第23話 四人での昼食

 アラタの携帯電話が鳴る。

 寝起きのアラタがあくびをして、自室で通話を押した。

「もしもし?」

『食事券が当たったから、みんなで行こう』

 コハルからだった。携帯電話のスピーカーから響く声。機械的に変換されて、元の声とはすこし変わっている。

「こんな寒いのにか?」

『ペアじゃなくて、四名様だから、ミズチさんとネネさんも呼ぼうよ』

「どうしようかなあ」

『じゃ、決まりね。それじゃ、お昼に』

「お、おい」

 通話は終了していた。コハルは押しが強い。

 ミズチとネネを呼んで、四人で昼食を食べに行くことになる。

 集合場所は、カフェではなかった。駅の近くの公園だ。

 初めてカンサを手にしたときのことを思い出して、アラタが複雑な表情を浮かべる。

「よっ」

 そこへ現れたのは、コハルだった。

「よっ。じゃねえよ。突然すぎだろ」

「ごめん、ごめん」

 そう言ったコハルだった。だが、まるで悪そうにしていない。そこへ、あらたに人影が。

「来たぞ」

「遅くなっちゃった」

 ミズチのあとにネネが現れた。おおきな胸を揺らして。それを見たコハルの頭の上で、電球が光ったかのようだ。一瞬、目を輝かせた。

「じゃ、行こうか」

「そうだな」

 四人は、目的の店へと歩いていく。すぐにその場所に到着し、中に入る。席についた。

 どうにもぎこちない。

「おごりだから。笑って、笑って」

 コハルの言葉に、妙に硬い笑顔を作る三人。

「ミズチ、食べ過ぎるなよ」

「お前に言われたくはないな。アラタ」

「まあまあ、せっかくの休みなんだから、休もうよ」

 ネネは気をつかっているようだ。

「――というわけで、オレがアラタを助けたわけだ」

「なに言ってんだよ。酒も飲んでないのに喋りすぎだぞ、ミズチ」

「だから、監査って、何?」

「まあまあ、細かいことはいいじゃない」

 ネネは、さきほどから“まあまあ”ばかり言っている。自分ではそれに気づいていないようだ。

「それにしても、うまいな」

「話を変えるつもりか? アラタ」

 おいしそうな食事を、のんびりと済ませた一行。

 食事のあとには、歯磨きを忘れない。

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