第59話 ご機嫌斜め
凛は髪をプリンにした、そして撮影が始まった。
奏太の提案で、二人の馴れ初めをドキュメンタリー風に撮影してファンの理解を得る事にした。
凛と出会った事故のあったコンビニやスーパー銭湯などあちこちで撮影していく。
何となく出会った頃を思い出して、懐かしさと恥ずかしさがジワッと心に湧いてくる。
「タクちゃん、出会った頃はちっとも優しくなかったよ」凛は少し頬を膨らす。
「そうだっけ?」俺は知らんぷりをした。
中山道から秩父へ向かった。そして天空カフェへとやって来た。
カフェには新くんや友希さん、希和ちゃんもいる、俺は状況を話した。
キナコちゃんは人気が出て来ている。そして今度は歌う映像を撮りたいらしい。奏太は目を輝かせる。
そして映像を作る事を引き受けた。俺は奏太の仕事が増えることを願った。
俺と凛のドキュメンタリーが完成すると、動画配信が始まった。
始まって一番ビックリしたのは俺にファンだと言う女の子がメールをくれた事だ。
それを見た凛は口を尖らせて俺を睨んだ。
「何怒ってるの?」
「だってタクちゃんのファンが増えてるもん」凛はご機嫌斜めになっている。
「え〜?」俺はただ困惑した。
お店でも夜は不機嫌になったので、美味しいつまみを作って凛へ差し出す。
凛は口角を上げると、お酒を飲んだ。何とか機嫌は治ったが、凛の晩酌は続ける事になってしまった。
ただ、自分の料理の就業だと思い、そのまま続ける事にする。
父さんや母さんも仕事が終わると凛と一緒に晩酌する。俺はお店が終わっても働くことになってしまった。しかし父さんや母さんと嬉しそうにお酒を飲んでいる凛を見て心は和んでいる。
凛に家族の暖かさが少しでも感じられたら俺は幸せだ、そう思う。
奏太の作ったキナコちゃんのプロモーション映像は思ったより評判が良く、キナコちゃんはレコード会社から誘いがあったらしい。
そして、何より驚いたのは奏太に彼女らしき人が出来たようだ。ある日奏太は影山未来ちゃんと言う綺麗な女の子を連れてきた。
「奏太、まさか…………彼女が出来たのか?」
「そんなんじゃねえよ」そう言っているが、明らかに奏太は未来ちゃんを意識している。
そして唐揚げ親子どんを二人で美味しそうに食べた。
「奏太さんにも春が来るのかなあ…………」凛は優しく見守っている。
プリンと俺のユーチューブは徐々に視聴者が増えてきた。そして俺のファンも増えている。
「凛ちゃんが嫌なら私がお店を手伝います」なんて過激なメールも来た。
プリンは頬を膨らして嫉妬した。その表情が可愛いと言うファンもいるが、浮気したら許さないというプリンファンから俺への書き込みが多く届く。父さんと母さんは凛と晩酌しながら笑っている。
「他人事だと思って」俺は眉を寄せる。
「匠真、お店にもお前のファンが来てるらしいぞ」父さんは笑っている。
「昨日も女の子が匠真さんは居ないんですか?そう言って厨房の方を覗いたよ」凛は口を尖らせた。
「そんなの知らないよ!」俺は不貞腐れた。
凛の部屋へ戻ると、凛は上目遣いで俺を睨んだ。
「タクちゃんが浮気したら胸で窒息死させてやる!」そう言って睨んでいる。
「浮気なんかする訳ないだろう、俺は凛の両親へ誓ったんだ、凛を幸せにするって」
「へへへ……………」凛は嬉しそうに笑った。
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