第22話 異なる願い

 イマジン空間が消え、元に戻ったカフェ。

 アラタとマサトの二人は、暖房のきいた室内で立っていた。

「話?」

「まずは、ロウケのカードについて」

 マサトが左手に持つカードには、ロウケと書いてある。

「なんなんだ、それは」

「こいつは、強い思いが形になったものだ。両手に、カンサのカードと同時にそれぞれ持つことで、カンサがハイパフォーマンス化する」

「ハイ……なんだって?」

 アラタには意味が分からなかったようだ。顔つきを変えないマサトが、説明する。

「強化されるという意味だ」

「なるほど」

 すこし表情を曇らせたマサト。気を取り直して、次の話題に移る。

「そうだ。では、お前の願いを聞こうか。兜山かぶとやま

 マサトが言った。その目は、決意で満ちているように見える。それに、アラタも誠意で答えた。

「おれの願いは、戦いをやめさせること、だ」

 同じく、アラタの目にも炎が宿っていた。どうやっても消すことができないほど、強く。

「本気か?」

「おれより強いやつに、すぐばれるウソをつく意味、ないだろ?」

 アラタの言葉に、マサトはすこしだけ考えている様子。そして、言葉を絞り出した。

「分からないな」

「それに、それだけ強ければ、最後まで残るのはお前だろ」

「ん? そうか。知らないか」

「何をだよ」

「自分は、泉上いずみかみマサト」

「名前かよ! さっき言ったから知ってるぞ」

 アラタの本気のツッコミに、マサトがふっと息をはき出した。

沢岸さわぎしには気をつけろ」

「エイプを使う、あのムチャクチャするやつだな。たしか、ソウオン」

「そうだ」

「言われなくても、あいつはヤバイやつだって分かるぜ。で、マサトの願いはなんだ?」

「誰とも接しないことだ」

「生きてる限り、それは難しくないか?」

 アラタに、誰かが話しかける。

「話は終わったか?」

「マスター! 終わりました!」

 二人のやり取りを見て、マサトはすこしだけ表情をゆるめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る