第38話 運命
翌日リンは爽やかな顔で「おはよう」そう言った。
オレはリンを抱きしめて「おはよう」と返す。
これからリンの心の中にある大きな凍りついた悲しみを、ゆっくりと溶かして行かなければと決意した。
京都を観光し、わら天神宮では二人で縁結び祈願をする。
リンは人形を抱いてカメラも持って楽しそうに話している。
京都は有名なところが多いので、出来るだけ穴場スポットを行ってみた。
六道珍皇寺ではリンの家族の冥福を祈る。
嵐山オルゴール博物館へも行った。
京都には3日間滞在し、その後大阪へ向かう。
大阪城の近くのホテルに宿泊することになり、大阪城も撮影と観光をし撮影する。
夜はリンの希望でお好み焼きを食べに行く。
生ビールを飲みながら、お好み焼きに焼きそば、たこ焼きにとんぺい焼きなどたっぷりっと大阪を味わう。
これだけたくさんの場所と食事を撮影すると編集は大変だろうなと思った。
この数日はあちこちを見て歩き、色んな人と話をして、いろんな物を食べた。
オレの心にあったコンプレックスやジレンマは、この旅とリンのおかげでほとんど無くなりかけている。
父親から自転車の旅を勧められたときには、何を時代錯誤な事を言ってるんだとかなりイラッとした事を覚えている。
しかし、今思うとこの旅に出なければ、リンと会えなかったし、自分を見つめ直すこともできなかっただろうと思う。
両親は本当にオレのことを大切に思っていてくれたんだなあと改めて感謝した。
ホテルに帰るとリンはすぐに甘えてくる。
「なあリン………」
「なあにタクちゃん」
「オレは実家のカフェを引き継ぐことになってるけど………」
「私……タクちゃんのパパやママに気に入ってもらえるかなあ…………」
「それは絶対対丈夫だよ」
「だって私料理も何にもできないよ……それに…………」
リンは不安そうにオレを見た。きっと自分の家族のことも気にしてるんだろう。
「オレの父親は大学生の時自転車で旅したって言っただろう?」
「うん」
「結構苦労したらしくて、途中でお金も食べるものも無くなって死にそうになったらしいんだ」
「そうなんだ、大変だったのね」
「その時に助けてくれたのが今の母親さ」
「うそ…………運命的だね」
「母は食堂の娘で、残っていた唐揚げを玉子で閉じた親子丼を作ってくれたんだってさ、父はその親子丼が世の中で一番美味しいものだと思ってるんだ、笑っちゃうだろう」
「そうなんだ…………素敵な話だね」
「そうかなあ…………」
「あっ!二人で初めて行ったスーパー銭湯で唐揚げと親子丼を食べたよねえ」
「ああ、あの時オレはマジかと思ったよ」
「そうなんだ、やっぱり運命の出会いだったのね」
「だから、オレの両親はきっと運命だって喜んでくれると思うよ」
「そっか…………ちょっとだけ不安が少なくなったかも」
「この旅が終わったら、二人で両親に会いに行こう」
「本当に私でいいの…………」
「ああ、リンがいいんだ、リンが必要なんだ」
「タクちゃん」リンは抱きついてきた。
「もし、反対されたとしても、オレはリンと生きていく」
「私、気に入ってもらえるように頑張る」
「ああ、でも無理しなくていいぞ」
「うん」
窓を開けると大阪城が見えた。
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