第41話 うだつ
翌日二人は徳島へ向かって車を走らせた。
お昼は鳴門ぶっかけうどんを食べる。細めの麺で喉越しがよく、すだちの香りでサッパリとした美味しさだ。
リンは美味しそうにズルズルと啜って子供の様な笑顔で食レポをしている。
その後、脇町へ行ってレトロな町並みを歩いた。
「リン、うだつが上がらない人ってって聞いた事があるかい?」
「うん、ダメな人のことでしょう?」
「ほら、あれがうだつだよ」屋根の上にある袖壁を指さす。
「えっ、アレがうだつなの?」
「そうだよ、アレを屋根の上に作るのはお金がかかるから繁栄の象徴なんだ、だからアレを作れない人をうだつの上がらない人って言うらしいよ」
「ふーんそうなんだ」リンは繁々と屋根の上を見た。
「うだつの上がらない人って今のオレの事だよなあ……谷崎さんとかこれまでしっかり頑張ってきたからご褒美の旅をしてる、リンだって今まで頑張ってきたからご褒美旅もいいと思う、でも……オレはなんの努力もしないでリンとご褒美の様な旅をしてる…………」
「いいじゃん、先にご褒美をもらっちゃえば、そしたらこの後辛い事があっても『もうご褒美をもらってるからなあ』ってニコニコ頑張ればいいし」
「こんなに贅沢な旅が出来るのも全部リンが頑張ったからだよ、オレは何も努力してない」
「じゃあ…………リンのことをずっと捨てない方がいいよ」
「ああ、オレの方こそリンに捨てられない様に頑張るよ」
「えへへ…………」リンは嬉しそうに笑った。
リンは人形を抱いて撮影しながら街並みを散策した。
さっき話した『うだつ』の話を人形にしながら歩いている。
そして「私をしっかり幸せにしてね」と人形に向かって話しかける。
オレは思わず「ハイ」と返事してしまった。
夜は近くの道の駅に泊まることにした。夕食は道の駅のレストランで阿波尾鶏を食べる。リンはニコニコと食レポをした。
近くの日帰り温泉に行き、戻ってきて道の駅に泊まる。
夜キャンピングカーの中で編集をしていると、リンはすだちサイダーを飲みながらハートの形のお菓子を食べている。
突然こっちを向いてハートのお菓子を手に隠し「お手」そう言った。
オレは思わずリンの手の上にトンと手を置いた。
リンは「よしよし」と言ってオレの口にハートのお菓子を押し込んで頭を撫でる。
「ん…………」
「もしかして…………タクちゃんもイジられなの?」
「違う!絶対違うよ!」
「本当?」リンは含み笑いをしている。
「リン、キャンピングカーってホテルを予約しないで自由に旅して、しかも自炊したらお金のかからない旅ができるよなあ」
「そうだね、それもキャンピングカーの魅力の一つだよね」
「この旅を見たキャンピングカーのオーナー達は批判的にならないのかなあ?」
「うん、大丈夫だよきっと、だって今回頑張ってるねえって励ましのメールもたくさん来てるし、それに見てくれる人も随分増えてるよ」
「そうか…………でもそれはリンの人柄のおかげかも…………それに…………リンが可愛いからかも」
「タクちゃんが可愛く編集してくれるからだよ」リンは微笑んだ。
もっと節約できるところはしっかり節約して、リンの負担が少なく済むようにオレが頑張らなくちゃあ」
「タクちゃんは偉いなあ、毎日進化していく気がする、私はおバカだからあんまり考えられない」
「リンが色々考えられたらオレは要らないんじゃないか?」
「そんなことないよ、だって独りは寂しいもん」
「そうか…………」
「オレもリンのいない生活はもう考えられないなあ」
「ホント!!!嬉しい」リンは口を尖らせキスを要求している。
オレはハートのお菓子を一つ取ってリンの口に当ててキスの代わりにして、そのまま食べさせ「よしよし」と頭を撫でた。
リンは「プウ」っと頬を膨らませた。
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