第4話 恩人だから



 皆のために尽くす、実力の高い聖女。


 という地位は、あっという間に失ってしまった。


 濡れ衣を着せられる前の私の評価はかなり高く、人々からの信頼も厚かった。


 しかし今では、外を歩くたびに石を投げられ、暴言を吐かれるようになった。


「あんなひどい人間だとは思わなかった」

「演技して。俺達を騙していたんだな」

「信じられないよ。どっか行っちまえ」





 聖女の仕事があるために、そんな事があるため、しばらく途方にくれていたのだが、そんな私に話しかけてくれる人がいた。


「あんな人達の言葉を真に受ける必要はない。俺は君の無実を信じる」


 その人物は、事故が起きた列車に乗っていた男性だった。


 名前はファルコン・スコープという。


 20代半ばの歳で、がっちりとした体格の男性だ。


 列車の走行試験を行うなら、実際に人がのってみなければならない。


 という事で、国は多くの試乗者を募っていた。


 彼もその中の一人だったらしい。

 

 言われてみると、手当の際に顔を見たような気がした。


 彼はずっと私にお礼を言いたかったらしい。


「君のおかげで助かったよ、ありがとう」


 そして、何か力になれる事はないかと聞いてきた。


 本来なら、人助けで何かを願う事はしない。


 もらうものがあるなら、それは教会から支給される給料くらいだった。


 しかし、切り捨てられる事が決まってしまったので、それもあと数か月のみ。


 これからどうすればよいのか分からなかった。


 なので、つい自分の境遇を話してしまった。


 すると、ファルコンは憤慨して、「なら俺たちの国に来ればいい」と言い声をかけてくれた。


 聖女を集めて、仕事を行う組織は他国にもある。


 だから、そこまで案内すると申し出たのだ。


 これからの事で途方にくれていた私は、ファルコンの申し出をありがたく思った。


「ありがとう。実際とても困っていたの。本当に甘えてもいいかしら」

「ああ、もちろんだ」


 そういわけで、私は他国の聖女教会に向かう事になった。


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