第3話 追放




 国を挙げての一大お披露目式。


 交通網の発達を進めるために、軌道列車なるもののお披露目が行われるらしい。


 何でも鉄の塊がものすごい速さで走るとかなんとか。


 実際に見てみないとなんとも言えないが、簡単には信じられない事だ。


 





 一週間後。

 私は軌道列車のお披露目式で控えている事になった。


 試作品なので、万が一の事態もあり得ると考えたのだろう。

 それで、私にお役目がまわってきたようだ。


 私は上司に「分かりました。問題が起きた際は精いっぱい、役目をこなしてみせます」と伝え、仕事を受ける事を了承した。


 それで、当日。


 私は万全の準備を行って、軌道列車の近くに控えていたのだが。


「列車が、爆発したぞ!」

「燃料が燃えてるわ!」

「それよりもけが人を運び出せ!」


 万が一の事態が起こってしまったらしい。


 列車が目の前で爆発し、急停車。


 内部に乗っていた人たちが、怪我だらけで外に出てきた。


「大丈夫です。私が治療します!」


 私は彼らに声をかけながら、対応にあたる。


 不安そうにする人たちを励まし、やるべき事をしっかりとこなして、その怪我人たちを手当したのだが。


 後日、新聞を見て唖然とした。


 なぜか、私が事故の犯人にされていたからだ。





 列車の近くにいたことがその証拠だと言われて、唖然としてしまう。


 証拠になっていないし、近くにいたのは上司の指示だからだ。


 けれど、言い分は聞いてもらえなかった。


「お前から聖女の資格をはく奪する。組織からも追放だ」


 最初から、問題が起きた時は生贄にする事が決まっていたのだろう。


 私を追い出す手続きはやけに早く進んでいった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る