第20話 鼻血もんだよアレスきゅん! 

 今晩の宿を探してターラの街を歩いていたアタシとアレス。なんとなく人の流れに乗って進んでいると、とても大きな広場に出た。


 中心には大きな噴水があり、その周りを商人や観光客、そしてかなりの数の冒険者が行き交っている。武器を背負ったゴツい男もいれば、ローブに身を包んだ魔法使い風の女性もいる。


 たぶん冒険者がやってくる方向に進んでいけば、冒険者ギルドを見つけることができるはずだ。だが今日のところは他に優先すべき用事があるので、そちらへは行かない。


 キョロキョロするアタシを見て、アレスくんとミシェパが何を捜しているのかと聞いてくる。耳と脳内から同じタイミングで同じ質問がくると、ちょっとウザイ。


「アタシたちが泊まる宿と服屋」


「服屋?」

(服屋?)


 またシンクロしてる……。


「そっ。ほら、アレスには女の子のフリしてもらわなきゃでしょ。可愛い服を揃えないと」


「むぅ……」

(メイド服だな!)


 ミシェパの感極まった返答と違って、アレスくんは口をとがらせて大層ご不満そうだった。街までの道中、アタシとミシェパに散々言い含められて、しぶしぶ受け入れてくれたアレスくんだったが、納得はしていないらしい。


 納得していない故の、そのプーッと膨らませた頬と表情がもう完全に女の子。そういうとこやぞアレスくん。もう可愛すぎてペロペロしたい。


(完全に同意!)


 でしょ! でしょでしょ!


 脳内でキャーキャー黄色い声を出しているアタシとミシェパ……の空気は一切遮断して、アタシは真面目な顔でアレスくんの目を見て話す。


「アレス。アレスに女の子の格好をさせるのは、魔王候補者の追手から身を隠すために必要なことなの。約束したでしょ。アレスが自分の身を自分で守れるようになるまでは、アタシの言うこと聞いてくれるって」


「……ん」


 頷くアレスくんの口のとがらせ具合が、ほんの少しだけ落ちていた。


 よっし!

(よっし!)


 こうしてアタシとアレスは服屋を捜して周り、ある店にあった吊りもののゴスロリメイド服を選んだ。その後、宿を確保すると部屋に入り、早速アレスくんにメイド服を着せる。


 ゴスロリメイド服に合うのは、大きなフリルがついた幅広のカチューシャであるゴスロリヘッドドレス。このフリフリのおかげでアレスくんの角がちょうどよい具合に隠れている。


「ふぉおおおおお! アレス、可愛いぃぃい!」

(ふぁぁああああ! アレスヴェル様ぁあぁあ!)


 キャーキャーはしゃぐアタシとミシェパの前では、顔を真っ赤にしてプルプル震えているアレスくんが涙目になっていた。


 そしてそんなアレスくんを見ていたアタシと脳内ミシェパの鼻から、思わずツーッと赤い液体が流れ出た。


「ぼ、ぼく……男なのに……」


 そう言って恥ずかしそうにアタシを見つめるアレスきゅん。


 アレスきゅん、カワイ過ぎりゅぅぅぅぅぅ!

(アレスヴェル様、カワイ過ぎぃぃぃいい!)




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