第32話 ちょっと酔いすぎですよ

※今更ですが、こちらは性的な描写が含まれます。苦手な方はそっと、流してください。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂





「はぁっ……はぁっ……レン……ヴラント……様」


 ようやく唇が解放されると、溺れていたかのように、レティセラは口をパクパクとさせた。

 脱力感でたっていられず、だけど、相手にがっしりと抑えつけられていて倒れることはない。


 頭が混乱する。だけど多分、嫌という訳でもなく。強いお酒の息で、熱くて、熱くて、朦朧としてくる。

 私は、酔ってしまっていた。


「やめ……っ……ぅんっ」


 息をやっと吸えたところで、またその入口を塞がれていまう。これじゃ、言うことすらさせてもらえない。手で彼の胸を押してもビクともしなくて、なされるがまま、意識だけは保たなくちゃ、と思っていた。


 やっぱり酔った勢いってものなのかしら。それにしても、食べられているみたい。粘膜がヌルヌルと擦られると、なんとも言えない変な気分になる。


 くちゅっ


 もちろん、誰かにこういうことをされた事はない。それでも、この淫靡いんびさは紛れもない。私の手は知らぬ間に、彼の背中へと回され、感じたことのない快感で爪を立てていた。


「ぷはっ! 苦……し。はぁ、はぁ」


 そんなもだえて、溺れている私を、レンヴラント様が嬉しそうに見おろして、次の口付けを降らせる。


 何度かそうした後は、もう……

 骨が無くなって溶かされたみたいに、涙を流してぐちゃぐちゃになっていた。


「その顔……そそるな」


 彼は、もう堪えきれない、といった感じで腕に力を入れた後、私を持ちあげた。


 ドサッ


 運ばれた先で投げられたが、痛くはない。だってそこはベッド上だからだ。さすがにここまでされれば、次に何をされるのかは想像がつく。


「…………やめ、て」

「いいや、やめない」


 レンヴラント様が、私に馬乗りになり、舌なめずりをする。そして、かろうじて肩に引っかかっていたシャツを脱ぎ捨てた。


 お仕着せの前見頃を、バッ、と力任せにひろげられて。その中には、下着に包まれた形のよい果実が、呼吸と鼓動で激しく上下していた。


美味うまそうだ」

「やめ……はず……」


 じっと見て言うものだから、恥ずかしくて仕方ない。

 何か言いたくても、それすらままならず、押しのけたくても、かろうじて彼の腕を掴むくらいしかできない。


 それに、よく考えたら、私はメイドなんだから、夜伽よとぎの相手だって、求められれば応えなくてはいけないだろう。

 だけど、怖い。


「…………ぁ」

「はは、心臓の音が凄いな」


 なんの躊躇ためらいもなく、ふたつの弾力のある、膨らみの間に顔を埋めてレンヴラントは言った。


 そんなの当たり前だよ。

 今だけで何日分、心臓が刻んだのだろう、ってほど、ドキドキとしているんだもの。


「……これ以上、は」

「ダメだ、まだこれからだ」


 そんな


 彼の手のひらが、スカートの中にはいり、ゆっくりと太腿を滑っていく。それは、何かを探して、彷徨った後、目的地を見つけて段々と上に移動する。


 ゾクゾクする。


「足を広げてくれ」


 強引に体が割って入ってきた。


「……いや」


 怖いよ。私は目に涙を浮かべて首を振り、彼の頭をペシペシと力なく叩き、足をバタつかせてた。


「やぁっ!」

「こら、暴れるんじゃない。そんなことをしたって、俺を煽るだけだぞ」


 手首を掴まれて、ベッドに縫いつけられる。さすがに力が強くてなんの抵抗もできない。


「やだ…… こわ、い」


 ポロポロと涙がこぼれた。なのに、レンヴラント様は、それすらも美味しそうに食べていく。


 お母さん。


「たす……けて」


 レティセラは目をつぶった。











 ゴ────ン!!!




 ものすごい音がして、私の上に、レンヴラント様がのしかかってきた。完全に気を失っている。


え?


「レンヴラント様?」


 肩で息をしながら、彼の頭を触るとヌルリ、と赤い液体かついた。


「きゃあ! 血が!! レンヴラント様!?」


「まったく、ちょっと酔いすぎですよ」


 いつの間にかベッドの脇にはアルバート様が立っていた。しかも、手に大きな壺をもっている。


「大丈夫ですか? レティセラさん」

「正直……助かりました」


 レティセラは安堵の息を吐いた。


「それより、頭から血が!」

「そんなのは、魔術でどうとでもなります。待っててくださいね、今」


 と言って、彼は私の上からレンヴラント様を乱暴に退かした。


「すみません、あなたにお願いしたばかりにこんな事になってしまって」

「大丈夫です」


 やっと、気分が落ち着いてくると、体が震えて、止まっていた涙がまた溢れて落ちる。


「あれ、なんでだろ。すみません」

「今、ロザリーを呼びましたから、今日は彼女の部屋で休んでください」


 私に上着を被せ、アルバート様はニコッと微笑んだ。


 それから間もなくロザリーさんが来て、私は彼女の部屋連れていかれる。


 何があったとかは聞かれてないけれど。この人のことだから分かっているんだろう。私は会話の端々でそれを感じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る