気はなかったし、アンジェリカも隠してはいたので当時は特に問題はなかった。
ところが、、アンジェリカが生前にかけた一つの秘術を使ったために彼女たちの未来がおかしくなってしまった。
今生で結ばれることが無理ならば来世で結ばれたい自分とハナの魂を秘術で結びつけたことで彼女たちは生まれ変わるたびに必ずそばに生まれ、出会うようになったのだ。
といっても、記憶などを引き継ぐわけではないので出会ったからといって、以前のように親友になるわけではない。
しかし、アンジェリカの魂に刻まれたハナへの思いは生まれ変わった彼女の資質に影響を与え、ハナに固執し続けることになった。
それを繰り返し続けるうちにそのあり方がだんだんと歪んできてしまい、今ではただ彼女に執着しているだけの存在となってしまった。
自分に振り向いてくれないなら、彼女からすべてを奪い、自分しか見るものがないようにすればいいなんて壊れた考え方しか
二人が酒場に来る際には創造神から連絡があり、なんとかできないかと相談を受けたくらいだ。
もとが神代の時代にかけられた秘術なので、現在の箱庭の水準だと刃が全く立たないらしい。
転生する今のタイミングで創造神が自分でやって欲しいものだが、創造神があまり個人に配慮するのも問題なんだろう。
しょうがないので、二人に事情をうまくごまかしながら説明し、必要な
「うわぁ、これだけチートスキルで対応してもまだ縁がつながろうとしてるよ。え、怖いんだけど」
「話には聞いていましたが、本当にすごいですね」
アンジェリカが使った秘術は死が二人を分かつとも必ず出会えるという出会いを約束するものである。
その効果の中には、縁が切れても結び直すというものがある。
縁が切れてもすぐであればまだ縁が近くにあるため、結び直しやすいからなのだが今回は縁が切れると見つけられないようにする
このため、縁が切れたばかりで本来であればすぐに結び直される縁がもとに戻らないのだ。
「お互いの縁が遠ざかるまでは時間がかかるけど、この調子でうまくいってほしいものだ」
「縁が遠ざかるような
さて、ちゃんと縁が切れるまでは要監視対象かな。
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