第56話

「とりあえず銃弾の弾込めのこと忘れてたな。」

「今のところ片手でも打てそうだから弾を消費するたびに込めていく方向で狩りをするか?」

「いやそれじゃあ非効率的だしショップスキルで何丁か装填済みのモノを買って随時対応しよう。」

「家の中が圧迫するけどそれがベストだな。」


Colt Single Action Army(コルトシングルアクションアーミー)はリボルバーの中では構造が極めて単純な固定式(ソリッドフレーム)で弾を一発一発装填しなければいけないようにシリンダーが固定されているモノだ。

スピードローダーなどで即座にリロードしたりすることができないしシリンダー自体も固定されているので付け替えるのにも時間がかかる。


今現在主流の回転式銃は振出式(スイングアウト)でシリンダーが横に振りだしてずれる仕様だ。

なぜおれはその振出式(スイングアウト)を採用しなかったかというとただ単純にColt Single Action Armyが知っている銃だからというわけではない。


「あの亀の眉間を狙えそうだな。」

「この生物は結構堅そうだな。

 ならこの重火薬消音弾入りのしておくぜ。」


銃をぶっ放す瞬間に反動がそこそこ強く来るので地面に全部流れるように調整する。

この意味不明な特殊弾はマグナム実包より強力かつ消音で打てるスパイ映画にでも出てきそうな銃弾だ。

しかしこの銃弾には致命的な欠点がある。

本来生じる筈の音を無理矢理静かにさせているのでその音のエネルギーが運動エネルギーに変わり反動が普通のマグナム実包を打つときと桁が数十倍にまで膨れ上がる。

銃身自体にもある程度の頑丈性が必要となる。

じいちゃんもマグナム実包を改造した銃弾を知っている。

俺も与太話だと聞き流していたけども実際にショップスキルにあるのだから驚きだ。


じいちゃん曰くこの銃弾は固定式(ソリッドフレーム)でしか全弾打てないと言わしめた癖の強い銃弾らしい。

仮に振出式(スイングアウト)や中折れ式(トップブレイク)と言ったシリンダーが装填しやすくした特殊機構を組んでいる方式などまず銃が分解されると言わしめた代物。

固定式(ソリッドフレーム)は初期型のシンプルな構造故にその信頼性から警察常備銃に採用されアメリカの平和を作ってきたが故にこう呼ばれた。


Peace maker平和の創造主



数々の自国の平和を作ったその銃は民間用にはシックス・シューターと刻印されているらしい。

じいちゃんのは完全軍人仕様でどこで手に入れたのかと聞いたら戦友からの形見との返答が来たので深く聞くことはしなかった。


そして今、この銃が1873年に生産され1875年にアメリカ陸軍に正式採用され今に至るまで民間人の平和を創り続けた。


「亀は一発ヘッショ。」

「反撃無し。」

「撃沈かどうか不明。」

「他の生物が捕食している。」

「ならば死か?」

「いや違うな。」


本体が得た五覚はきちんと感じていた。

生を全うしていない感覚を。

並列思考でラグを一切生じさせることなく共有。


死んだふりをした亀の弱点をここぞばかりに着きつつ他の生物も排除していく。


「銃はいくつ消費した?」

「最初の消音弾入り4発消費。」

「重火薬消音弾、48発8丁消費。」

「命中率現在100%。」

「急所と思わしき命中37発。」

「亀の生物はワニガメに似た生態系、および寄生種がいる可能性大。」

「寄生種に乗っ取られていると思わしき生物は現在は無し。

 今後とも爬虫類系、両生類系に問わず随時観察を心がける。」

「イヌ科と思われる生物を射殺。

 目の形から狂犬病に近しいウイルス所持の可能性大。」

「感染の確率は50:50、生存確率不明につき《ウイルス耐性》《病原菌耐性》で耐えきれるかショップスキルより検索、該当データあり。

 対処可能。

 しかしアナフィラキシーショックが起こる可能性は捨てきれないため直ちに遠距離からの攻撃を推奨。」

「右骨格に負担大、別の攻撃方法に変更を希望。」

「骨格損傷に伴いこのあたりの生物に効く毒、麻痺弾を検索。

 このあたりの植生ではつけづらい毒をヒットしました。」

「海産毒内蔵弾を購入、反動低下。」

「弾速低下を確認、偏差射撃に修正案提出。」

「銃身の向きを変更修正完了。」


一発一発撃つのに何年もかかっている感覚だけれども一瞬で終わる。

なにか問題が起きれば他の秉烈思考たちが既に修正案を出しており達人の領域にどんどん入っていく。


「ん。」

「起こしちゃった?」

「…ありが……とう……。」

「ごめんね気持ちよさそうに寝てたから。

 ちょっと寝かせてたんだよ。」

「…爪…お手入れ……ありがとう……。」


綺麗に切り揃えられた爪を見てとても嬉しそうに見つめていた。

婚約指輪を見つめる女性のように健気でずっと先のことを考えているようで少し気分が悪くなった。


「それじゃあ家まで付いたら今日はもう帰ろうね。」


コクリと彼女は頷いた。

俺の顔を見て何となく気づいたのだろう。

未来を考えることを拒み停滞を望んでいる俺に対して家族の未来はとても嫌悪する対象だということを。

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