「見るとは何か」を問う短編です。本作の核は、完成された視覚が、盲目の老人の描いた“めちゃくちゃな線”によって揺さぶられる点に尽きます。見えるものを正確に写し取ることが絵だと思われていた世界で、正雪だけは、見えない者の線の中に自由を見出す。ここで物語は単なる芸道譚を越え、視覚そのものへの執着を剥がしていく話へと変わる。終盤の飢饉譚も美しく、名品を期待した村人たちが最後まで価値を取り違える締めが痛烈です。芸術の本質を静かに反転させる構造が鮮やかでした。「絶筆」という題が、最後の一枚以上の意味を帯びて迫ってきました。
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