第10話 束の間の安らぎ

 ネネが呼び出し、アラタたちが集まった。

 アラタ、ミズチ、リク。現状、ソウオン以外のカンサ使いたち。

「やる事はひとつだ」

「もちろん」

 カードを取り出し、戦おうとするミズチとリクを制して、ネネが話し始める。焦っている様子はなかった。ただ、事実を淡々と述べている。

沢岸さわぎしソウオンの願いだけは、叶えるわけにはいかない」

「なんでだ?」

 すっとんきょうな声を上げて、アラタが聞いた。さっぱり何も分かっていない。

混沌こんとんだから」

「そんなに強いのか?」

「……」

 黙ってうなずくネネ。

「僕には関係のない話だ。失礼する」

「待てよ。お前の願いはなんだ」

 アラタの問いに、リクが答える。

みなからうやまわれることだ。僕には、その資格がある」

 リクは帰ってしまった。

「ところで、ミズチの願いはなんなんだ?」

「わざわざ聞くことではないだろう」

 おちゃにごして、黒い服の男性も去っていく。その瞳に決意の炎を宿して。


 吐く息が白い。

 今日はアラタの仕事は休み。だが、仕事場であるカフェにコハルを呼び出していた。

「いらっしゃい」

「こんにちは」

 マスターのナオツグの挨拶に、ボブカットの女性が答えた。カフェの中は暖房が聞いていて暖かい。コハルがゆっくりと息をはき出した。

 手を動かして、黒髪の男性が誘いをかける。

「こっちこっち」

「どうした? アラタから連絡してくるなんて」

「ん? いや、別に」

 歯切れの悪い返しに、コハルはふくれっつら

「言わなきゃ分かんないんだけどなぁ」

「また、今度埋め合わせするからさ」

「いま、してよ」

 頭をガシガシといじられるアラタ。

「ちょっ。おま」

「お前じゃなくて、コハルですぅ」

 そのとき、遠くにイマジン空間が広がった。

「こんなときに」

「なになに?」

 目を細くするコハル。しかし、アラタが見つめる方向には、特にめぼしいものはない。カンサ使い以外には、紫色のドームは見えないのだ。

「それじゃ、おれ用事あるから」

「いつも突然なんだから。それじゃ、またね」

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