第13話 ジューン

 檀林だんばやしロクロウは、会社員である。

 39歳で、経験豊富。

 あるとき、カンサのカードを手にした。

「あの場所で、戦ってるのか」

 紫色のドームが見える。そして、ロクロウはその場所へ行かなかった。

 人付き合いのないロクロウは、戦いを放置していた。

 そこへ、新たなカンサ使いが現れる。

 梛川なぎかわササメは、代表取締役。いわゆる社長である。

 ササメは、あまりいいスタイルをしているとは言えない。ミドルヘアをかきあげた。

 やはり、あるとき、偶然ぐうぜんにもカンサのカードを手にした。

 巨大な会社の入り口で、二人は出会った。

檀林だんばやしロクロウ。わらわと戦ってみせよ」

 社長命令として、ロクロウに戦うよううながすササメ。社員は、応じるしかない。

「いきます。カンサ・ジューン!」

「ゆけ。カンサ・ジュラ!」

 カンサを呼び出したことで、イマジン空間が開いた。辺りが紫色に染まる。色がそのままなのは、カンサとカンサ使いだけ。

 一般人には、カンサも紫色のドームも見ることはできない。

 男性型で鎧姿のジューンの武器は、ハンマー。

 女性型で鎧姿のジュラの武器は、槍。

 カンサが動いて、金属音が鳴る。

「つっ」

「なるほど。ダメージが連動しているようだ」

 軽く戦って、それぞれカンサをしまう。イマジン空間は消えていった。壊れたものはないので、特に変化は起こらない。

「お前たちだな」

 イマジン空間につられて、やってきたミズチ。

 そして、ロクロウはミズチの前に立った。


「……」

「言葉は、いらないか」

「さあ。カンサ・ジューン!」

「カンサ・フェブ!」

 ミズチと戦うロクロウ。

 といっても、戦っているのは鎧姿のカンサだ。ガシャリと音をたてながら動いている。

 剣対ハンマー。リーチの差を活かして、フェブがうまく立ち回る。周りの建物を壊しながら、じょじょにジューンを追い詰めていった。

 誰が見ても、ミズチが優勢に見える。

「ゆくのだ。カンサ・ジュラ!」

 だが、そこにササメが加勢した。迷いのない行動だ。ササメは、ミズチよりふたつほど年上。しかし、同じかすこし下にすら見える。

「なんだと」

卑怯ひきょうですね。社長」

 ニヒルな笑みを浮かべながら、ロクロウが述べた。

「部下を見捨てることなどできるか」

「よく言う。女狐めぎつねめ」

 軽口をたたきながらも、ピンチになるミズチ。

 そこへ、アラタがやってきた。すでにカードを右手に持っている。

「新しいカンサ使いか。よし。カンサ・ジャニュ!」

 ジュラの武器は槍。間合いを取って戦われると、ジャニュとフェブにとっては相性が悪い。剣で戦うには接近するしかない。

「余計なことを」

「うるさいぞ、ミズチ」

 ダメージを受けているジューンの相手はあまりせず、二体はジュラに集中攻撃を仕掛けた。

卑怯ひきょうな」

「お前が言うな」

「まったくだぜ」

 フェブが牽制し、ジャニュが一撃与えた。じょじょにジュラを押していく。

 ミズチとアラタは二人で戦い、なんとかササメたちを退けることに成功した。

「くぅ。覚えておれ」

「社長。待ってください」

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